念仏の鉄
ねんぶつのてつ
概要
時代劇・必殺シリーズの『必殺仕置人』『新必殺仕置人』に登場する裏稼業者の一人。元は住職だったが檀家に不義を働いた罪で島送りとなり、放免となった後江戸の観音長屋にて接骨医を営みながら、酒と女に明け暮れる日々を送っていた(ちなみに接骨の技術は島送り先の佐渡島にて我流で覚えたものだが、腕は確かである様子)。
その後、ある事件をきっかけに、棺桶の錠、中村主水、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次と共に、法で裁けぬ悪人を闇に葬る「仕置人」となった。
性格は非情かつ自己中心的で、錠、主水、巳代松などの命を懸けて殺り合った仲間しか信用しないが、一度信用した仲間が危機に陥った時には自分の命を危険に晒してでも助けようとする(ただし、その仲間ですら裏切り行為を行った場合は容赦なく制裁を加える)。
一方で、金銭ではなくどれだけ恨みがこもっているかで判断する、外道仕事をしない、という自身に課した殺しのルールを決して曲げないという一面を持つ。
また、一介の同心以上の手回しができず仲間から詰め寄られがちな主水を庇うなど、迂闊に仕置できない悪人が標的の際には血気盛んな他のメンバーに対するブレーキ役としての言動を度々見せた。
他方、島送り先だった佐渡の金鉱で働いた5年間については「地獄」と断言しており、仕置相手を追って主水らと佐渡へ行く羽目になった際には「千両積まれたって行くもんか」とさえ言い放ち最後まで嫌がったほど。とはいえおかげで佐渡の事情には詳しく、行った先の金鉱では案内人としてこれ以上ない活躍を見せた。
『仕置人』最終回にて手配書が出回ってしまったことで江戸を去ることとなったが、『新仕置人』にて再登場する。
いつの間にか江戸に戻り、元締組織「寅の会」傘下に入っていたことが判明。巳代松・正八・おていを仲間として裏稼業を続けていたが、ある事件をきっかけに主水とも再会。彼を加えた五人組で再び「仕置人」として活動した。
この頃になると自己中心的な性格が多少鳴りを潜めた一方で、「仕置」すなわち殺人に快楽を見出している節があり、掟は守りつつもその快楽に溺れかけた姿を見せるようになる。
殺しの技は「骨外し」。服役中に我流で習得した骨接ぎの技術を生かし、関節技や貫手を仕掛けて骨を外す、折る、砕く等の技を用いる(とどめの際、その瞬間を示すレントゲン映像のカットが入る)。
直接相手を絶命させるのみならず、気絶させる、喋れなくする、動きを奪い拘束する、等々、その応用範囲はまさに自由自在で、外した骨を再び戻して動かせるようにすることすらも可能。
また、他人は勿論、自分自身にも使うことができ、悪人に捕まり閉じ込められた際には自分の関節を外して牢屋の隙間を通り脱出したことも。
一方で、ある種の職業病とでも言うべきか、しばらくぶりに手に入った米をドカ食いしのどに詰まらせたおきんの背中をさすろうとして誤って骨外しを使ってしまったこともある(直後に慌てて戻し事なきを得た)。
仕事人の代表格として挙げられる事が多いが、『必殺仕事人』の名がつく作品には登場していないため、鉄が厳密な意味での「仕事人」だった事は一度も無い。
余談
必殺シリーズの代名詞とも言えるレントゲン映像による表現は、『必殺仕置人』にて彼が使用するものが初出。
映像にはバリウムを塗った人体模型が使用されている。ちなみに骨外しを行う手は演者の山崎氏のものではなく、この表現方法を提案した撮影班チーフの方のものなんだとか。
『新仕置人』以降、後年の作品で何度か再登場が検討されたが、演者の山崎氏の「同じ役を何度も演じることはあまり好まない」という意向もあって実現しなかった。
このため、『必殺仕事人Ⅲ』前日談である「必殺10周年スペシャル 仕事人大集合」では代わって『必殺必中仕事屋稼業』から知らぬ顔の半兵衛(演・緒形拳氏)が再登場し、『必殺仕事人Ⅴ激闘編』でははぐれ仕事人・壱(演・柴俊夫)が新登場している。