解説
アルファベット表記はZohar。日本語媒体ではゾーハルとも音写される。
一般的に『光輝の書』と訳される。ユダヤ教神秘思想(カバラ)の中心となる書物であり、ユダヤ教のタナク(キリスト教で云うところの旧約聖書)の最初の5冊であるトーラー(モーセ五書)の注釈書。
ユダヤ神秘思想の中に出てくる、セフィロトの木やアダム・カドモン、様々な天使、膨大な数を取り巻く多くの天国などの諸々の神秘思想などがまとめられたユダヤ神秘思想関係の重要文献である。
13世紀のスペインのラビであったモーゼス・デ・レオンの著作とされ、2世紀頃に存在した賢者シメオン・ベン・ヨハイの名を借りて彼との講話を記録する形でアラム語によって記述されている。
2021年5月現在、日本語訳は法政大学出版局から刊行されたエルンスト・ミュラーによるドイツ語抄訳本からの重訳『ゾーハル カバラーの聖典』のみが存在する。
英語ではスタンフォード大学からプリツカー版(Pritzker Edition)の全訳が刊行されている(紹介ページ)。全12冊。
創作物におけるゾハル(ネタバレを含みます)
主にモノリスソフトが開発・リリースしている『ゼノシリーズ』で登場。
作品によって一部設定や外見が異なるが、共通して「金色のモノリス」「地球で発見された未知の物体」「無限のエネルギーを生み出す永久機関」「別次元・別時空への干渉」「アクセスした者が望む事象を顕在化させる願望機」「全ての始まり」などの要素を持ち、ほぼ全てのゼノシリーズにおいて重要な存在となる。
ゼノギアス
無補給疑似永久機関『事象変移機関ゾハル』。
太古の昔、ロスト・エルサレム(地球)で発見された巨大なプレート状の物体。明らかに人工物でありながら地球の39億年前の地層から発掘された、だが計測の結果、ゾハルは150億年前つまり宇宙創世の刻から存在してたことが明らかになった。
物語開始よりはるか以前、地球時代には異常磁気物質(MAM)と呼ばれ様々な実験が行われたが、結局その正体を解明することはできず研究は放棄されゾハルは一旦、封印されることになる。
その後、古代宗教信仰者による宇宙放浪船団『巡礼船団』の博物運搬船から考古学研究者"ら"によって発見・徴収された事で地球時代から5000年の時を経て研究が再開された。
理論上、無限大のエネルギーを恒久的に取り出すことができる能力を持つことから、エネルギー機関として実用化する計画『プロジェクトゾハル』が進められることになった。
原理としては、現在を含む未来の事象を可能性事象として捉え、その中でゾハルへのアクセス権を持つ能動主体にとって最も「都合のいい」事象を顕在化させ、そのエネルギーポテンシャル変位をエネルギーに変えるというもの。
具体的に云うと、ある時点AからB、C、Dという未来(可能性事象)があるとして、主体Xがゾハルにアクセスして「Dという結果」を望むと、ゾハルによってA→Dに至るまでに必要なエネルギー(実現させる事象によってはあらゆる全ての法則を捻じ曲げるほどの)が発生。B・Cというその他の可能性を無理やり排除し、Dという可能性事象を「強引」に現在に塗り替え、実現させてしまうわけである。それがたとえどのような事象であろうと。
暴走して一度は惑星を消滅させてしまう被害を出すも、第8世代生体人工知能型コンピュータ『生体電脳カドモニ』を組み込むことによってようやく実用化可能になり、同時期に完成した恒星間戦略統合兵器体系『デウスシステム』の統御と動力に使われることになった。
しかしデウスとの連結起動実験の際、デウスからの無限のエネルギーの要請=無限の可能性事象という本来ありえない選択確率0の事象要求を受けたゾハルは、時間の始まりから終わりまでを内包する高次元との接点『セフィロートの道』を開き、超高次元の存在であり、全ての宇宙・全ての次元が始まる以前の「無のゆらぎ」、すなわち無限のエネルギーそのものとも言える『波動存在』を取り込んでしまい、デウスを暴走させてしまう。
結果として、周辺惑星と軍は多大な被害を出しながらもデウスを凍結。暴走原因を探る為にデウスを各セクションに分割し、恒星間航行船《エルドリッジ》にて移送するところから『ゼノギアス』の物語が始まることになる。
作中に登場するロボット兵器『ギア』やその他メカ類のエネルギー機関であるスレイブジェネレーターの親器でもあり、各スレイブジェネレーターはそれぞれに施されたマーキングに応じた量のエネルギーをゾハルから転送・供給させてもらっている。
そのため、ゾハルが停止するとスレイブジェネレーターはエネルギーの供給を受けることができなくなり、その機能を停止してしまうことになる。
スレイブジェネレーターは作中世界の文明レベルではブラックボックスとなっており、マーキングは基本的に変更することはできないが、唯一グラーフのみが書き換えることができる能力を持つ。
その性質から元ネタとなったのは『2001年宇宙の旅』で登場するモノリスではないかと言われている。
ゼノサーガ
物語のカギを握る金色の巨大なプレート状の物体。
21世紀の地球、ケニアのトゥルカナ湖付近でミスター・マスダ率いる発掘隊によって発見された。これはオリジナルゾハルと呼ばれ、オリジナルを研究して製作されたゾハル・エミュレータと呼ばれる補器が存在する。
実数宇宙と虚数宇宙、次元の上位領域と下位領域を繋ぐ“窓“のようなもので、莫大なエネルギーを発生させる機能を持つ。内部にはU-DO(ウ・ドゥ)と呼ばれる制御システムが存在しており、時空間といったものに限定されない、未知のエネルギー機関として研究されていた。
しかし、オリジナルゾハルに触れた人間は何処へかと消失してしまう他、模造品であるゾハル・エミュレータですら敵性勢力『グノーシス』を呼び寄せ、惑星を丸々一つ消し去ってしまう局所事象変移と呼ばれる現象を引き起こすほどの危険性をはらんでいる。
その性質から様々な勢力に狙われ、争奪戦が繰り広げられる。
ゼノブレイド
ゾハルではなく「ゲート」という名前で『ゼノブレイド2』にて登場。形状はゼノサーガのゾハルと同じだが、ディテールが一切無いシンプルな見た目をしている。
20世紀初頭。巨大学術機関「アオイドス」の前身であるとある大学の一研究室の研究員によってアフリカで磁気異常物質として発見。その後の研究でエネルギー保存則を無視した一種の永久機関である事と、複数の宇宙と接続する“門”である「マルチバース・ジョイント」である事が判明する。
後に地上から衛星軌道上にあるオービタルリングを繋ぐタワーの一つである「ラダマンティス」の軌道ステーションにアオイドスのゲート研究拠点が移され、ゲートを管理するためのコンピューターとして女性人格の「プネウマ」、男性人格の「ロゴス」、プネウマとロゴスの意見をまとめる裁定者の「ウーシア」の3基の生体素子から成る合議型人工知性群「トリニティ・プロセッサー」が搭載された。
トリニティ・プロセッサーはゲートの管理運営システムとして拡張していく過程の中でゲートとオービタルリングを自衛するための防衛兵器として、ゲートから遠隔でエネルギー供給を受けるスレイブジェネレーターを搭載したセイレーンやアイオーンなどの端末兵器「デバイス」を生み出し、トリニティ・プロセッサーの制御の下、敵性存在に対しその力を振るった。
ゲート発見から何年もの歳月が過ぎた20XX年。
当時行われていた人類同士の激しい戦争の戦火が宇宙にまで伸びてきている事を嘆いた一人の研究員・クラウスはゲートの力を使って人類が神に近づけば現状を打破できると信じ、同じ研究員であるガラテアの制止を振り切り相転移実験を強行。
その結果、世界は「人類が滅亡し、荒廃した地球」と「巨神と機神が統べる閉じた宇宙」の二つに分離してしまう・・・。