概要
1970年代に月刊別冊少年マガジンで連載された日本版スパイダーマン。
作者は池上遼一。
東映版スパイダーマンと同じく舞台が日本であり、主人公が日本人という設定である。
本家のピーター・パーカーに近い経緯でスパイダーマンになるのだが、ベン・パーカーに相当するキャラクターが居ないので、心の支えになるポリシーが無い。
初期はリザード、エレクトロ、ミステリオなどアメコミでのヴィランが出てきていたが、漫画構成に平井和正が参加してオリジナル要素が増え、スパイダーマンの登場も少なくなっていく(登場しない話もある)。
本作では、守るべき民衆の醜さが強調されており、中にはヴィラン以上にタチが悪い一般人も登場している。それと同時にストーリーもハードで重苦しい内容となっており、作中でスパイダーマンが社会の不条理に苦しめられる場面も多かった。
「輸血されて超能力に目覚める」「潜在意識の超能力が人々を襲う」等のアイデアは、後に平井和正の小説「ウルフガイ」にも転用されている。
主な登場人物
主人公。本作におけるスパイダーマンでピーターと同じく高校生。
詳細はリンク先参照
- 白石ルミ子
ユウのペンフレンドで、行方不明の兄を探して北海道から上京してきた。怪人エレクトロの正体が彼女の兄だった為、兄を殺したスパイダーマンを良く思っていない。ユウは彼女に尽くそうとするが、のちに事故死。バッドエンドに至るグウェン・ステイシー的なキャラかもしれない。
- 荒木
ユウの親友で、父親は製薬会社の社長(つまりハリー・オズボーン的なキャラだけど、悪堕ちしたりする前にフェードアウト)。
- 編集長
怪人エレクトロが街で暴れている時、情報新聞社は怪人退治に1000万円の賞金をかける。これは「三流ゴシップ誌が注目を集めたいだけだ」と世間から冷笑されていたが、スパイダーマンが呆気なく賞金を持って行ったので、逆恨みしてスパイダーマンのネガティブキャンペーンを始める。
余談
本作は、1969年、『週刊少年マガジン』の当時の編集長である内田勝が『月刊別冊少年マガジン』の編集長を兼ねる事になった時、雑誌の独自性を出すためにとアメコミに目を付けたのがきっかけ。
内田は小野耕世に相談し、スパイダーマンを推薦され、その際に「単なる翻訳ではなく、舞台や人物を日本に移す」という基本路線が提案された。
その後、内田が池上遼一を小野に引き合わせ、作画担当に。
また、小野はオリジナルのアメコミ版を翻訳する一方、自分の解釈を文章としてまとめた。更にはスタン・リーに手紙を書き、資料を求めてもいる。
しかし、作品そのものの方向性と作風は、池上と編集部に任せていた。
こうして実現した本作だが、いわゆる鬱展開や後味の悪い結果に終わる事が多く、暗く重々しい作風となった。後に平井和正が参加してからは、よりその傾向が顕著となる。
後にスタン・リーは「このマンガは、我々のスパイダーマンとは違う。どう評価していいかわからない」と感想を述べている。
関連タグ
スパイダーマンJ、スパイダーマン/偽りの赤…同じく日本のスパイダーマンの漫画。後者は池上遼一版と同じくユウという名前の高校生が主人公である。