CV:篠原恵美
概要
TVスペシャルシリーズ作品『ワルサーP38(ルパン三世)』に登場する本作のヒロイン。
容姿は、緑色のロングヘアを背中辺りで一纏めにしており、瞳の色はスカイブルー。全体的に引き締まった体つきだが女性らしい丸みもある。暗殺任務中は黒いボディスーツでその身を包んでいるが、任務外では黒のアンダーウェアとズボンを着用している。胸元には、オルゴールにもなるペンダントを身につけており、亡き弟から贈られた形見ゆえにとても大切にしている。
暗殺組織タランチュラの暗殺者であり、可憐な容姿とは裏腹に非常に高い身体能力および暗殺術を有するがゆえに年少ながら実行部隊の幹部に名を連ねている。
幼い頃に父親によってタランチュラに売り飛ばされて望まぬ暗殺者としての身分を強いられることになり、同時に組織特有の「毒ガスを吸い続けなければ死亡してしまう身体」に改造されてしまったという悲しい過去を持つ。好きで人殺しをしているわけではなく、島から脱出して自由に生きることを夢見ている。
ルパンに対しては、当初は軽薄な男として全く信頼していなかったものの、島を脱出するために行動を共にしていくうちに信頼関係が生まれていった。しかし、本当の自由を手にするまであと一歩というところで凶弾に斃れてしまうという、悲しき最期を迎えることとなった。
性格
構成員の大半が残虐非道な殺人犯で占められている暗殺組織の中で育った影響か、あるいは父親に捨てられた影響か、強い人間不信に陥っている。そのため、誰に対してもそっけない態度を取ることが多い(ルパンなどは顕著な例)が、ドクターを始めとした親しい仲間には一定の信頼や思い入れはある模様。ただし、ルパンと共闘するうちに打ち解けあってからは、信頼した上での相談や弱音、時には少女らしい笑顔を見せるようになっていく。
また、暗殺術は心得ているようだが、実際は殺していない模様。殆どは強打によって気絶させる程度で済まされており、暗殺組織でありながら「殺しはしない」彼女の戦闘スタイルはジャックから反感を買っている。脱出の動機をルパンに訊ねられた際の「好きこのんで人を殺しているわけじゃない」という彼女の言葉からも、望まず強制された暗殺者という運命から逃れたい一心なのが垣間見える。
家族
幼い頃は父親と弟と三人で暮らしていたものの、雨をしのぐ家もない極貧生活で、飲んだくれの父親によって弟と共に暗殺組織タランチュラに売り飛ばされてしまった。
(なお、住む家もないような酔っぱらいがどうやって世界最高峰の秘密組織と接触したのかは謎である)
そのため、タランチュラへ入って以降、この世で唯一信じられるのは実の弟のアレックスのみであったが、そのアレックスさえも、島からの脱出を目指してのオーバーワークが祟って亡くなり(ただし裏の事情は異なる)、天涯孤独の身となってしまう。
能力
彼女の最大の武器は、その身体能力そのものである。高い反射神経で敵の銃弾を避けつつ、島の荒くれ男たちや軍人さえも圧倒する素早い身のこなしで動き回って相手を翻弄し、鋭い拳や蹴りなどの攻撃で相手を沈黙させる。
また、戦闘機ハリアーの操縦技能も習得している。
経歴(ネタバレ注意)
初登場は、某国副大統領誕生祭のパーティー会場での襲撃時。その身体能力をもって、標的の護衛を圧倒して気絶させている。この時、現場に居合わせたルパンとわずかに視線が合うだけの邂逅を果たしているが、ルパンはマスク越しでも感じられた彼女の美貌をはっきりと記憶していた。
その後、タランチュラの本拠地に侵入してきたルパンを排除しようと攻撃をしかけたものの、半ばおちょくられる形で取り逃がしてしまう。
成り行きでルパンがタランチュラの仲間入りをして以降は、ボスであるゴルドーの命令で彼の案内役を務めることとなる。途中、ルパンとの殺し合いを望む幹部のジャックらとトラブルになるが、その隙を利用して踵落としでルパンを一撃のもとに気絶させるという大胆な行動に出た。
トラブルを利用する形でルパンを病室に運び入れた彼女は、医療担当のドクター(ルパン三世)に引き合わせ、彼女らで密かに進めている「島からの脱出計画」を明かしてルパンの協力を求めた。
後日、ゴルドーから下された暗殺任務においてルパンとチームを組むように命令され、この任務を利用して脱出計画を決行することが決まった。決行前夜、エレンは、命を預けるパートナーとなるルパンに己の過去を明かし、ルパンの真意を問うた。
「本心を言え!! そうしたら私も、少しは信じる!!」
脱出計画決行の朝、表向きは暗殺任務の移動中に「もしも私が捕まったら、私を殺してほしい」とルパンに対して一方的な約束を押しつけた。その後、戦闘機ハリアーが格納されている場所まで行き、ドクター(ルパン三世)から手渡された解毒剤を接種する。子供の時以来の「普通の空気」を味わいつつ、ただ景色を眺めるだけの穏やかな時間を二人で過ごした。
その後、脱出計画の最大の障害であるレーザー衛星を自爆させるために管理施設へと侵入し、ルパンと二手に分かれている間に警備員と戦闘になる。戦意を損失した相手に情けをかけたが、これが仇となってスタンガンによる逆撃を受けて負傷してしまう。追いつめられた先で自死を試みるも、間一髪のところでルパンに助け出された。
だが、いざ衛星の自爆プログラムを実行したところで、プログラムの一部が何者かによって改竄されていることが判明し、脱出計画の決行時刻に1時間ものタイムラグを付けられる形で自爆シークエンスが開始されてしまう。そうとは知らない仲間たちがレーザーの餌食になる前に知らせようと島へと戻るも間に合わず、レーザー衛星の攻撃で脱出船は沈没し敵も味方も全員が死亡するという最悪の結果に終わってしまう。
プログラムの改竄を密かに行った黒幕が、味方であり信頼していたはずのドクターであったこと、さらには過労だと思われていた弟アレックスの死の真相がドクターの手による殺害だったことを知り、激昂して彼に襲いかかるも、返り討ちにされ気絶させられてしまう。
そのままドクターに飛行船に人質として連れ込まれるが、追撃してきたルパンがドクターが死闘を繰り広げている最中に目を覚ます。船内をさまよう中で、死闘の最中にルパンが落としていったワルサーを見つけ、彼が飛行船内にいることを知る。
貨物室で、あわやルパンが殺される直前に飛び出してドクターを撃つも、狙いが外れ逆に銃を弾かれてしまう。弾かれた銃を拾ったルパンとドクターが互いに撃ち合った瞬間、ルパンを庇う形で彼の前に飛び出した彼女が盾となり、胴体中央に銃弾の直撃を受ける。
追いつめられたドクターは往生際悪く解毒剤を取引材料として助命を要求するが、弟と仲間たちの運命を弄び続けた憎い仇を葬りたい一心のエレンがルパンのワルサーに手を添え、二人でワルサーの引き金を引いてドクターを射殺した。
治療のために島に戻ろうとするも、ルパンを庇って受けたドクターの銃弾が致命傷となり、求め続けた自由を手にするまであと一歩というところで息を引き取ってしまう。
彼女が最期にルパンに告げたのは、ほんのわずかであっても穏やかで自由な時間を共に過ごせたことへの感謝の言葉であった。
「あのアジトでガスボンベを外した時、一緒に景色を見たね・・・」
「あの時・・・ちょっとの間だったけど、自由になれた気がした・・・」
「ありがとう・・・ルパン・・・」
彼女の亡骸は、ルパンの手によって、弟アレックスの墓の隣に埋葬された。
ヒロインランキング
過去に販売されたルパン関連の書籍において、ルパンシリーズにおけるヒロインの人気ランキングが記載されており、その中で第1位を獲得したのは劇場作品『カリオストロの城』に登場するクラリス・ド・カリオストロ嬢であったのだが、その次、第2位に輝いたのが、なんとエレンであった。