目的
病的要因による下痢を改善する止瀉薬(ししゃやく)の対極に位置する薬剤であり、薬剤の含有成分によって腸運動に働きかけ、意図的に下痢に近い症状を起こすことで硬化、肥大した腸内の滞留便を容易に排泄し、便秘の改善を目的として用いられる。
一般的には、便秘の根本的治癒をするものという誤認識が多いが、あくまでも便秘の習慣化、慢性化を改善するためのものであり、厳密には便秘の改善に用いる薬剤を便秘薬、虫下しなどに用いる薬剤を下剤として分類される。
これに対して、漫画およびライトノベル作品などに登場する下剤は前述のような医療目的ではなく、単純に「下痢を引き起こすための薬」として用いられる場合が多いが、それは誤った調合、用法、用量による結果であり、本来の使用目的を逸脱するものである。
ただし、下剤はその効能が持つ特異性からネタとして扱われる事例が数多く存在する。
ネタとしての下剤
前述の通り、漫画作品などでの下剤の存在理由は「意図的に下痢を引き起こす」という一点に集約されており、その目的にのみ用いられる。また、その効能は総じて強力且つ即効性であり、毒物に近い劇薬として扱われる。
便秘を改善するという点では、同じ医療目的で用いられる浣腸があるが、これは注腸に用いる薬液や器材が総じて携帯性が低く、ディスポーザブルタイプの代表格であるイチジク浣腸についても、薬液を注入する特定人物との距離を密着状態にまでしなければならず、行為を行う者が必ずその場にいなければならないという欠点がある。
しかし、下剤の場合は浣腸で列挙した携帯性や執行に要する距離などの欠点を考えなくてもよいという利点が発生する。また、一般誌上では浣腸による排泄に結び付ける経緯の描写が困難である一方、下剤は経口という特性上から排泄に結び付ける経緯を容易に構築可能であり、少年誌の場合でも読者が理解しやすいという点が挙げられる。
用法
薬剤として服用するよりも特定人物の飲食物に混入する場合が多く、その秘密性の高さから一服盛った人物の特定が極めて困難であり、これらの事から仕返しや妨害工作の一環として主に用いられるが、病的症状を偽装する、または何らかの理由で腸内の糞便を体外へ排出するために下剤であると承知の上で自ら服用する場合もある。
代表例
相手に服用させた事例
主要人物の原子力(はらこつとむ)が主人公である江戸城本丸(えどじょうほんまる)との対決に際して、妨害工作の一環として給食などに下剤を混入する。
・銀魂
主要人物の桂小太郎(かつらこたろう)が差し出す大抵の飲食物に下剤が混入されている。
自ら服用した事例
主人公の矢吹丈(やぶきじょう)が東洋チャンピオンの金龍飛との対戦に臨んだ際、試合前計量でバンタム級規定を超過していた体重を落とすために下剤を服用する。
・シグルイ
主人公の藤木源之助(ふじきげんのすけ)と主要人物の牛股権左衛門(うしまたごんざえもん)が真剣による二人演舞『二輪』(ふたわ)に臨む際、作法の一環として下剤入りの葛湯を飲む。