はじめに
アークナイツを知らない人達に説明しなくてはならないことがある。
YOSTARが配信するアプリ「アークナイツ」には逞しい男性や可愛らしい女性の水着姿がたまに描かれる。しかし彼らは海では決して泳ぐ事は無い。そもそも海に近付くことすらない。
それは何故か。
この世界において
” 『 海 』 は 人 類 の 敵 ” だからである
概要
アークナイツの世界である「テラ」は陸地は源石(オリジニウム)という貴重なエネルギー源である反面人を「鉱石病(オリパシー)」という難病に罹患させる危険な石と、それを大量生成して陸地をズタボロにする「厄災」にまみれた荒廃した世界であり、人は移動都市という超巨大な移動要塞のようなものを拠点として生活している。
この説明を聞いてこう思った人はいるだろう。「じゃあ海に船を浮かべれば良くない?中国じゃこのゲーム明日方舟ってタイトルだし海の方がお似合いじゃん」と。
しかしテラの海は陸地よりはるかに危険な地域となっている。その原因足る存在がこの「シーボーン」である。
ある時、急に人類に牙を剥いた敵性生物であり、あらゆる生物を捕食して栄養を蓄え、その土地を自分たちの都合の良い形に作り替えては「同胞」を増やす…という行為を基本原理としており、とにかく資源たりうる存在は全て捕食して資源化するその攻撃性から人類どころかテラに住まう生物全ての敵と表現した方が正しい存在。一方で陸地の国家群にとっては与り知らぬ存在であり、このシーボーンの脅威を認識し、正しく行動に移している勢力は現状ではエーギルとイベリアのみとなっている
貝のような甲殻やヒトデのような触手、サンゴのような石灰化した枝葉の肉体を持つ生物が多くまるで海洋生物のようにも見えるが、海から現れているだけで海から産まれた生物というワケではなく、この海洋生物然とした肉体も海洋生物を捕食し、模倣しているだけに過ぎない。
何でも捕食し、解析しようとする性質から、知能を持ち会話が可能な生命体が産まれる事もあるが、有識者曰く「生前の記憶や記録をただ読み取って利用しているだけで自我があるわけではない」とみなしている。
また、厄介なことにその血肉を人間が食らうとシーボーンの遺伝子が内側から人間を変えていってしまい、最終的には同じシーボーンに変貌してしまうという性質を備えている。そのため、海に船を出して進出しても、海で釣りをして獲れた魚を食ったらそこからシーボーンのバイオハザードが発生してしまう…というワケである。
駆逐しようにもどんどん進化して駆除が難しくなり、コミュニケーションを取ろうとしたらお仲間にされ、食って活用しようものなら食った自分がお仲間に。という悪辣さの塊であり、イベリアは奪い奪われの激しい陸地の国際情勢に向ける眼を多少捨ててでもシーボーンの陸上進出と増殖を止めるためあらゆる対策を講じている。
歴史
元々テラの海洋はちゃんと我々の見知った母なる海であり、「エーギル」という海洋生物の特徴を持った人種が陸地の技術を遥かに超えるオーバーテクノロジーで大都市を運営し海中を漂う世界だったのだが、数百年も前にシーボーンが産まれ、あらゆる土地、生物を食い潰して「同胞」にしはじめた。この時からエーギルとシーボーンの戦いは始まり、最初は様々な技術で蹂躙していったがその都度シーボーンが対抗策を編み出すように進化し、そこへエーギルが新たな技術を開発してシーボーンは進化して・・・のいたちごっこを繰り返している。それでもシーボンの適応速度と増殖速度が勝っている状況らしく、数百もあった海中にあるエーギルの都市もその手で数えるほどしか残っていないという。
調査の結果、シーボーンは「ファーストボーン」という全てのシーボーンの母とでもいうべき存在に制御された存在であることがわかり「ファーストボーン」を殺すことでシーボーンを一気に駆除ないし殲滅を容易にできるのではということで、ファーストボーンの抹殺を中心とした戦略が立てられることなった。
そしてある時、エーギルはアビサルハンター計画という、「シーボーンの遺伝子を意図的に組み込み、シーボーンを殺すシーボーン人類を生み出してファーストボーン「Ishar-mla」の暗殺を決行。「Ishar-mla」の抹殺は成功したものの、その際にアビサルハンターの一人に「Ishar-mla」という存在が乗り移るトラブルが発生し全員が通信途絶で行方不明に。更に「Ishar-mla」自体は消滅したにもかかわらずシーボーンの勢いはほとんど削がれておらず、結局払った犠牲に対して想定した効果が全く得られなかったことからエーギルとしてはアビサルハンター計画は失敗したと結論付けられることとなった。
その後、シーボーンの生態や存在に魅了された一部のエーギルが「深海教会」というカルトを発足し、人類を意図的にシーボンへ提供しだす異常者が陸地にまで現れ、特に深海教会による被害を受けたイベリアは、この経験からエーギル人に強い偏見を持つことになり、エーギル人が教会の人間かどうか尋問する審問官という職種が栄えるまでになってしまった。
そして、正確な時期は不明ながらも『大いなる静謐』という大惨事が海で発生。
あらゆるエーギルの海洋都市が文字通り海の藻屑と化し、海洋に面していた都市群も膨大なシーボーンの襲撃を受けていくつもの都市が滅ぼされ、シーボーンが陸地にまで根を張り出すという最悪の事態に陥った。
ある人物の尽力もあって『大いなる静謐』自体はなんとかシーボーンの陸上侵出を辛うじて食い止める事には成功したものの、イベリアはこれによって海のシェアを完全に奪われ、大国としての勢力を大きく削がれることとなる。
その後はエーギルもイベリアも各々の技術や思想のもとでシーボーン対策を講じているがいつこの均衡が破られてもおかしくないという苦しい戦況が続いており、遂にドクターを掘り出し、大国のトラブルを解決し、行方不明となっていたアビサルハンター達を戦力として抱えるまでに至ったロドス・アイランドが事態に介入しはじめたことで、予測不可能の未来が紡ぎ出される現在に至る。
敵として
初出であった「潮夕の下」から既にいやらしい機能を備えて登場し、熟練新参問わず多くのドクターを海の藻屑に変えた難敵ばかりとなっている。
ほとんどのシーボーン系エネミーが持つデバフ能力として「神経ダメージ」というものがあり、一定以上のゲージがたまることで大ダメージ+スタンという極めて凶悪なデバフを与えてくる。特に「大ダメージ」というところが凶悪であり、この大ダメージで重装が葬られるのは勿論、広範囲に神経ダメージを与える敵がいた場合、安全地帯と思っていた箇所に置いていた医療オペレーターや狙撃オペレーターが一撃で沈められ、戦線が瓦解する。
特に一発でも攻撃を当てると覚醒し、歩いた時に近くにいたオペレーターに平等に多量の神経ダメージを与えて侵攻ルート上のオペレーターを皆殺しにした「鉢海のリーパー」と、ある程度HPを減らすと広範囲に固定ダメージと大量の神経ダメージを与えて拠点に重装と術師を固める戦術を粉々にした「嚢海のクローラー」が猛威を振るった。前者はHPが高く動きも速い、後者は広範囲への神経ダメージカウンターによって「重装でブロックしてエイヤフィヤトラやシルバーアッシュによる速攻で潰す」戦略が通用しなかった上、この時は神経ダメージを回復させる医療オペレーターが存在しなかったこともあってクローラー一匹現れただけで発狂するドクターが大量に発生した。
続く「狂人号」では更に「溟痕」と呼ばれるデバフ地域を形成する進化を遂げる。設定上ではあらゆる有機物を食らって同胞に栄養を還元する生物群であり、いわば人食いサンゴ礁とでもいうべき存在。一度1マスにでも溟痕が出現すると時間経過で各マスを侵蝕、放っておけば高台以外の全範囲が溟痕に覆われることになる。溟痕に浸食されたマスはオペレーターが居座ると通常のダメージを神経ダメージを継続的に与えるというデバフマスとなるが、それ以上の問題はこの溟痕マスに座ったオペレーターに一部のシーボーンが特効を持ちはじめること。この特効で猛威を振るったのは「深溟のプレデター」であり、そもそもが物理・術ダメージを80%の確率で回避するという撃破が難しい難敵なのに溟痕上でブロックできなくなるのである。これによってプレデターが湧くステージでは自動指揮が崩壊しやすく、狂人号が常設化する前の復刻開催では自動指揮が崩れ多くのドクターが戦々恐々した。
対策としては溟痕を作り出すエネミーを殺さない事、うかつにダメージを与えないしか正攻法では突破できなかった。そのため、素質により溟痕を生成する能力を無効化できたラップランドでこのエネミーをただの木偶に変える戦術があまりにも強力に刺さったことで狂人号では大活躍。全ステージで過労死寸前まで働かされることとなった。
こうした難敵揃いなのもあって危機契約などでシーボーン系エネミーのマップが公開されると対策が取れるオペレーターをピンポイントで持っていないとデイリーすらこなせない程の難関マップと化すことが多く、ドクターはいつシーボーンと戦うのかを劇中描写同様恐れながら待つこととなる。
更に「生存航路」では神経ダメージの脅威はそのままに「小核のデポジッター」という個体を倒すと高台マスを作るという能力を得た。一方で狂人号で多くのドクターを貪食した溟痕は一部マップに限定され、理不尽な難易度は鳴りを潜めた。一方で小核のデポジッターを無意味に倒してしまうとシーボーンの移動ルートが変化し、オペレーターを固めたルートじゃない方に敵がいってしまったり、高台マップと化した死骸が敵を強化したりしてしまうなど、タイミングや状況を見て何を差し込むべきかという考える事の多さは狂人号より増えることとなった。
そしてついに、本体が攻撃を受け付けない無敵の存在まで現れた。人類はシーボーンに勝つことはできるのだろうか…
関係者
アビサルハンター
イベント関係
シーボーン
関連タグ
真相
以下は「生存航路」における重大なネタバレが存在します!!!
ここに正義はなく、ただ前路のみがある。
存続なくして、いかに文明を語るというのだ?
シーボーンの真の目的はテラの蹂躙や征服ではなく、宙にあった。
「ファーストボーン」である「Ishar-mla」は元々、先史時代の人類が残した「生命存続のための巨獣」であった。先史時代の文明は崩壊し、「Ishar-mla」もテラの地殻付近のマントル層のあたりまで施設ごと落とされてしまい、そのまま忘れ去れるだけとなっていた。
しかし、はるか昔に人類学者であり、先史文明研究者であったエーギル人、マルトゥスがこの「Ishar-mla」が閉じ込められていた遺跡を発見。この調査ではマルトゥスを除いた全ての調査員が死亡する程の凄惨な調査結果となった。
そして、水槽のガラス越しにIshar-mlaと触れ合ったマルトゥスは、いずれ起こりうるテラの全生命が…それどころか、宇宙に住まう全生命が死に絶える大災禍がいつか訪れるという”事実”をその光景を体感させられるような形で知ってしまう。
遥か未来の話ではあるものの、「いつか絶対にテラの全生命は死に絶える」という事実に絶望したマルトゥスは「どうやったらその破局を突破できるのか」ということをひたすら演算し、求めた。
その時、Ishar-mlaはか弱い生命をその身から産み出した。マルトゥスの脚にへばりつくだけで精いっぱいで数日も持たずに死ぬだろうに、無垢に触れる弱い生命を見た時、マルトゥスは閃く。
マルトゥスは、「宇宙的破局に耐えうる生命体を生み出す」ことで、この破局を突破する方法を思いついた。
そうして産まれたのが、シーボーンであった。
そのため、シーボーンがやけに生命を食らい尽くして栄養を溜め込もうとしたのはこの宇宙的破局に対抗できる生命になるまで進化するためであり、そのためにはテラの海洋だけでなく陸上の全生命体も取り込み、最終的に宇宙へ進出する必要があった。その宇宙でも星々を喰らって進化を続け、宇宙的破局に勝利する最強の生物を産み出す。これがシーボーンの本当の目的であった。
しかし、「Ishar-mla」が産み出す生物には限界があり、進化の速度を上げるには取り込む生命体がより質の良く。栄養のあるものを取り込む必要があった。そこでマルトゥスは信号を送り、その信号から遥か未来に待ち受ける宇宙的破局の絶望と、それに耐えうる手段としてシーボーンを紹介するという暴挙に出る。永き戦いに疲弊し、未来を考える余裕を失いつつあるエーギル人にこの“救い“は劇しく映ったようで、コレが結果的に深海教会の始まりとなった。
彼らの潮目が変わったのは「孤星」の件。
ライン生命の科学者、クリステン・ライトが欺瞞されていた宇宙の層に穴をあけ、『本当の”宙”』をテラの生命に示したのであった。
この穴をシーボーンは感知し、早急に宇宙に進出せんと行動を活発化する。
折しもこのタイミングでエーギルの都市が陸上に航路を結ぼうとする動きがあり、この陸上との中継点を乗っ取って陸上に進出し、宇宙への足掛かりにせんと動き出す。
そして、「ここでシーボーンに負ければ人類はエーギルの技術を陸地に供給できず、いずれ敗北する」という局面にまで追い詰められ、その最中にドクターとケルシーが「シーボーン」と名乗るマルトゥスが接触し、その真の目的と迫る宇宙的破局の存在を人類に共有することに。
曰く「存続失くして、いかに文明を語るのか?」が彼らの意志である。文明を発展するには生命がいなくてはいけない。破局を耐える生命が無ければ、テラの、全宇宙の文明は存在しなくなるだろう。
しかし、彼らの行動はいかに高尚な意思を伴った行動だとしても、その実態は既存文明を自分の都合で食い潰す侵略行為に他ならない。彼らには文明を生み出すような「意識」がない。つまり破局を耐えたあとの「シーボーンだった生命」はその後文明を生み出すことができるだろうか?生きるためだけに産まれた生命は、果たして生きている価値があるのか?文明や意志を託すという限りある生命を尊ぶような事ができる生物なのだろうか?
故にケルシーたちは「文明失くして、いかに存続を語るのか?」と問い、マルトゥスとは決別する。
シーボーンと人類。来るべき終点で立つのは、果たしてどちらなのか。