Pulse Code Modulation(パルス符号変調)平たく言えば、どんな音でも使用できる音源である。無圧縮であることを強調する場合は「リニアPCM」という。
特徴
アナログ音をそのままサンプリングし、量子化(デジタル化)する。サンプリング周波数が高く量子化ビット数が多いほど高音質(変換前に近い)となる。
規格自体は1960年代からあり、FM音源やPSGなどより古い。デジタル音源の基本とも言える存在だが、メモリの利用効率の悪さのため、かつては音質やサンプリング時間、表現能力に大きな制限があった。
無圧縮のため必要とするデータ量が大きい。1990年代以降は「いかに音質を落とさずにデータを小さく出来るか」を命題に圧縮技術が開発されており、PCゲームではogg、音楽や放送用途ではMP3やAACが広く使われるようになった。
採用例
光ディスクではCD(量子化ビット数16ビット、サンプリング周波数44.1kHz、2chステレオ)、DVDなどがある。Blu-rayDiscではPCM 7.1chに対応しHDMI経由で接続すればサラウンド再生ができる。地デジなどのデジタル放送ではデータ帯域を削減するためPCMではなくAACが採用された。
かつてのパソコン(PC/AT互換機)ではFMシンセサイザとPCMの録音再生機能,MIDIインターフェースを備えたサウンドボード(Sound Blaster互換品)を搭載する例が多かったが、現在のPCは24ビットPCMステレオに搭載したオーディオコーデックがマザーボードに標準搭載されているため、サウンドボードの需要は7.1chサラウンド出力を求めるPCゲーマーなど一部に限られる。Macintoshは1984年の発売当初からCPUを使ったソフトウェア音源であり、PCM音声の入出力機能を持っていた。
ゲーム機ではスーパーファミコンが久夛良木健設計によるPCM音源チップ(SPU)を搭載したことで注目され、のちにその発展形のチップがプレイステーションに搭載された。プレイステーション3のゲームソフトは最高で7.1ch (48kHz/16bit) にまで対応しており、CDより高音質のサウンドを演奏できる。
解説
理論上は何でも出来る音源ではあるが、それは「メモリー(記憶容量)」によるという前提である。基本的に高音質になるほどデータ容量は大きくなり、メモリーを消費したくない場合は低音質にせざるを得ない。ゲーム機において当初、FM音源やPSG音源が普及したのも、メモリーをPCMより消費しないからである。
例えばスーパーファミコンがPCM8チャンネルに対応していると言ってもRAMは64KBと貧弱で、うまく使いこなすのは難しかった。PCエンジンCD-ROM²、メガCDなどではCD-DAのPCM音源をそのまま使用したタイトルもあり、良好な音質のBGMや声優の肉声を使えることが売りであった。しかし後にゲームの肥大化が進むと、音楽の演奏時間がCDの74分からゲームデータを差し引いた分しか演奏できないというデメリットが目立つようになり、CDに収録した音楽データが多くなったのでゲーム本編の一部を削除したという本末転倒なソフトも出るほどであった。そのため内蔵音源性能が向上したプレイステーション等ではあまり採用されていない。