概要
コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズ作品の第一作。
シャーロック・ホームズとワトソンの出会いが描かれる。
アフガニスタンでの戦争から帰ってきた一応医師ジョン・ワトソンが、出合頭にいきなりそれを指摘する顧問探偵シャーロック・ホームズと221Bで共同生活を始め、「アメリカの人が殺された事件」に関して調査する第一部と、アメリカのユタ州で、モルモン教(厳密には「だいたいあってる」)の人が苦難を乗り越えて生活していた際にいろいろな悲劇ができたという第二部、落ちの三部構成。
一応売り上げは芳しくなかったが、次回作の依頼は結局来た。
なお最初、挿絵は父親のチャールズ・ドイルが描いた。さらに荒俣宏は、挿絵のホームズを、その挿絵画家に似せている点を示唆している(荒俣『パラノイア創造史』)。
モルモン教
モルモン教についてはまともな宗教団体より教祖様(厳密には二代目のブリガム・ヤングが登場するが、初代がいろいろアレなので)が威厳足りないので、少々盛られている。また作劇上重要な、架空の上部組織のネタ元は解らないらしい。
でもなおかつ設定上「モルモン教徒の黒歴史」に振れないと殺人の動機であるお嬢さん辺りがつじつまが合わない、あとリアルモルモンに関し、一応名誉を損ねる描写(一応資料に基づくとこうなるものの、一夫多妻制度に関しては作品のような描写ではない)がある点から、TVドラマ化はされていない。一応1910年代にアメリカで勝手に映画化はされている。あと1940年代に「どうしてこうなった」仕様の作品が発表されている。また、コナン・ドイルはモルモン教の資料として以外にマーク・トウェイン(『西部放浪記』でユタ州へ行きモルモン教徒と交流しており、付録でマウンテンメドウズの虐殺などを描く)の作品をリスペクトしているので、「デニス・ソウヤー」という名前が出てくる。
地理
アメリカに関する地理のいい加減さが指摘されているが、作者によればこれの執筆当時ロンドンの地理にも詳しくなかったそうである。
タイトル
原題「Study in Scarlet」は旧約聖書雅歌4:3「あなたの口は紅い糸のよう」から。
聖書からタイトルを取るというのはその発想はあったぽいが、「STUDY IN なんとか」という形式はそれまでなかったらしい。なお邦訳に当たりこの「STUDY」は「研究より習作では」説があり、河出書房版とかではそう(『緋色の習作』)なっている。また元来の訳は、誤訳でもないし親しまれているという点から21世紀になった後発行のやつで「緋色の研究」のままというのもある(新潮社版、光文社版など)