概要
カバラとは「受け入れる」「伝承する」を意味するキッベールの名詞形であり、この語はタルムードに収録されるような口伝律法を指す言葉として用いられた。
主張される出自においても古代の預言者たちや聖賢たちから口伝えに伝達されてきた、とされている。
カバラには複数の学派が存在している。
カバラについての文献には、タルムードと同様に、聖書の解釈法や宗教的実践についての体系や聖書にないエピソードや後代に起こったとされる内容を含む。
「神秘主義」と呼ばれる通り、超自然的記述や形而上学的解釈の比重が大きい。
日本においてもセフィロトといったカバラ由来の観念は有名で、複数のフィクション作品でも取り上げられている。
著名な文献『ゾーハル』に記されたリリス等についてのエピソードを参照した作品もある。
ただし、非ユダヤ教世界における「カバラ」観はユダヤ教本来のカバラではなく、ルネッサンス期以降に西洋の非ユダヤ人達の間で解釈された物に拠るところが大きい。
例えば日本語媒体でのクリフォトの特徴についての参照例は、後述の「ヘルメティック・カバラ」の流れを汲む魔術系の文献に由来するもので占められている。
非ユダヤ・カバラ
非ユダヤ教徒によるカバラとしては、キリスト教信仰をベースに新プラトン主義と共に再解釈された「クリスチャン・カバラ」、新プラトン主義に加え、ヘルメス主義や西洋占星術、錬金術、古代エジプト神話やギリシャ・ローマ神話の宗教を中心とした「異教」も素材として発展した「ヘルメティック・カバラ」がある。
とくに後者はアレイスター・クロウリーによるセレマ思想や、彼と交流のあったマクレガー・メイザースをはじめとするオカルティストが建てた「黄金の夜明け団」の思想のベースにもなった。
「クリスチャン・カバラ」と違い、思想的基盤はアブラハムの宗教ですらなくなっている。本来のカバラと概念や用語名を共有しつつも、ニューエイジ思想にも援用されたそれはユダヤ教のカバラとは別物の思想(思考)体系となっている。