漫画や漫画的なイラストなどで、登場人物の台詞や心理内発言などを表記するときに用いる枠。
英語では「スピーチ・バルーン」ないし単に「バルーン (balloon)」と呼ぶ。
たいていの場合、フキダシの中には発言内容を表す文字が書きこまれる。発言の内容が分からないことを象徴するためにデタラメの記号が連ねられたり、まれに心理的要素を表す漫符(怒りマークや汗マークなど)が描かれることもある。
形状は楕円形または楕円を連ねたものが基本となるが、輪郭をギザギザにしたり細かく波打たせたりして発話者の語気や心理状態をより具体的に表現しているものも多い。また、海外(特に欧米諸国)の漫画では、四角や四角を基にした形状のフキダシも一般的である。
また多くの場合、フキダシからは鋭角形や帯状などの「しっぽ」が伸びていて、その向いている向きで、その台詞を発しているのが誰であるかを示している。この「しっぽ」が無い場合は、発話者がそのフキダシのあるコマの中に描かれていない状態であるか、あるいはその場におおぜいの人物がいて誰がその台詞を発したのか指定しにくい状態などを表す。
フキダシのうち、輪郭を雲状に描いて、しっぽの代わりに楕円を並べたタイプのものは、話者が実際に発言したものではなくて頭の中で思っている内容を示すのが一般的である。
また人の顔や局部等が見られないようフキダシを被せて隠す、といった使われ方も多い(テレビではモザイクやカメラワークになる)。
歴史
「発言者のセリフを絵の中に描き込む」という手法は意外と古く、古代(6~8世紀頃)のメソアメリカの壁画には既にその用法が見られている。
ヨーロッパでは13世紀頃までに「スピーチ・スクリプト」という、文字の書かれた巻物状のものが話者の口元から伸びている様子で、その話者の発言内容を示す手法が生まれた。18世紀の印刷物には、すでに現在のフキダシにかなり近い表現様式が描かれているのが見られる。