チンコ痛いねん。
中世――ではない。
中世を模した、何か。
奇跡も魔法もあるんだよ。
現に奇跡というか、私、地球からこの異世界に転生してるし。
そんな世界に転生したファウスト・フォン・ポリドロは考えていた。
その男の今の思考はこうであった。
――チンコ痛いねん。
いっぱいいっぱいであった。
彼は金属製の貞操帯を身に着けていた。
決して誰かに強いられてではない。
自分の意志で着けたのだ。
そうでなければ――やってられない。
やっていけないのだ。
概要
オーバーラップ文庫より書籍化されている。
タイトルの通り貞操逆転世界を下地にした作品で、政治や軍事など女性が実権を握る世界で、男性の騎士として活躍する主人公や、それに惹かれていく人々を描いた展開となっている。
中世ヨーロッパ風の魔法や神様のような超常的現象が存在する世界ではあるがそれらの要素は薄く、基本的には現実世界のような剣と槍、弓や銃、騎士や傭兵といった武力と指揮官の戦術・戦略が戦争の勝敗を決めており、ファンタジーというよりも仮想戦記の色が強く出ている（特に序章以後は現実世界の神話や国名などが登場し色濃く表れている）
登場人物
- ファウスト・フォン・ポリドロ
本作の主人公。転生者であり、アンハルト王国に仕える唯一の男性領主騎士。
第二王女ヴァリエールの相談役。
先のヴィレンドルフ戦役において活躍した救国の英雄の一人。
身長２ｍ、体重は１３０ｋｇ超の偉丈夫であり、魔法のグレートソードを軽々と操り、巨躯の愛馬フリューゲルと人馬一体となり戦場を駆ける超人。歯を食いしばり顔を真っ赤にして暴れる様子から、敬意と畏怖を込め「憤怒の騎士」と呼ばれる。
前世の記憶を持ち、それに引っ張られる形で平気で薄着となったり自身にセクハラをしてくる女性らに対して容易く勃起してしまう。しかしこの世界の常識として、そのようなことで男性側が勃起することは淫売も同義と目されており、それを隠すために貞操帯を身に着けているため勃起するたびに猛烈な痛みが走る。（その痛みを堪えるために歯を食いしばり顔を赤くしている様子が、憤怒しているものと勘違いされている。）
普段は優しく理性的で自身への侮辱も受け流す度量を見せるが、自身の亡母や領民を侮辱する言動には激怒し、たとえ貴人相手であろうと無礼打ちを行う直情的な性格。
またこの世界の常識と、前世の現代人の常識が混ざった奇妙な騎士の誉れを抱いており、その誉を守るためにはたとえ王命であろうとそれに反したり、公の場で土下座することも厭わない高潔さを持つ。
作中でも屈指の武芸者であり、最強格の武力を誇る。
雑兵相手であれば例え１００人相手でも勝てると目されており、事実苦戦したと言われるのは同じく超人であるレッケンベル騎士団長相手のみ。
頭の回転も早いが教養に優れてはおらず、また戦術や戦略、政治といったものについては理解が及んでいない。
アンハルト王国
主人公が仕える王国。隣国ヴィレンドルフとの戦争が終わり平和を取り戻した。
まるで貴婦人のように筋肉もつかない子どものような男性のほうが女性に人気があるため、筋骨隆々とした主人公は余りモテない。
- リーゼロッテ・フォン・アンハルト
アンハルト王国の現女王。32歳。王としての度量と手腕を備えた賢王。
5年前に暗殺され死別した夫ロベルトのことを深く愛しており、それと似た雰囲気を持つポリドロ卿を強く意識している。
- アナスタシア・フォン・アンハルト
アンハルト王国第一王女。王位継承権第一位。
先のヴィレンドルフ戦役において活躍した救国の英雄の一人。
抜群のスタイルを持つ美女であるが、目つきが非常に悪く「人殺しの目」「人を食った目」「爬虫類のような目」と評される。
名実・自他ともに次期王に相応しいと目される。
亡き父親の面影がありつつ、救国の英雄であるポリドロ卿を愛しており、なんとしても手に入れようと画策しているのだが、どうにも空回りしている。
親しい同性の相手にはつい口が悪くなることがある。
- ヴァリエール・フォン・アンハルト
アンハルト王国第二王女。王位継承権第一位。
儚げで清楚な様子の美少女であり、妖精殿下とあだ名される。
王族としての教養は備えているものの、おおよそ教科書通りであり、アナスタシアと比較して凡才と評され、彼女を推す派閥もない。
しかし傭兵や地方領主、平民に対してはまるで特攻のようなカリスマ性を見せ、まだ注目されていなかったポリドロ卿を偶然にも相談役に起用するなど、「下々のもの」への人気は高い。
親しい同性の相手にはつい口が悪くなることがある。
- ザビーネ
第二王女親衛隊の隊長。
普段は知性も感じさせない猥談を振りまき、チンパンジーのほうが品性があるとまで評されるが、所々に高い教養を見せたり、独自の情報網を確保していたりと得体の知れない実力を見せる。
本名はザビーネ・フォン・ヴェスパーマン。代々王家の諜報を担うヴェスパーマン家の長女。
家督を継ぎ諜報を任せられるはずであり、教養も実力も十二分で、暗殺者としての訓練も積んでいたのだが、彼女の本質は「必要なときには感情を殺して人を切り捨てられる」ものではなく、「自分にとって親しい・必要な人物以外は人として認識していない」ものだと看破され、放逐されてしまっていた。
それゆえ、隊長に任命してくれてたヴァリエールや、相談役であるポリドロ卿、そして親衛隊の隊員を守るために懸命に尽くすのだが、それに伴う犠牲には路傍の石ほどの関心も持たない。
- アスターテ公爵
王位継承権第三位。第一王女の相談役。
先のヴィレンドルフ戦役において活躍した救国の英雄の一人。その活躍から「皆殺しのアスターテ」とあだ名される。
アナスタシアに劣らない美貌と知性の持ち主。
共に戦い王国を救ったポリドロ卿に好意を抱いており、彼を夫にしようと手を尽くしているのだが、こと恋愛ごとに関しては弱く、空回りしている。
ヴィレンドルフ王国
数年前までアンハルト王国と戦争をし敗北をした国家。
名誉を重んじ武が尊ばれる国風で、男性でも戦える者が好まれるためアンハルト王国と比べ男性騎士の姿も多い。
約束・契約は必ず守ることを是としており、それが例え法や常識に反するものであろうとも約束は絶対に果たさねばならないという考えを持つ。
- クラウディア・フォン・レッケンベル
ヴィレンドルフ王国の騎士団長。
個としての武はポリドロ卿にも勝るとも劣らず、その戦術・戦略はアナスタシアやアスターテ侯爵すらも圧倒し、アンハルト王国を敗北寸前にまで追い詰めた。
文武両道であり教養も高く政治にも明るい、さらには策略や罠を講じるなど、もはや化け物としか言えない女傑。
先のヴィレンドルフ戦役において、ポリドロ卿と一騎打ちを行い、１００合以上打ち合ってその首を落とされたが、死後もその名が国内外で語られるほど影響力がある。
- イナ＝カタリナ・マリア・ヴィレンドルフ
ヴィレンドルフ王国の女王。
感情の起伏が乏しい……というよりも感情を理解できないと目されることから「冷血女王」とのあだ名を持つ。
王位継承に際して実の父と母を殺害しており、レッケンベルが教育係兼母親役を務めていた。
設定・用語
魔法などは存在するものの、概ね中世後期頃のヨーロッパが舞台となっている。
当初は国家などはモデルとなったものはあるが架空のものであったが、物語の途中から神話や宗教、国家など現実世界のそれと同じ、あるいは強く匂わせるようになっている。
- 魔法
魔法は技術として存在するが、例えば他作品であるような「火の玉を打ち出す」「爆発を起こす」といったものではなく、武具や道具を強化するようなものしか知られていない。
- ケルン派
各王国間にて主流となっている宗教の分派の一つ。
本質は元と変わっていないが「武装する」ことを推奨するもので、贖罪主や聖人がメイスや銃で武装していると説いたり、教会内でマスケット銃を掲げているなど、時には「頭がおかしい」と評される。
清貧を是とし争いをやめ協力し合うことを説くなど聖職者としての本懐はしっかりしており、免罪符を売りさばき浄財を強制している本派からは疎まれている。
秘密裏に火薬の調合に成功しており、マスケット銃や砲台などの開発を行っている。信徒には安価でそう言った武具を販売しているため、ケルン信徒の傭兵は多く、また開拓時に協力していたことからポリドロ卿の領民はほぼすべてケルン派の信徒である。
