TOYOTA_GAZOO_Racing
とよたがずーれーしんぐ
2015年に正式発足。
開発の様々な側面において市販車を強く意識しており、従来のトヨタのレース活動との大きな特徴である。
社内カンパニーの「GRカンパニー」が統括をしている。
ワークスチームは赤・白・黒の3色を基調としており、このカラーリングでWRC・WEC(ル・マン24時間含む)・ダカールラリー・ニュルブルクリンク24時間レース・全日本ラリーなどに参戦している。
このうちニュルは勝つことではなく車両の開発が目的で、過去にもLFAやC-HR、LC F(未発売)などのプロトタイプ車両で参戦している。またGAZOO Racingが直接手掛けたわけではないが、ニュルで鍛えたことを宣伝文句にした15代目クラウンのように、明らかにGAZOO Racingの活動が影響を及ぼしているような開発思想のトヨタ車も増えている。
2007年にニュルブルクリンク24時間で人とクルマを鍛えることを主目的に、豊田章男とその師匠であり、トヨタ最高のテストドライバーであった故・成瀬弘が主導する社内の有志で立ち上げた、「Team GAZOO」を源流に持つ(GAZOOとは営業担当時代の豊田章男が立ち上げたポータルサイト)。発足当初は「トヨタの名前を冠したチーム名が許されなかった」ことからこのような名称となっている(当時副社長であった豊田章男が広報上で「モリゾウ」と名乗り始めたのもコレが遠因)。
上述の理由から発足当初から予算もなく、初参戦はその当時生産終了していた中古のアルテッツァ。後にスーパーカーのLFAの開発を行ったり、チューニングカーの「G's」と「GRMN」シリーズを展開したりしていた。
豊田がトヨタの社長になった後にGAZOOの範囲は拡大され、2015年にはトヨタのワークスチームもGAZOO Racingを名乗り、2017年にはGRカンパニーが設立されて現在に至っている。
なおかつてはレクサスもGAZOO Racingを名乗っていたが、2020年以降はブランド戦略の観点から消滅している。
「くまきち」「モリゾウくん」などマスコットキャラクターが妙に充実している。
生みの親の豊田会長の影響もあってか他メーカーにも比較的寛容で、所属ドライバーの他メーカーマシンでの参戦や、TGRF(TOYOTA GAZOO Racing Festival)の他社の同時参加も珍しくない。
GAZOO Racingの姉妹チームとして発足したレーシングチームで、豊田章男のプライベートチームでもある。2017年にスーパーGTに参戦しているグッドスマイルレーシング(初音ミク)のドライバーとしても知られる片岡龍也が立ち上げた「T'S CONCEPT」を源流に持つ。
チームマスコットはモータースポーツを始めたばかりのレーサー犬(雌)の「ルーキーちゃん」で、チームカラーは攻撃的なGRとは対照的に「白地に青・黄・灰色」のマーブルカラーやタータンチェックというメルヘンチックなものになっている。
GAZOO Racingの活動理念は「世界的なレース活動を通して市販車開発にフィードバックする『車を鍛える』事」であるが、トヨタのワークス活動の基幹事業に発展していく過程で「市販車開発ドライバーとレーシングドライバーのより深い交流」が難しくなったことから立ち上げられた経緯がある。こうした理由から国内レースに重きを置いて活動しているのがGAZOO Racingとの相違点。
2017年のスーパー耐久シリーズにトヨタ・86で参戦して以来、レーシングドライバーや市販車開発ドライバー、果ては現役のラリードライバーなど様々なジャンルのドライバーがエントリーしている。
スーパー耐久では2020年には発売前から話題を攫ったGRヤリス、ホモロゲーション取得前のグループGT4仕様のスープラを投入。2021年にはカーボンニュートラルの一つの回答として「純水素燃料エンジンに換装したカローラスポーツ」と参戦させた。またラリーにGRヤリスの8速ATの試作版を持ち込み、それをトヨタの副会長にドライブさせるなど、本家に負けず劣らずの市販車にリンクさせたモータースポーツ活動を行っている。
一方でスーパーフォーミュラ、SUPERGTなど国内最高峰の選手権にも、トヨタ陣営を離れたチームルマンの穴を埋める形で2020年から参戦を果たしている。
2017年からGRカンパニーは、TOYOTA GAZOO Racingの活動のフィードバックを盛り込んだ「GR」というスポーツカーブランドを展開している。元々GAZOO Racingが展開していた「G's」を廃し、チューニングの度合いでGRMN/GR/GR SPORTというピラミッド構造に分けられていた。頂点のGRMNは限定生産故にロータスがチューニングしたスーチャー付きエンジンを搭載するヴィッツ、というトチ狂ったマシンも発売される。GRとGR SPORTは足回りや剛性の強化程度だが、GRはサーキットでの使用も想定したチューニングとなっている。
しかしGRスープラとGRヤリスの登場により、2020年以降はピラミッド構造が変化。これら2車のようにGRが設計と開発の中心となったGRブランド専用車が頂点、GRMNからスピンオフした技術を投入した量産スポーツのGR、GRよりライトなチューニングを手掛けたGR SPORTがその下で、この2つの中から限定生産されたコンプリートカーがGRMNとなる方向である。
発表当初はトヨタ車をカスタムするだけのただのチューニングカーブランドであったため、「今までどおりの『TRD』で良かったのでは?」という声もあったが、両ブランドの最大の違いは、TRDはあくまで子会社のブランドであり、GRはトヨタ自動車としてのプロジェクトという点にある。
多くのトヨタのレーシングカー・エンジンや公式チューニングパーツをTRDが開発しているのは事実だが、TRD以外が手がける場合(欧州のTMGや東富士の凄腕技能養成部など)も多々あるため、統一したブランドがあったほうが良いのも事実であった。
その後「GR PARTS」「GR Heritage Parts」「GR Garage」「GR-FOUR」「GR FACTORY」といったGRブランドを掲げる公式アフターパーツ・公式ショップ・機構・生産方式もそれぞれ登場しており、前述のGRブランド車も発売された今、すっかりGRの方が通りが良くなってきている感じがある。
なお、「G's」は「G SPORTS」の略。
主な車種
GRMN
限定生産車。究極のスポーツモデルを志向して開発されている。エンジンに至るまでチューンされた最上位モデルにして、実はGRシリーズ最古参。「MN」は「Meister of Nürburgring」の略で、2010年にドイツ・ニュルブルクリンクでのテスト走行中に事故で他界したGAZOO Racing監督兼マスタードライバーの成瀬弘にちなんでいる。
- ヴィッツ:130系ターボ仕様の「ヴィッツGRMNターボ」と1.8Lスーパーチャージャー仕様の「ヴィッツGRMN」の2形式が存在。いずれも欧州仕様の3ドア車がベースで、スーパーチャージャー仕様はフランス製
- 86(初代):前期型ベース。スバル製のため、トヨタに完成車の状態で持ち込んで解体して作り直すという工程になっていた
- iQ:NA仕様の「iQ GRMN」とスーパーチャージャー仕様の「iQ GRMN スーパーチャージャー」が存在
- マークX:2代目がベース。エンジン自体はベース車から変えられていないものの、排気量3.5L車ながらMTのみの設定、ベース車を変えて2度生産されたことがある。
- センチュリー:3代目がベース。パールホワイトとブラックの2台のみ存在、市販化予定なしでスペックも殆どが非公開
- GRMNヤリス:GRヤリスがベース。
GR SPORT "GR"
量販仕様のチューニングモデル。実は一般車両と同じ製造ラインで製造されており、コストが抑えられている。運輸局には持ち込み登録となるため、納車に少々時間がかかる。エンジン自体はベース車と変わらないが、補強材がGR SPORTより増やされているなどサーキットでの走行も考慮されたチューニングになっていた。GRの階層構造が変わったことから設定が無くなった。
- 86(初代)
- ヴィッツ(130系後期型、NAのみ)
GR SPORT/G's
量販仕様のライトチューニングモデル。製造はGR SPORT "GR"同様、一般車両と同じライン。G'sは改造車扱いだったので持ち込み登録になっていたが、GR SPORTでは一部車種で型式認定が取ってあったので、納車までの手間がかからないようになっていた。GRのエントリーモデルという位置付けで、GR SPORT "GR"よりも低価格に設定され、サーキット走行などを前提とした補強は省かれている。
- 86(初代)
- ヴィッツ(3代目の130系。中期までG's、後期からGR SPORT。これに伴い後期からRSの設定が無くなった)
- アクア
- マークX(2代目)
- プリウスPHV(2代目)
- ハリアー(3代目)
- ノア(2代目と3代目。3代目後期からGR SPORT)
- ヴォクシー(ノアと同じ世代に設定)
- C-HR(初代の後期型から。標準車にもMT車グレードを新設)
- プリウスα
- アルファード(G'sを2代目後期型に設定。3代目以降にはGRは設定がない)
- ヴェルファイア(G'sを初代の後期型に設定。2代目以降にはGRは設定がない)
- プリウス(G'sを3代目の後期型に設定。4代目以降にはGRの設定がない)
- コペン(唯一ダイハツブランドでの取り扱いがある)
- ハイラックス(2021年改良型から)
- ランドクルーザー(300系)
- ヤリスクロス(2022年改良型から)
※2023年時点
- ル・マン24時間総合優勝(2018・2019・2020・2021・2022年)
- ダカール・ラリー総合優勝(2019・2022・2023年)
- WECドライバーズチャンピオン(2014・2022・2023年)
- WECマニュファクチャラーズチャンピオン(2014年・2022・2023)
- WECクラスチャンピオン(2018~2021年)※
- WRCドライバーズチャンピオン(2019・2020・2021・2022年)
- WRCマニュファクチャラーズチャンピオン(2018年・2021・2022・2023年)
- W2RCドライバーズチャンピオン(2022・2023年)
- W2RCマニュファクチャラーズチャンピオン(2022・2023年)
- NASCARカップドライバーズチャンピオン(2015・2017・2019年)
- NASCARカップマニュファクチャラーズチャンピオン(2016・2017・2019年)
※LMP1世界選手権、ハイパーカー世界選手権