概要
太陽光発電設備は、可視光線で発電するソーラーパネル(光電池のパネル)と、パネルで発電される電力を整流するパワーコンディショナ(直流を送電網に送るための交流に変換する「インバータ」と、電気を一定の電圧に保つ「コンバータ」の2つの機能を持つ)で構成される。必要に応じて出力変動を平準化するためのバッテリーや、グリッド(電力網)に接続するための送電設備と組み合わせられる。
かつては太陽光発電をするソーラーパネルが非常に高価であったため、離島の灯台や人工衛星、地球の公転軌道の内側へ行く探査機の電源としてのみ用いられていたが、21世紀に入るころから住宅や工場などの発電設備として普及し始めた。
特徴
光を受ければ何もしなくとも発電するので、光の当たる場所ならどこにでも設置でき、設置後の費用や手間もほとんどかからない。太陽光パネルは30年以上稼働でき、10~15年程度で寿命を迎えるインバータの更新費用を考慮に入れても、いったん設置すればその後のコストは安い発電システムである。
ただし、屋根の整備(葺き替え等)で一度取り外すとメーカー保証は無くなり工事中のパネルの保管費用と再設置費用で屋根の整備費用は高騰する。
また電気配線やコネクタ類は耐用年数が10年が基準であり、最低十年内にメンテナンスをしないと火災へ繋がる危険性がある。(屋内コンセント等も同じだが。)
しかし面積を取る割に発電量が少なく、時間帯や天候に左右される欠点がある。発電量を制御できないため、太陽光発電所から供給される過剰な電力は停電の原因になるとして、電力需要の低い時期は稼働停止(発電した電気を無駄に捨てる)を強いられることもある。また、運用に手間や費用がかからないという長所は、裏返すと地元に雇用が発生しない欠点とも言える。
家庭用の太陽光発電設備は電力網に接続せず、自家発電した電力をバッテリーに貯めて使用すること(オフグリッド)もできる。日本では停電した災害発生時くらいしかメリットがないが、インフラが不十分な発展途上国の僻地ではオフグリッドの太陽光発電設備が普及している。
普及
かつては都市の主力電源を賄う巨大な発電所には向かず、補助電源や分散電源向きと言われていた。しかし、各国での優遇措置を背景に2010年代に急速に普及、さらに大容量のリチウムイオン電池の価格低下、NAS電池の登場で大規模な蓄電設備を併設することにより、天候や時間帯による発電量の変化を分散化できるようになった。将来は蓄電設備や電気自動車、スマートグリッド(次世代送電網)などのインフラの普及を背景に各国で急激な普及が進み、水力発電や火力発電と並ぶ主力電源となると目されている(日本政府も太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーを主力電源として位置付けている)。
現実
だが、そんな夢物語が簡単に実現するはずもなく大量の問題や課題が山積みである。
コスト
蓄電池はコバルト等のレアメタルを大量に使うため高単価で大容量化しつつはあるとはいえ未だにmwクラスの実用化には程遠く加えて寿命(数年で交換)といったランニングコストは非常に高く、現状は絵に書いた餅状態である。
また、蓄電池の最も効率の高い運用は非ピーク時に蓄電し、ピーク時に放電しての平滑化てあるが肝心の非ピーク時(つまり夜)には発電自体が止まっているため効率的な運用をしているとは言い難い。
2020年現在、太陽光発電と蓄電池の組み合わせは蓄電池の容量単価の40%以上下削減が行われなければ大規模普及は不可能である。(そのため損耗したEV車の中古バッテリー転用が期待されている。)
環境破壊
すでに太陽光発電の補助金は撤廃され、買取価格の優遇措置も徐々に撤廃されつつあるが、投資する側としては大きな利益が見込めるということで各地に巨大な太陽光発電所(メガソーラー)が建設されている。しかし、他に使い道のない荒地や開発が頓挫した造成地の跡地ならばともかく、優良農地や自然豊かな山間部にまで太陽光パネルが敷き詰められるようになり、景観破壊や反射光による公害が各地で問題となっている。
また、森林区域の大量伐採による土砂流出、土石流といった二次災害に、違法伐採による逮捕者も出ている。(静岡県では森林区域の太陽子パネル設置に制限が検討されている。)
また、無人の場所も多くパネルや配線の大量盗難も発生している。
大規模な太陽光発電所がつくられるようになってから日が浅いためパネルや蓄電池のリサイクル・リユースも問題点として指摘される。
現状、太陽パネルのリサイクルは状態のよいセルを組み合わせた中古セルの共食いや、ガラス層とアルミフレーム部位のリサイクル止まりである。(太陽光パネルのリサイクルの殆どはガラスとアルミ部分の事である)
リサイクル技術はあるにはあるが、回収した半導体素子部分は所謂電子ゴミであり不純物が大量に含まれておりリサイクルは極一部の貴金属の回収や残りがセメントに使われるなどで殆どの部位は焼却した残り滓をペレット状に固めての埋め立てである。
更に鉛、カドミウム等の公害病を引き起こした有害物質も大量に含まれており適切な対象を行わないと公害病を引き起こす。
低い耐久性
また、乱暴な言い方をすれば巨大な窓ガラスのような構造体であるため耐久性が低く強風でのパネルや固定フレーム等の損壊が多発、酷い物だと吹き飛んだパネルがマンションに突き刺さり大量の死傷者を出したり、勝手に発電し続ける為万が一短絡して火災に至れば火種を無限に供給し続け大惨事となる。実際にこの火事による死者も毎年出ている。
また、雹によってパネルが穴だらけになったりひび割れたりなど対環境性が低い。また東北震災では津波で流れた山間部に流れ着き、発電からの短絡で山火事に発展したケースもある。
2019年まで規定が制定されていなかった為工事の精度に酷いばらつきがある。(水上は2020年に規定作成・施策される予定)
あんまりエコじゃない
また、施設利用効率が著しく低いのと製造に大量の電気を使うためco2ライフサイクルは化石燃料の次に高くエコとは言い難い側面がある。
尚、最もco2ライフサイクルが低いのは水力発電、次いで地熱、そして原子力である。
余談
太陽電池の動作原理がICやLSIでは逆に厄介者となるので、光センサーや窓付きROM、発光ダイオードなど光を通す必要のある物を除き光が通らないように黒いプラスチックやセラミック、金属製の入れ物などで封止してある。また、窓付きROMも紫外線によるデータ消去時以外は光を通さないシールで目隠ししてある。(そうしないと強い光が当たったときに誤作動したり、当たる紫外線の波長によってはデータ消失の原因になる。)