火防郷
ひぶせごう
「稼げるからさ。』
「戦場じゃ、そういう奴から死ぬんだよ。」
概要
真祖ユーベン率いる組織、『ゴールデン・パーム』の取り締り役。ポジションは組織のNO.2で、ユーベンの右腕。常にアロハシャツを着た筋骨隆々の大男であり、自他共に自らの容姿がゴリラであると認めている。七原からはゴリさん、京児からはゴリファイアと呼ばれている。ユーベンに雇われる前はプロの傭兵として活動し、数多くの修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の猛者。
人物
その人柄は明るく、気さくで社交的。笑い声がにウホホホであったり、ドミノが自陣営に彼をスカウトした際は「やめとけよ、俺のバナナ代は高いぜ?」と断るなど、非常にコミカルなゴリラキャラである。さらに常に笑顔を忘れず、誰からも信頼される人物。だが怠け癖や下世話な詮索をしたりするため、水波からは嫌われているが、本人はあまり気にしている様子はない。
…………というのが表の顔。彼の本質は根っからの傭兵であり、殺しも裏切りにも何も感じない冷徹、合理的な人物。上記のゴリラキャラもチームドミノとの同盟に当たって、善たちが親しみやすいように配慮したもので、全て演技である。稼ぐためであれば、主人を殺した日ノ元にすら協力し、かつての仲間を見殺しにすることも厭わない。また非常にリアリストであり、他人の命を守るために戦う善や、理想と正義のために戦う霧島のような人物をあまり好んでいない。だが、情が全くないというわけではなく、長い付き合いであるユーベンが日ノ元に敗北した際には「ユーベン。悪かったな、勝たせてやれなくてよ。」と漏らし、事後処理として生き残りの民間人への対処や、ユーベンの敵討ちに走ろうとするゴールデン・パーム残党を諫めるなどの仕事を無償で行っていた。
能力
変身体は真紅のメカニックなデザインで、再生力の低い重装甲タイプ。ヴァンパイアとしての実力はゴールデン・パームのNO.2に恥じないもので、あの日ノ元軍司に並ぶほど。善からも、「先生と同格」と見られていた。ヴァンパイアの能力を抜きにしても、パワー自慢の明の筋力を上回っているだけでなく、耐久力も高く、生半可な攻撃ではダメージすら通らず、七原によって加速された明の渾身の正拳を喰らってもほとんどダメージを受けていなかった。さらに常に高熱を纏っており、触れるだけで火傷を負うほど。加えて、この高温を利用して周囲に陽炎を起こして目眩しを行うことも可能。火防本人の判断能力や指揮能力も優れており、味方への指示を出すながら並行して戦闘を行うことすら可能で、この時代で間違いなくトップクラスのヴァンパイアである。
『重火器武装(正式名称不明)』
火防のヴァンパイアとしての能力で、全身に重火器を装備することが出来る。また、火器を扱わずとも膨大な量の炎をコントロールすることも可能。その攻撃力は絶大であり、指から放った炎だけで燦然党上位陣の一人である日ノ元景成を一撃で葬るほど。また使用できる火器も多彩であり、作中では
- ヴァンパイアの体を容易く砕くマシンガン
- 追尾式の小型ミサイル
- 両肩から威力の高い砲弾
- 設置型の地雷
- 胸部から超高火力の熱線
- 高熱の炎で形成したナイフ
など、その殆どが必殺の威力を誇る。また背部には推進装置(スラスター)を装備しており、高速移動や飛行も可能。
W・M・D(ウェポンズオブ・マス・ディストラクション)
彼の扱うD・ナイト。具現化させたミサイルなどの膨大な量の重火器から目標に向けて一斉攻撃を行う。シンプルな攻撃ながら威力は絶大であり、文字通り必殺の一撃。作中では葛の盾となった燦然党員3名を纏めて葬り、葛本人にも大ダメージを与え、善に使用した際も、盾とした分裂体ごと彼の肉体を跡形もなく粉砕している。この技の欠点としては、七原のD・ナイトのように付属効果として相手への弱体化効果がないこと、そして本人も認めているように出足が遅い為、先手を取られる可能性があることのみである。
活躍
初登場は第52話。南伊豆へ向かうチームドミノ を尾行しており、夜になると同時に水波と共に彼らに襲撃を行った。善、七原、明の3人を相手に一歩も引かず交戦するも、彼らのチームワークの前に敗れる。しかしこの戦闘は3人の共闘を引き出すためのトレーニングであり、火防本人はかなり手を抜いていた。(具体的には、本来の能力の重火器を一切使用しておらず、戦闘後も息一つ切れていなかった。)
それからはユーベンの側近として登場し続け、ドミノとのミーティング、霧島の燦然党潜入ミッション、決戦前の作戦会議時も常にユーベンの隣に立っていた。来る決戦ではユーベンのRe・ベイキングの準備が完了するまで全体の指揮を行い、日ノ元士郎とユーベンが交戦する際には一時ユーベンの側を離れ、日ノ元景成含む燦然党員3名を仲間への指示を送りながら全滅させるという離れ業をやってのけた。その後、燦然党側の真の狙いにいち早く気が付き、上位陣と幹部の足止めを行っていた仲間たちに早急に撃破するよう指示を送ると同時に、彼自身も葛にD・ナイトを放つも取り逃してしまう。結果、葵洸の『招来跳躍』によって集められた燦然党上位陣の横槍によってユーベンは敗北し、死亡してしまう。ユーベンが死亡する直前の最後の通信で彼に雇用関係の終了を告げると、「あんたには貰いすぎちまったからな、事後処理はしといてやる。」「悪かったな、勝たせてやれなくてよ。」と後悔を滲ませていた。
第一夜の後、他のゴールデン・パーム残党と共に生き残った民間人の対処に当たっており、暴れる民間人の何人かをライフルで撃ち抜き黙らせようとするなど、以前のコミカルなキャラを演じなくなっていた。
その後ドミノの演説で民間人を地下シェルターに避難させた後、ユーベンに代わってゴールデン・パームの面々に今までの給与と退職金を渡すと、彼らにこれからは戦っても見返りがないこと、民間人の対応にあたる義務はないことを伝えると足早にその場を去ってしまう。その際、水波には『あんま感情的になるなよ。』と忠告していた。
その後、ドミノ陣営が燦然党との決戦を行う中、葛と交戦しようとしていた善、明、七原の前に姿を現し彼らに共闘を持ち掛ける。「社長には随分稼がせてもらったからな、仇くらい討ってやるさ。」と変身し、彼らの援護を引き受ける。ヴァンパイア最強格の味方が出来たことで七原と明は安堵し葛に向き直る。
…………………だが
善が違和感に気付くと同時に火防は3人に向けて爆炎を放ち、チームワークが持ち味の彼らを分断する。その後、現れた葛に善の始末を任せられる。
「稼げるからさ。燦然党も今や決死、後がねえ。大枚はたかせてやったぜ。」
彼はゴールデン・パームをあっさりと裏切り、燦然党に鞍替えしていた。民間人を虐殺し、主人であるユーベンを殺した張本人である日ノ元に味方する彼が理解出来ず、狼狽えながら問いかける善に対して、日ノ元の蛮行、阿久津や蟻塚、ユーベンの死に特に思うことはないと告げる。
善「それが人間の言うことか!!!」
と激昂する善に容赦なく攻撃を加え、交戦を開始する。
「僕は、誰かの命を守るためだけに戦う?下らねえ。戦場じゃ、そういう奴から死ぬんだよ。」
善の理想を真正面から嘲笑すると、火防は全力で彼を殺しに掛かる。
常に背部のスラスターで高速移動をしつつ、追尾式のミサイルや炎のナイフで容赦なく心臓を狙った攻撃を放ち、着実に善を追い詰めていく。全力の彼を前に善は驚愕するが同時に、かつての仲間と殺し合うこの戦いに迷いを拭いきれなかった。そんな彼に火防はゴールデン・パーム構成員のほとんどは偽名であったことを明かす。(例外は誠実であろうとした蟻塚、原須、名前を考えるのが面倒だった阿久津だけ)チームドミノとゴールデン・パームは一時の同盟であり、いずれ殺し合う関係。所詮その程度の信頼関係であったことを改めて善に突き付けると、ユーベンのように狡猾でもなく、日ノ元のように冷酷でもないドミノの甘さを指摘し、善を挑発。だが一時の怒りで覆せる実力差ではなく彼を後一歩のところまで追い詰めるが、殴りかかって来る善の殺気に怯み、全力の拳を顔面に受けてしまう。あのユーベンすら動けなくさせた殺気を直に感じたことで、彼は『佐神善』という人間の歪さに気が付く。
「初めて見た時から違和感はあったが…見れば見るほど気持ち悪い野郎だぜ。言ってることも戦う理由もまさにヒーローって感じだが、やってることは殺した死体の皮を真似、形を歪めて身に纏う。」
彼を殺せば、また御前試合の時と同じ暴走が起こると確信し、撃破から足止めに目的を切り替える。殺害を辞めたとはいえ、その力の差は大きく善を圧倒。地雷で両足を粉砕し、追撃に爆炎を放とうとするがその瞬間、背後から迫る何者かの一閃で推進装置を破壊されてしまう。
「何がしてえんだ? 堂島ぁ…!」
現れたのは堂島正。堂島と善のタッグを相手に善戦するも徐々に押され、ドミノのいる海辺まで押し込まれてしまう。そこで海辺で波が不自然に渦巻いていることから水波魚月及びゴールデン・パーム残党の参戦を知ると、彼らの無謀で無意味な行いを嘲笑する。「アンタの仲間だろ」と喰ってかかる善に「もう仲間じゃねえよ。」「身の振り方を考える時間をやったのに情に絆されやがって。言っただろ?そういうやつから死ぬんだよ。」と吐き捨てると日ノ元の勝利を確信。今逃げるなら背は撃たないと提案するが、善はそれを真っ向から否定。トドメを刺そうとするがその瞬間、善にD・ナイトが発現。迎撃するには自身のD・ナイトは出足が遅いことを考慮し撤退するが、これにより日ノ元への妨害を許してしまう。火防はこのD・ナイトが攻撃用ではないことを知ると、現在の善はD・ナイトの操作で手一杯だと察知し即座に善の追跡を開始。発見後、即座に『W・M・D』を放ち、善を跡形もなく粉砕してしまう。
しかし、善の始末に手間取ったことでドミノはRe・ベイキングを成し、彼女と日ノ元との頂上決戦が始まる。火防は日中に『ドミノがRe・ベイキングを成した場合、その後の戦闘には参加しない』という取り決めを燦然党と交わしており戦線から離脱しようとする。だがそこに日ノ元軍司含む燦然党員が現れ、士郎への援護を要請されるが火防はこれを拒否。彼らが火防の返答と負傷具合をみて、袋叩きにして殺そうとしていたことを看破すると、この場で殺し合うかと臨戦体制に入る。あの軍司も彼と戦うことはリスクが高いと判断し撤退。火防は善に宣言していた通り、この戦場も切り抜け、王を巡るこの殺し合いから降りた。
「あばよ日ノ元。ドミノ。……フン。理想をその手に、殺し合うがいいさ。心臓をえぐられるまで。」
しかし彼は予想外の再登場を果たす。
『英雄ってのは、利用される為に存在してんだよ。』
余談
彼の寝返りは予想外との声が大きく、彼が裏切っていないことに夏のボーナスを全て賭けた者までいた。(なお無事爆死した模様)
火防は善の正体をかなり正確に見抜いていた数少ない人物でもあった。
現在はエデン・ワイスに付いている彼だが、火防を配下とした真祖は皆死亡しているため、一部の読者からは『死神』と揶揄されている。
関連人物
火防の雇い主であり、真祖の一人。彼は『社長』と呼び、側近として活動していた。その関係性は主人と従者だが、本人たちの関係は「ふざけんなよジジイ」と吐き捨てるなど対等なものに近い。また、火防が情を持った数少ない人物であり、最後の最後まで彼こそが王に相応しいと信じていた。
同僚の一人。共に行動する機会も多く、彼女からは嫌われていたが信頼関係はあった様子。感情に流されがちな彼女に忠告するなどある程度の情は持っていた様子。
同僚の一人。作中で共に行動していた描写は少ないが、阿久津は火防のことを信頼し仲間だと思っていた。
同盟相手。彼女のことは傑出した人物だと認めてはいたが、あまり好んではいなかった。彼が接した真祖の中では彼女への評価が一番低かった。
同盟相手の一人。初対面の頃から彼の戦う理由に不信感を覚えており、「気味が悪い」と評していた。その後、直接対決した際には彼の本質を見抜き、トランプにおける「A(エース)」ではなく「ジョーカー」であると気付いていた。
第二の雇い主。第二夜の決戦時は彼に味方していたものの、金払いが良さそうというだけの理由で協力しており金ヅルとしか見ていなかった。だが、ドミノよりは彼が王に相応しいと思っていた模様。