ノーザンブリア自治州
のーざんぶりあじちしゅう
概要
ゼムリア大陸の北部に存在する自治州で、自治州議会は州都ハリアスクに存在する。南部にエレボニア帝国が国境を隔て、更に西部にはジュライ市国が存在する。かつては大公国であったが、ある事件で自治州へ移行している。
塩の杭
ノーザンブリアを語る上で外せないのが、この《塩の杭》である。
七耀暦1178年7月1日…午前5時45分、突如としてノーザンブリア大公国の公都ハリアスクの近郊にに全高数百アージュにも及ぶ巨大な《杭》が現れた。その杭は、出現した地域を中心に周囲の大地、更にはその大地に存在した植物や建物、そして人をも瞬く間に塩に変えてしまう。この際、公都全域も塩と化し、逃げ遅れた市民も報告した市況を含め大勢が犠牲となる。
被害の拡大は凄まじく、僅か二日で国土の大半が塩と化して三日後にはようやく『塩化』減少は落ち着き、被害の拡大に伴って《杭》そのものの質量も減少、全高僅か2.5アージュにまで縮小していた。ただし、直に触れれば塩と化す特性そのものは健在である。
ハリアスク大聖堂より緊急の報告を受けた七耀教会は星杯騎士団の守護騎士第八位吼天獅子を派遣する。しかし、この未曾有の事態に対して塩化現象も相まって星杯騎士団もうかつに近づくことが出来ず、聖具グレイプニルを用いてようやく非接触で回収に成功する。
塩の杭の被害
被害は甚大であり、5つの行政区の内、公都も含めた3つの行政区が壊滅してしまう。外国の旅行者を含め、全国民の3分の1が塩の結晶と化して死亡する大災害となった。
七耀教会はすぐさま聖堂の再建と財産を失った市民への救済を開始、同時に身寄りを喪った子供たちを福音施設で保護することとなる。
《北の猟兵》の誕生
しかし、問題はここからである。《杭》の影響で大地の大半が塩となってしまったノーザンブリアでは農作物を育てる事など出来ず、残り3分の2の国民達の口を賄うことは不可能であった。当然、貿易も殆ど不可能となってしまう。
この事態を打開するべく、国内に残ったノーザンブリアの正規軍は自治州となったノーザンブリアの経済力では市民の多くが餓死するのを避けられないのを熟知していた。その打開案として、自警団となっていた正規軍は外貨によって経済を支えることを決定する。
これが七耀暦1204年まで各地で非道な行いにも手を染めながらも、自治州の人々を餓死させないために奮戦する高位猟兵団《北の猟兵》である。彼らが外国で仕事を請け負って送られる報酬は食料品などの生産による収益が乏しいノーザンブリアで貴重な収益源であり、正に彼らは祖国のために命を懸ける英雄であった。
そんな《北の猟兵》を統率する人物の一人がノーザンブリア正規軍のバレスタイン大佐である。彼は《塩の杭》の異変で一人の少女を保護し、養女としていた。彼女はそんな父の背中に憧れて猟兵団として活動する。しかし、ある代理戦争でバレスタイン大佐は娘の部隊の救援に向かい、娘を守って戦死する。
父を喪った彼女は失意の内に自治州へ帰還、故郷の人々はバレスタイン大佐を死なせた彼女を責めず、寧ろ餓死者を出さない結果に安堵していた。彼女はこの惨状を通して、自分の生き方を見つめ直し、『少しでも血に濡れていないミラ』を故郷に送るために遊撃士へ転向する。
この少女こそ、帝国の遊撃士協会で弱冠23歳という歴代最年少でA級遊撃士に昇格する『紫電』サラ・バレスタインである。彼女は七耀歴1207年に同じ年齢でA級遊撃士となる《剣の乙女》が現れるまでは唯一の最年少記録保持者となる。
しかし、《北の猟兵》の活動を持ってしてもノーザンブリアの経済は破綻寸前の状態であり、市民の多くが貧困に喘ぎ苦しんでおり、隣国のエレボニア帝国に出稼ぎに向かうまたはクロスベル自治州などに移住する市民が多い。
また、この《塩の杭》の異変によって隣国であったジュライも経済が悪化し、結果としてエレボニア帝国に併合される一因となる。同時に最後の市長の孫が復讐者の道を歩む未来にも繋がる。
愚かな大公の暴挙
しかし、バレスタイン大佐の死後に自治州にある襲撃者が現れる。
かつての異変で、真っ先に国外へ逃亡したバルムント大公が二十年あまり経過しても尚、大公国の再興にしがみついて当時共に脱出した近衛兵団と共に州都を襲撃した。
一時は議会の選挙にも成功するが、《北の猟兵》が反撃に出て瞬く間に包囲される。その時、バルムント大公はあろうことか『見せしめに市民達の虐殺を命じたのである』。
しかし、二十年前の真っ先に逃亡した利己的極まりない行動に加え、仮にも自国の国民を自分だけ逃げるために虐殺させようとするこの暴挙に遂に近衛兵らも大公家を見限る。
以後のバルムント大公の行方は不明だが、《北の猟兵》に捕縛されたのはほぼ明白。また、自分だけ真っ先に逃げだした上に二十年も経った後に戻ってきた挙げ句に国民を虐殺して逃げ帰ろうとした愚かな国家元首などを生かしておく理由などない。《北の猟兵》によって極秘裏に処刑されるという因果応報な最後を迎えた。
しかし、大公家の親戚筋の中には異変後もノーザンブリアに残った一族もおり、しかも極貧のノーザンブリアではある程度裕福な生活が送れるために、大公家の暴挙に怒りを抱く住民達からは親戚筋は『悪魔の一族』と迫害されている。
帝国への併合
しかし、帝国の内戦で貴族連合のアルバレア公爵の指示で行ったユミル襲撃とケルディックの焼き討ちが責任を追及され、帝国政府からノーザンブリアの自治州政府に賠償金が求められた。
ここで賠償金などを支払えばどうなるかなど、分かりきっていることである。ノーザンブリアの経済が破綻して多数の餓死者を出すのは明らかであった。
これに対し、《北の猟兵》は議会を選挙して賠償金の支払いを拒否する。これに対し、帝国政府は当時ジュノー海上要塞で籠城していた貴族連合軍の最後の砦で帝国で最強の将軍である《黄金の羅刹》オーレリア・ルグィン率いる領邦軍に対し、領邦軍の存続を条件にノーザンブリアの制圧を要請する。
これが後に言う『北方戦役』である。身喰らう蛇も人形兵器を放つ形で介入し、更に遊撃士協会も民間人の保護のためにサラ・バレスタインを派遣、同時に内戦終結の立役者である《灰色の騎士》にも協力を要請する。
《黄金の羅刹》と《灰色の騎士》の活躍によって、《北の猟兵》は制圧される。これによって、ノーザンブリアはエレボニア帝国ノーザンブリア州に改名される。また、この戦いで多くの市民を救ったリィン・シュバルツァーはクロスベルの併合の活躍もアイマリ、更にその勇名を轟かせる事となる。本人にとって、甚だ不本意極まりない鉄血宰相によって『作られた英雄』として。
ヨルムンガンド戦役の後
クロスベルの再独立をきっかけにノーザンブリアとジュライでも再独立の気運が高まった。しかし、ノーザンブリアは帝国に併合されたことで経済に余裕が生まれた事もあって賛否が分かれていたが、七耀暦1208年に独立することとなる。