昔、爆発があった
この『宇宙』は、爆発から産まれた
昔、爆発があった
この『星』は、爆発から産まれた
昔、爆発があった
この『生命』は、爆発から産まれた
そしてまた、爆発が起こる
…これが、我々の目撃する『最後の爆発』になる
概要
コジマプロダクション開発によるゲーム。2019年11月8日にPS4版がソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から、2020年7月14日にPC版が505Gamesから発売された(PC版はSteam/GOG/Epic Games Storeによる全世界配信のため、イタリアの505Gamesがパブリッシャー)。タイトルの意味は「死」と「(生きている海生生物の)座礁」という矛盾を抱えている。
映画的演出をゲームに取り入れることに定評のある小島監督の作品らしく、この作品のゲーム映像はまさしく映画のティザームービーであり、原作というブランドも、MGSというシリーズの看板も、なにも持たない完全オリジナルでありながら、既に完璧なまでに作り込まれた世界観一つで、国内外問わず多くの人々を魅了し、今なお発売前から翻弄し続ける本作は、まさしくコジマプロダクションがコジマプロダクションとして立ち上がるための御旗に相応しい作品と言えるだろう。
発売まで
MGSVを最後にコナミから独立し、コジマプロダクションを立ち上げた小島秀夫監督が2016年にタイトルだけを上げたのが始まり。
その後イメージが公開されると涙を流すかのようなタイトルロゴに、『黒い涙』を流すノーマン・リーダスの顔だけという謎が謎を呼ぶイメージと『黒』と『涙』、そして 様々な生命が『座礁』し、『死滅』している空間に一人立つ裸のノーマン・リーダスという謎しかないトレーラーをが公開される。
E3で新トレーラーが公開され、以降監督を始め、どんどんスタッフから情報が公開されているとは言え、彼らはゲームがどのようなモノなのかについては一切言及をしなかった。
最新かつ最長のトレーラーですらこれである。何一つどのようなゲームなのかはわからないどころか、内容や展開の予想すらもまるで出来ない。ここまで要素が散りばめられ、ここまで細かく内容を描写されても、タイトルを繋げ、ここからゲームについて断定、確定できるモノは何一つないのである。
故にこのゲームについてユーザー達は想像力を駆り立てられ、魅力的な俳優の姿や一つ一つの要素からデスストランディングはこういうものかとイメージしてファンアートを産み出し続けている。これによって『ゲームの』デスストランディングとは別に、ファンの手によって一つの『ミームの』デスストランディングが産み出されつつあり、これを監督含め制作チームたちも楽しんで流れに乗って『デスストランディングというミーム』の成熟を加速させている。
トレーラーとキービジュアルが謎が謎を呼び続ける本作に対して、考察やわかっている範囲でのファンアートが国内外問わず多くの人々に作成され、ゲームとは別のデスストランディングが独り歩きを始めているという、まさに「制作者とプレイヤー(ファン)によって形作られる一つの物語」が胎動している。
ゲーム性
本ゲームは「配達アクションゲーム」と呼ぶべきものである。
プレイヤーは3人称視点で主人公のサムを操作してミッションを請け負い、任務を達成していくことでストーリーが進展する。
任務の大半は「荷物の配送」であり、サムは世界の復興のため大量の荷物を抱えて、広大なオープンワールドの中で道なき道を徒歩によって文字通り踏破しなければならない。
最大の特徴は、プレイヤーキャラクターのサムが地形から非常にリアルな影響を受けること。
重荷で悪路に踏み込むとよろけるし最悪の場合は転倒する。こぶし大の石ころでも無造作に上を通過すれば躓いて転倒するほどである。サムが転がれば当然荷物も傷つき、果ては全損してしまうことになるため、ふんばることにより転倒を防がなければならない。
当然地形によっては徒歩による通行ができないわけだが、そのような場合は梯子やロープを駆使して地形を踏破しなければならない。逆に言えば、きちんと手段を用意しているならば踏破できない場所はほとんど無い。
中には水没厳禁、天地無用、要冷蔵など特殊な条件がかかる荷物もあり、いかに荷物を傷つけずに運びきるかがプレイヤーの腕の見せ所である。
一見するとかなり地味だが、実際には様々な要素に急かされながら臨機応変に環境に対応しなければならず、プレイヤーにスピーディな思考を要求する場面も多い。
危険地帯を踏破してでも迅速に荷物を届けるか、それとも迂回路を見つける等して時間がかかってでも安全性を重視するかはプレイヤーの判断に委ねられる。
簡易な梯子やロープで道を作るのみならず、任意の場所に橋やジップラインを建設することも可能。開拓が進めばどんどん配達が便利になっていく。
はては国道までも敷設可能であり、国道網の完成は本作の代表的なやりこみ要素の一つとなっている。
しかしながら建設のためには相応の資材が必要であり、現地までの資材の輸送はサムが自力で行わなければならないので一筋縄ではいかない。
従来のオープンワールドゲームのように「移動した先で何をするのか?」ではなく、「どう移動するのか?」自体を核に据えたゲームデザインがなされていると言えるだろう。
ストランドシステム
本作のもう一つの特徴であるオンライン要素。
プレイヤーのワールドは他のプレイヤーのワールドと緩やかにつながっており、他プレイヤーが設営した梯子やロープ、その他さまざまな建設物を共有することが可能。
使用するといいねが相手プレイヤーに贈られるほか、任意で多数のいいねを追加することができる。
さらには他プレイヤーが通った道筋が足跡となって残り、多くのプレイヤーが繰り返し通った道は地面が踏み固められて道になる。
単純に攻略の助けになるのみならず、相互にいいねをやり取りすることによって感じられる繋がりは本作の重大なテーマであり、独特の雰囲気を構築している。
物語
デス・ストランディングと呼ばれる謎の現象により、繋がりが消え、世界は崩壊してしまった。
「この世」と「あの世」の境界線『ビーチ』の存在が明らかになり、人類はビーチの影響から得た特殊能力と技術を応用しながら生き延びていたが、時間を加速させる特殊な雨『時雨』と共に現れる亡霊のような存在『BT』が引き起こす『対消滅』により、孤立化の一途をたどっていた。
伝説の配達人と呼ばれる男『サム・ポーター・ブリッジス』は、もう一度世界を繋げるため、たった一人で北米大陸横断に挑む。
登場人物
- サム・ポーター・ブリッジズ
吹き替え:津田健次郎
本作の主人公。『伝説の配達人』の異名を持つ配達人(ポーター)
接触恐怖症のため他者との関りを避けていた。
対消滅(ヴォイド・アウト)に遭遇しながらもあの世から帰還を果たした経験がある『帰還者』。
レベル2の能力者(DOOMS)であり、BTの気配を察知することができる。
さらに自身の体液がBTに対して有効であるなど非常に特殊な体質の持ち主。
義姉のアメリ救出のためブリッジズの依頼を受け、北米大陸横断に挑む。
- BB-28
BTの視認を可能にする装備。ブリッジ・ベイビー(通称BB)
元々はブリッジズの死体処理班イゴールのものだったが、とある事情からサムが用いるようになる。
- フラジャイル
演:レア・セドゥ
吹き替え:水樹奈々
民間輸送会社「フラジャイル・エクスプレス」の現リーダー。
『ビーチ』を通じた瞬間移動ができる能力者(DOOMS)。
瞬間移動する際は、合図としてスーツの肩部分から棘のようなものが出る。
首から下が『時雨』に侵されてしまっており、実年齢よりも大きく老いてしまっている。
- ブリジット
演:リンゼイ・ワグナー
吹き替え:井上喜久子
サムの義母。アメリカ合衆国初の女性大統領にして最後のアメリカ大統領。
崩壊後に再建された『UCA(アメリカ都市連合)』の初代大統領として、サムにアメリカを再び繋ぎ直すよう依頼する。
- アメリ
演:リンゼイ・ワグナー
吹き替え:井上喜久子
サムの義姉。
サムに先駆けて北米大陸横断を果たしたものの、テロリストに捕まり身動きが取れなくなってしまった。
アメリカ再建に興味が無いサムがブリッジズに協力しているのは、彼女を救出するためである。
- ダイハードマン
演:トミー・アール・ジェンキンス
吹き替え:大塚明夫
アメリカ再建機関「ブリッジズ」長官。
髑髏を模した仮面を身に着けている褐色肌の男性。
- デッドマン
モデル:ギレルモ・デル・トロ
吹き替え:石住昭彦
ブリッジズに所属する監察医。
BBのメンテナンスも担当している。
- ママー
演:マーガレット・クアリー
吹き替え:坂本真綾
ブリッジズのメカニック。様々な装備を開発したり解説してサムをサポートする。
子供がいるため研究所から身動きが取れないという。
- ハートマン
モデル:ニコラス・ウィンディング・レフン
吹き替え:大塚芳忠
ブリッジズのメンバーである古生物学者。
21分毎に心停止する体質で、そのたび3分後に身に着けているAEDで蘇生、1日に60回も死と蘇生を繰り返している。
- ヒッグス
演:トロイ・ベイカー
吹き替え:三上哲
各地で多発しているテロの首謀者であり、行く先々でサムの行く手を阻む。
黄金の仮面で顔を隠している。
吹き替え:山路和弘
BBに接続した際に視えるフラッシュバックに映る謎の男。
用語
- デス・ストランディング
作中で起こった『あの世』から『死』が『座礁』してくる現象。DSとも呼ばれる。
雨が時雨となり、それとともにBTが現れ、各地で対消滅(ヴォイド・アウト)が発生した結果、アメリカは交通・通信・記録等あらゆる意味で分断されてしまった。
- ビーチ
DS以後確認されるようになった、『あの世』と『この世』の境目。
BTはこれを通って『この世』にやってくる。
時間の概念が曖昧な世界であり、大容量のデータ通信や演算などもここを経由することによりほぼゼロ時間で行うことができる。
この性質を利用することでカイラル通信の技術が生まれた。
- 時雨(タイム・フォール)
地面に落ちるまでに最初に触れたものの時間を進める雨。
DS発生以後降るようになり、これが降る空には逆さ虹がかかる。
触れれば建造物や人工物は劣化、生物は老化してしまう。
また、BTは時雨とともに現れるため、その意味でも極めて危険である。
- BT
時雨とともに座礁地帯に現れる、亡霊のような存在。人を襲い食らおうとする。
DOOMS(能力者)かBBにしか感知できないが、BTもまた激しい動きや呼吸でしか人間を感知できない。
生きた人間がBTに取り込まれた場合は対消滅が起こり、広範囲を跡形もなく吹き飛ばしてしまう。
- ネクローシス
人間の遺体が死後BT化する現象。おおよそ死後48時間以内に発生する。
ネクローシスが起こるとBTが集まり、そのまま周囲の生きた人間が襲われ対消滅が起きる危険があるので、この世界では死者は速やかに郊外の焼却場で焼却されることになっている。