概要
2018年3月のアメリカ・ニューヨーク国際オートショーにおいて『カローラハッチバック(仮称、後のカローラスポーツ北米名)』としてGRスープラ スーパースポーツコンセプトとともに発表され、同年6月以降順次日本、アメリカ、オセアニア、台湾、ヨーロッパ(欧州)にて販売されている。
本車種同様カローラの派生車種であったオーリスの事実上の後継車種とも言える存在であり、実際台湾では3代目オーリスとして販売されている。
GA-Cプラットフォームのトヨタブランド車としては、プリウス、C-HRに続き第3弾となる。
10代目と11代目のカローラが、地域によって設計・パーツを大きく変えるという戦略をとっていた(特に11代目の日本向けは、それ以外の地域向けとはプラットフォームからして違っていた)のだが、12代目ではその方針を改め、再び統一した世界戦略車と位置付ける事になった。
その先兵として開発されたと言えるのがこのカローラスポーツである。
2019年にはカローラのセダンとステーションワゴン(カローラツーリング)が発売されたが、いずれも日本国内向けに専用設計されたナロー版であり、欧州のそれより一回り小さい。なのでカローラスポーツは、国内の新型カローラ三兄弟で唯一グローバル仕様といえる存在である(ただしカローラツーリングについてはニュージーランドでも日本向けを販売している。理由は該当項目を参照)。
パワートレインは国内では1.8Lのハイブリッド、1.2LターボのCVT/MTが用意された。1.2Lは先代オーリスからキャリーオーバーした8NR-FTSだが、出力をそのままに指定燃料がハイオクからレギュラーへと変更されている。1.8Lハイブリッドは4代目プリウスやC-HRと全く同じものである。「スポーツ」という名前に似合わずハイブリッドは122馬力、ターボは116馬力と車格に対してややアンダーパワー気味で、発売時は車格が下のスイフトスポーツと比較して叩く声すらあったが、2022年のマイナーチェンジで170馬力の2.0Lダイナミックフォースエンジンがようやく設定された。
なお欧州では2.0Lダイナミックフォースエンジン版のハイブリッド仕様(199馬力)も存在する。
クラウンの15代目モデルとほぼ同時に発売されたが、先進技術の投入はクラウンが先・カローラが後とされていた従来のやり方を覆し、クラウンと全く同じコネクテッド機能が採用されている。発売当初は市販のカーナビやオーディオの搭載も可能だった(ディーラーオプションナビも選べた)が、セダンとツーリングの発売に伴う仕様変更でディスプレイオーディオとなり、市販ナビは搭載できなくなっている。
加えて昨今の新車では稀少になりつつある国内でのMT仕様、このクラスの国産車では珍しい可変ダンパー(5段階調節)、さらには従来はレクサス車にしか装備されてなかった内輪へのブレーキによるベクタリング制御、トヨタ/レクサスでも初となる目線の動きを計算に入れたチューニング(2019年MC以降)など、「ニュルで鍛えた」を標榜する15代目クラウンを差し置いて採用している機構・技術がこれだけあることからも、"走り"への入れ込みようが窺える。
2020年初頭にはGAZOO Racingチューンの『GR SPORT』が欧州限定で発売されている。また同年3月には『GRカローラ』が商標登録された。
そして2022年4月1日、北米トヨタによって『GRカローラ』が正式発表された。(※エイプリルフールの嘘ではありません)
モータースポーツ
2018年から(FR化させた物が)アメリカのフォーミュラ・ドリフト、2019年からはイギリスツーリングカー選手権(BTCC)にもワークス参戦している。
しかし同車のレース活動で歴史的快挙ともいえる最大のトピックスは、世界初の「純水素燃料エンジン搭載レーシングカー」のベース車両に選ばれていることである。「水素エンジン」は燃料電池とは異なり、ガソリンの代わりに水素を爆発させるエンジンのことである。
2021年5月開催のスーパー耐久第3戦富士24時間にてTOYOTA_GAZOO_Racingの姉妹チーム「ROOKIE Racing」から、『ORC ROOKIE COROLLA H2 Concept』という登録名で参戦。
エンジンはGRヤリスに搭載された3気筒ターボの「G16E-GTE」に水素専用の燃料系統を組み込んだ物を使用しており、パワートレインもGRヤリスの4WDシステム、FCスタック(水素タンク)は燃料電池車MIRAIに採用された物の小加工して搭載される。
いずれのシステムも既存システムの転用で構成されており、既存の技術で内燃機関車を動かしながら、同年にトヨタが大々的に提唱した『カーボンニュートラルに対する電気自動車(BEV/PHEV)とは異なる可能性の1つ』の具体例として開発が進められた。
「水素燃料を用いた内燃機関車」はこれまでに何度か世に生まれ出たことはあるものの実証実験の域を出ておらず、ましてや自動車レース(特に厳しい環境に晒される耐久レース)に参戦可能なレベルでの開発は世界初であり、本戦では電気系統のトラブルはあったものの無事完走。なおステアリングを握ったドライバーの中には、"モリゾウ"でお馴染み豊田章男社長の姿もあった。
その後の第4戦・オートポリス以降も改良を重ねながら性能向上が図られ、最終戦・岡山においてはエンジン出力300馬力・トルク390Nmを発生。富士24時では4分半ほど掛かっていた水素充填も水素ポート増設・昇圧スピードを向上させることで2分切りを達成。(肝心の燃費についても「普通に走らせればガソリン仕様よりもいい数字が出る」ところまで改良が進んでいる。)
車体の軽量化なども手伝って「車格が下のロードスターやフィットにすら周回遅れにされた」初参戦から、「86に喰らいついて行ける」レベルにまで向上している。
この活動はNHKはじめとする大手マスメディアでもSDGsに関する取り組みとしてたびたび取り上げられており、一般人でも知っている人は少なくない。
誰が予想出来た? トヨタ「水素カローラ」日本の強みで大幅進化! その先にある水素の挑戦はどうなる?
参戦2年目となる2022年シーズンでは出力面での目標は達成したとして、初参戦時からの課題である燃料満タンからの航続距離拡大(=ピット回数の削減)や液体水素を使用する新技術への挑戦など、「燃費面の改善」が期待されている。
フィクション・創作での扱い
PixivやTwitterの創作イラスト・CGでは、1999年WRCでインプ・ランエボを相手にマニュファクチャラーズ部門王者となった"カローラWRC"を、カローラスポーツをベースにしてリメイクしているものがしばし見られる。これはトヨタが本車発売の一年前からWRCにワークス復帰していることも無関係ではない。
ただし現在のWRCは下位クラスも含めて小回りのきくBセグメント車が独占しているため、"カローラスポーツWRC"は今のところ実現していない。2022年からWRCで施行された"ラリー1"規定では、鋼管フレームを用いたスケーリングによりCセグメント車もベース車両として採用できるものの、トヨタはBセグメント車(を元にしたリアルガチスポーツカー)のGRヤリスをラリー1規定に合わせる格好で参戦しており、さらにGRカローラの登場もあって、"カローラスポーツWRC"としての復活はやはり難しそうだ。
関連動画
水素燃料カローラ 富士24時間レース参戦ダイジェスト
水素燃料カローラ 参戦初年度ダイジェスト
関連タグ
菅田将暉:販売開始当初のイメージキャラクター。
小林可夢偉:水素エンジン車としてのレース参戦は、この人が社長に「これ(水素エンジン)でレース出れませんか?」と言ったのがきっかけだそうな。
GRカローラ:本車のハイパフォーマンスモデル。スーパー耐久に参戦する水素燃料カローラ改良と並行して同車開発のフィードバックを受けた他、2022年シーズン第2戦からバンパー類が変更された。