曖昧さ回避
『さくらのうた』とは…
- 福田洋介の作曲による2012年度吹奏楽コンクール課題曲。本項で解説する。
- 日本の4人組ロックバンド、KANA-BOONの楽曲。ファースト・ミニアルバム『僕がCDを出したら』(2013)に収録されている。
概要
さくらのうた(SAKURA Song)とは、福田洋介(ふくだ ようすけ)の作曲による2012年度全日本吹奏楽コンクール課題曲(課題曲Ⅰ)である。
同氏の作品であり、2004年度の吹奏楽コンクール課題曲のひとつでもある『吹奏楽のための「風之舞」』と同様に、朝日作曲賞(第22回)を受賞している。
古来より日本人の精神的な象徴として親しまれている桜の、その時々に見せるさまざまな姿や彩りをAndante Cantabileの緩やかで美しいメロディに乗せて描いているのが特徴であり、派手さや技巧に頼ることのない、奏者やバンドの持つハーモニーや純粋な”歌心”が求められる曲である。
風にそよいで可憐に散りゆく花びらの一枚一枚の繊細さ、ほがらかな陽気のなかの桜並木、一陣の風とともに鮮やかに舞い上がる桜吹雪の儚(はかな)げな美しさなど、日本人としての琴線(きんせん)に触れるどことなくノスタルジックな雰囲気を持つこの曲は、2012年度の吹奏楽コンクールが終わってもなお多くの奏者の心に響き、”名曲”のひとつとして語り継がれている。
2019年の7月19日には、目黒恵梨の作詞によるヴォーカルアレンジ版『千年のいのち-さくらのうた』(歌:鶫真衣 演奏:陸上自衛隊中部方面音楽隊)を収録したCDが、ブレーン株式会社からリリースされている。
曲の構成
冒頭~前半部
Andante Cantabile(♩.=ca.56~66) 8分の6拍子
ピッコロとフルートの微かにたゆたう導入部と、これを受ける金管楽器の優しく輝くアンサンブルのかけ合いによって、曲は静かに幕を開ける。
Aからはクラリネットとサックスによる中音域の暖かみのある第1主題が流れ、これにグロッケンの8分音符やフルートのプラルトリラーを効かせた伴奏が彩りを添えていく。
続く第2主題のBでは、高音部が加わってより厚みを増したメロディに対してテナーサックスやユーフォニアムらが連符の絡みを見せ、その盛り上がりとともに加わったトランペット等の金管楽器が旋律をより鮮やかに変えていく。
間奏~中間部
ウインドチャイムとともに収まった雰囲気のなかでクラリネットとフルート、サックス、ホルンがアウフタクトのフレーズで橋渡しを行い、いままでの曲の流れを新たな方向へと運んでいく。
続くDからは、Grazioso(優しく、気品を持って)の指示のもとに穏やかなフルートと輝かしいトランペットとがソロの対比を聴かせ、そこからテンションを増したコードが連なる強奏のEへと移る。
Fからは曲の広がりがふたたび抑え込まれ、サックスパートが教会旋法(リディアン・スケール)のスタイルに則りながらアンサンブルを奏でるなか、リズムを刻むほかのパートが追従する形をとる。
Gからは代わって現れたトランペットのメロディと木管楽器の細やかなカウンターパートが互いに絡まり合いながら高まっていき、シンバルの弾けるフォルテシモを頂点として急激な減衰を見せていく。
後半部
グロッケンによる8分音符の響きを受けながらホルンのソロが第1主題の前半を再現し、次いでトロンボーンが大きなフレージングのもとに後半の旋律を奏でていく。
そして続く第2主題、一瞬の”空白”に万感の想いを込めた音楽は、その解放と同時に旋律の華やかさ、連符の煌びやかさをより一層際立たせ、音符の一つひとつを美しい『うた』として鮮やかに彩っていく。
最後のKからの後奏部分では、過ぎ去ったひと時を思い返すようなクラリネット、トランペットらのフレーズが一音一音を紡いでいき、最後のひとひらの花びらが着地するかのような、静かで安らかな音色をもって締めくくられる。
主な演奏団体(関連動画)
吹奏楽版
大阪市音楽団(Osaka Municipal Symphonic Band)
フィルハーモニック・ウインズ 大阪(Osakan Philharmonic Winds)
ウィッシュ・ウインドオーケストラ(WISH Wind Orchestra)
クラリネット5重奏版
広島ウインドオーケストラ(Hiroshima Wind Orchestra)
ヴォーカルアレンジ版『千年のいのち-さくらのうた』
陸上自衛隊中部方面音楽隊(JGSDF Middle Army Band)
関連タグ
外部リンク
参考文献
- 福本信太郎(解説) 『バンドジャーナル』2012年5月号 株式会社音楽之友社 2012年5月1日発行 34~35ページ