概要
池上遼一版スパイダーマンで登場した主人公。
日本に住む普通の高校生であったが、本家のピーター・パーカーと同じく蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになった。
彼もまたヒーローとして自警活動を始めるのだが、スパイダーマンになってしまったことで社会の不条理を身を以って知らされる事になる。
両親は幼いころに行方不明となり、現在はおばさんと暮らしているが、ベン・パーカーのポジションにあたる親戚も助けとなる仲間もいない。
また、グウェン・ステイシーやメリー・ジェーン・ワトソンのポジションのあたるガールフレンドが何人か登場していたものの、いずれも最終的に悲惨な結末を迎えている。
前述の家庭環境故に、本家のピーターや東映版の山城拓也のような確固たる信念を持てぬままヒーローとしての過酷な人生に直面してしまい…
「世間から称賛されるヒーローなんてもうまっぴらだ!」
「善人ヒーローなんて、くそくらえだ~~~~っ!」
作中では犯罪を止めようとしても犯罪者扱いされる上にヒーローとして認められても理不尽な無理難題を要求される等の身勝手な民衆のエゴに苦しめられ、酷い時にはヴィラン以上に悪質な一般人が現れる事も少なくなく、かろうじて人助けに成功しても後味の悪い結末も迎える時もあった。
やがてヒーローとしての報われない活動の中、恋人や友人を失い、日常を奪われ、終盤ではついに、理不尽に対する怒りを爆発させてしまう…
能力
スパイダーマンとなったきっかけは、本作も「(放射能を浴びた)蜘蛛に噛まれたため」であるが、正確には「通っている高校の放射能実験装置を操作していたところ、その放射能を偶然浴びた蜘蛛に噛まれた」ため。
ユウもまた、本家スパイダーマンことピーター・パーカー同様に、『勉強の虫』と揶揄される科学オタクだった。そんな彼は、受験や試験に備え、学校の理科室に夜遅くまで居残っては実験の真似事をしていた。放射能実験装置は高校に備え付けられていたもので、それを使って実験をしていた際に、前述の理由で能力を得てしまった。
人間離れした体力と壁に蜘蛛のように貼りつく能力を得て、ユウはコスチュームとウェブシューターとを自作。スパイダーマンとなった。
つまり、『パワーの源』、『コスチューム・装備の製作と入手』は、オリジナルとほぼ同じなのである。
その能力自体は、数あるスパイダーマンの中でも高い方とは言えない。
有しているのは、スパイダーマンの基本的な能力(怪力、敏捷性、クモのように壁に張りつき歩き回る、スパイダーセンス)。後に、上記「見えない虎」を操るが、これを別としたらスパイダーマンの中では平均値。
しかし、その劇中では世界最強とも言える存在である。
敗北したのは劇中二回のみで、負傷さえしていない。ほぼダメージを負う事なく、ほとんどの戦いに勝利している。エレクトロの電撃や、カンガルー男のキックも受け止め、拳銃で撃たれても傷一つ負わなかった。
人物
ごく普通の高校生の少年。
勉強が得意で、周囲の悪ガキや不良などからは「ガリ勉野郎」と揶揄され、軽く見られ、時にはいじめられている。
普通に正義感は有しているが、同様に欲望も有している、本当にどこにでもいる市井の市民。上記の理由でスパイダーマンになった後、ヒーローとして活動し始めるが、それとともに世間の荒波に、そして不条理に晒され、次第にその前に押しつぶされていく。
ユウ本人もまたピーター同様に、世間の一般市民と同様の弱さと心の闇を備えている。
ガールフレンドの、ルミ子の水着姿を毎晩妄想し、
「どうしておれは まい晩こんな妄想ばかり……おれは……おれはだめな人間なのか……」
「いや……そうじゃない……おれは……おれはだめな人間なんかじゃない……!」
(スパイダーマンのマスクを付けて外に飛び出し)
「おれはスパイダーマンなのだ!」
※しかし、この後で自分の行為にむなしさを感じ、さらに落ち込んでしまう。
※東京タワーの頂上に立ち、
「はははは! 俺は超人なんだ! 見ろ! 俺を見ろ! 俺は世界一強い男なのだ!」
「この偉大な俺にいったい誰が歯向かうことができる? もしその気なら俺は全世界をも征服することができるのだ!」
「はははは! でも俺はそんなことは望まない! 俺はいつでも弱い人間達の味方だ!」
「みすぼらしいちっぽけな人間どもよ、この偉大なスパイダーマンに救いを求めるがいい!」
「君たちの不幸や苦しみなどすぐに解消してあげる! つまり君たちを守ってやれるのはこの俺以外いないんだ」
「はははは! スパイダーマンに不可能な事は何一つないのだ!何一つ!」
「はぁ はぁ はぁ はぁ ……」
「……なにが……なにがスパイダーマンだ! 俺は……!」
しかし、彼はどんな状況になっても、決して私利私欲のためにその力は用いていない。
また同時に、無辜の人々にその力を振るったり、見捨てたりもしていない。
世間にはびこる、無責任で不条理で身勝手な一般市民たちに傷つけられ、押し潰され、怒りを覚えてはいるが、不幸な境遇の人々に同情し、悩み、苦しみながら、彼や彼女を見捨てる事無く助けようと試みるユウもまた、スパイダーマンにふさわしい人物なのだ。
余談
直接描かれていないが、のちの『スパイダーバース』でユウも他のスパイダーマンと共に戦った事が明かされた。
戦死確認がされておらず、密かに生還した模様。
関連タグ
???…終盤におけるネタバレ。
スパイダーマッ…東映版スパイダーマンの通称。
山城拓也…上記の東映版スパイダーマンの主人公でスパイダーマンとなった日本人繋がり。
ピーター・B・パーカー…世間の荒波に揉まれて心が折れたスパイダーマン繋がり。
スパイダーマン/偽りの赤…日本のスパイダーマンの漫画繋がり。こちらも「ユウ」という名前の高校生が主人公である。ただし、人物像が正反対。
ザ・ボーイズ…ある意味池上遼一版スパイダーマンとは真逆な世界観と言えるヒーロー物。