概要
銭形平次とは、野村胡堂の小説『銭形平次 捕物控』の主人公の岡っ引き。探偵役をつとめる。寛永通宝を投げる銭投げを得意技とする。
1931年、文藝春秋発行の「文藝春秋オール讀物号」創刊号に銭形平次を主人公にした「金色の処女」が掲載された。これが『銭形平次捕物控』の第1作目となり、以降第二次世界大戦を挟んで1957年までの26年間、長編・短編あわせて383編が発表された。
テレビドラマや映画にもなっており、その際タイトルも『銭形平次』となることが多い。
ちなみに投げた銭は自分や仲間たちが拾って回収している(公式設定)。
ドラマ版に関してはこちらを参照
「健全さ」を目指した時代劇
それまでの時代劇と言えば、男性の支持者を増やすために無作為に濡れ場を用意したり、ヒロインが裸に剥かれたりと、いわゆる官能小説にも負けないくらいエロ要素をふんだんに盛り込んだ作品であった。
同時に殺陣シーンも凄惨でリアリティーを追求した血生臭い描写に傾倒し、任侠ドラマさながらに過激な刃傷沙汰が展開された。
そういう点を踏まえて、時代劇は大人ためのエンターテイメント作品となっていた。
しかし著者である野村胡堂は、まだ小学生だった息子にもっと時代劇に親しんでもらいたいと考えた矢先に「時代劇≒お色気と血飛沫」の図式にぶつかり、大いに悩むことになる。
その結論として、「主人公を妻帯者にする」「主人公を分かりやすい正義の味方として堅物な存在にしておく」「主人公は刀を持てない町人にする」「岡っ引きによる推理小説要素を混ぜ込んでチャンバラと濡れ場以外の見せ場を設ける」という制約を課し、苦心の末に銭形平次を生み出すに至った。
この努力により、時代劇小説は「艶やかな描写を挟む大人の読み物」から「青少年でも楽しめる娯楽作品」になり得ることを証明し、さらに時代劇とお色気の密接な関係を分断することで、より時代劇が扱えるジャンルそのものの幅を大きく広げることに繋がった。
主題歌
こちらへ→銭形平次(楽曲)