概要
頭文字Dの主人公である藤原拓海が序盤から用いている必殺技で、路肩の構造物にイン側のタイヤを引っ掛けて遠心力に対抗し、コーナリング速度を引き上げるテクニック。
この技を編み出した秋名では排水用の溝を用いていたため、この名前がついている。
拓海が溝落としを閃いたのは中学生の時で、雪道でも速く走れるように道路の端の雪にタイヤをひっかけたのがきっかけだったという。
同じ「ミゾ落とし」にも複数のパターンがあり、やり方も若干異なるが、いずれも使うのに適した溝、あるいはそれに準ずる構造がないコースでは使用できない。
またその性質上、限界まで車高を落としていると使用は難しい。
なお作中では序盤の表記は「ミゾ落とし」であったが、その後「溝落とし」に変化している。一般的には「溝落とし」の方が通りやすく、Pixivのイラストもこちらのタグしか存在しない(2020年12月現在)。
通常のミゾ落とし
コーナーのイン側の溝にタイヤを引っ掛けることでアンダーステアを防ぐ。これにより思い切った突っ込みが可能となり、ライバルが「曲がれっこない!」と思うようなスピードでのコーナリングが可能になる。
高橋啓介との2度目の秋名でのバトルで使用された。
必殺ミゾ落としパート2!!
前項が突っ込み重視なら、こちらは立ち上がり加速で相手を抜くための走法。
しかし作中でその原理について言及は全くされていない。
前項のミゾ落としを閃いたことを得意気に話す中学生の拓海に、父・文太は「もう一つのやり方がある」とヒントだけを残していた。
その後閃いた描写自体はなかったものの、無事会得したようである。
岩城清次とのバトルで使用。技名がVol.91のタイトルにもなっているが、最後のコマで拓海がこの技名を心で呟いただけで、詳細については次話Vol.92に持ち越されている。またこのフキダシでは「パート②」の表記であった。
変形ミゾ落とし
筑波の城島俊也戦で使用。この舞台での「溝」は路側帯の突起を超えた部分の砂利で、高さは舗装路と変わらないため、厳密には「落とし」ているのとは異なるため、溝落としの変形として紹介された。また追い抜きの瞬間にはブラインドアタックとの複合技として用いられている。
原理的には一般的にイメージされるショートカットである。
デメリット
前項を読んでもらえばわかる通り、原理自体は簡単で地味なのだが、対戦相手とバトルしつつ全開アタックしている状態で溝に正確にタイヤを落とすのは至難の業である。作中でも溝落としを成功させたのは拓海を除けば文太と高橋涼介の二人だけで、実戦のテクニックとして用いているのは拓海だけと言ってもよい。
その拓海も入念なコースの下見と一発の集中力という下地あっての使用を前提にしており、秋名以外で積極的に用いることは少ない。
啓介が「ゲームの必殺技みたいにポンポン連発できるものではない」「(離れた差を追めるために使うようになったら)もうマジでヤバい」と深刻そうに話していた通り、乱用する中で僅かなコントロールを誤ると拓海ですら取り返しのつかない事態を招く。
そうした使用環境の限定された技とあってその知名度の高さとは対照的に意外と使用回数は少なく、中盤以降はブラインドアタックにほぼ取って代わられている。
その他
溝落としの正体を見破れるのは一定レベル以上の走り屋だけのようで、作中では涼介と中里毅しかいなかった。
なお涼介はオーバーテイクポイントを聞いただけで何が起きたかを理解するという、拓海に劣らぬバケモノぶりを披露している。
啓介も初見では全く理解できなかったが、その後腕を磨く中で技の正体と難易度を理解していったようだ。
涼介は拓海のことを「ストレートでもコーナーでもない、第三のポイントを走るのがうまい」と表現しているが、その評価に2つのミゾ落としが大きく貢献しているのは間違いあるまい。
現実でのミゾ落とし
2018年11月22日分放送の報道ステーションにて、当時WRCにおいてTOYOTA GAZOO Racingのエースであったオイット・タナクの強さが紹介されていたとき、このミゾ落としが登場したことがある(ただし技名は登場しなかった)。
要約すると通常のドライバーがトラクション重視で舗装路に沿って走るのに対し、タナクは多少リスクを犯しても舗装路の端のグラベル(土砂)もしっかり踏んで走ることで理想的なコーナリングラインを実現しているとのことであった。
原理的には変形溝落としのやり方である。
またジムカーナでも、パート2のやり方でよく用いられているとされている。