超えられぬものが柵なのだ。
"王"になるのは、私だ。
君は君の王道を往きたまえ。
概要
ドミノ・サザーランド、日ノ元士郎と並び立つ、富士山噴火前からヴァンパイアだった真祖の一人。
チームドミノとも燦然党とも違うヴァンパイアの第三勢力「ゴールデン・パーム」を社長として率いている。掲げる理想は『金食礼賛』、望む世界の形は『飢えなき世界』。
大金持ちで非常に羽振りが良く、好きな食べ物は「高いものならなんでも」。かなりの成金趣味かつ拝金主義者。
長い黒髪を棚引かせ、瞳は金色。服装は高級そうかつ金色のアクセサリーを大量に身に着けている。
余裕ぶった表情と物腰が崩れる事は基本的になく、「ファハハハハ!」と快活な笑い声を響かせる。
今でこそ迫力と人当たりの良さを両立しているが、青年期までは仏頂面が板についており、元はあくまで処世術として身につけた態度である。
人物
豪華絢爛、海千山千、腰纏万金な第三の男。他の真祖の例に違わず神出鬼没。前述の成金趣味は服装に留まらず、仮住まいである南伊豆島の屋敷を真っ金金に染め上げ、趣味として中国製の招き猫(もちろん金色)を足を運ぶ度に購入する程。この様子にドミノは『バカなんじゃないの!?』とドン引きし、水波は返す言葉もなかった。ちなみに側近である火防も引いている。
部下を下僕と呼び少数精鋭のチームを率いるドミノ、強者から烏合の衆・チンピラから善良な市民まで100人以上の人材を使い捨てるために確保している日ノ元に対し、そもそもユーベンの組織は「企業」であり、部下は皆給料を貰って仕事をしている「社員」なのが特徴。
善良な性格の者が多いが、ユーベンが掲げる理想の社会に賛同した者と彼の下で得られる大金を求める者の二パターンに大別される。前者の代表例は蟻塚や原須、後者の例は火防、水波、阿久津など。
社員とは強い信頼関係(と金)で結ばれているが、当然ながら彼の成金趣味に賛同する者は一人もいない。
優秀な部下を増やす事に余念がなく、そのためには一切金を惜しまない。初対面の時からドミノの配下も取り込もうと目論んでいるが、一方で本当に「価値(プライス)」がある者しか招き入れないため、誰かを試す際にも全く容赦せず、不要だったり自らの障壁になると考えれば即座に始末しようとする上に立つ者としての冷酷さも持ち合わせている。
過去の経験から「金」以上に「食」を重要視しており、領主となってからは民を飢えさせない統治を行っていた。一企業の社長となった今でも「人が本当に必要な物しか売らない」というポリシーの下、農作物の貿易のみで利益を上げている。
過去
元は中世ヨーロッパの農奴出身。真祖の特性で不老となっており、整理すると「数百年前に生まれて78年の人生を歩み外見上は38歳」という少々複雑な時間の中で生きている。
16歳の時に食料の少ない冬を越すため父親を殺害し、反乱を企てた農奴たちを密告。その件が切っ掛けで領主に気に入られ、彼の下で教養・処世術、そして黄金の価値を学んだが、8年後には彼とその息子を殺害して領地を乗っ取った。その後は戦争を続けて領地を広げていったが、戦争を終えた38歳の時、かつて密告した農奴の生き残りの手で討ち取られてしまう。
柵は越えられないと諦めようとしたものの、彼の心には父を殺した日から穴が開いていた。いくら満たそうとしても乾き続ける空洞があった。そうして彼は崖下から這い上がり、農奴の生き残りを石で撲殺。しかし胸に受けた傷は致命傷であり、静かに息を引き取ろうとしていた。だがその時現王ゴアが現れ、彼の手で真祖化、今から40年前まで仮死状態で眠らされる。目覚めてから富士山の噴火までは戦闘力を高め見聞を深めてきた。
能力
ヴァンパイアの頂点に立つ真祖なだけあり、並のヴァンパイアの比にならないほど高い戦闘能力を持つ。
その変身体は黄金色の鎧を纏った騎士の姿になり、瞳は赤、髪も銀色に変化する。
身に纏う「黄金」は普通の金と違って超硬度を誇り、並の攻撃では全く有効打にならない。
『小麦操作』(正式名称不明)
彼のヴァンパイアとしての固有能力。身に纏う鎧と同質の金色の小麦を生み出し、自在に変形させる。
これは並のヴァンパイアでも持ち得る能力であり、類似能力者には日ノ元明や芭藤などがいる。だが真祖である彼の能力だけあって規模が桁違いであり、剣や盾、巨大なドームから大掛かりなトラップまでありとあらゆるものを創造可能。
この能力を用いた戦闘スタイルは非常に多彩。作中で初めて戦闘が描写された際は剣を用いた白兵戦を行っていたが、これはドミノとの直接対決を想定したものであり、まるで本気を出していなかった。この状態でも目にも留まらぬ速度で移動し、長年の鍛錬で得た「一切の無駄がない」と言わしめるほど精巧無比な攻撃・回避動作を行い、善と明を圧倒していた。
剣術に優れている一方で徒手空拳には疎いそうだが、純粋に身体能力が高すぎて“押しただけ”で善の胴体を真っ二つにしてしまった。
日ノ元との決戦では、熱線を軽くいなしつつ大掛かりなトラップで手傷を負わせ、彼の身体の可動領域に黄金を仕込み任意のタイミングで動きを阻害するという戦い方を見せた。
Re・ベイキング(戴冠式)
ユーベン自身は所謂「天賦の才」を持つ人物ではなく、本人もそれを自覚しているため、どんな戦いでも事前の準備を怠ることはない。
その彼の切り札が「Re・ベイキング」。ヴァンパイアの能力を一定時間使用しない「溜め」を条件に発動。
姿が大きく変化し、スピード、再生能力が大幅に向上する。さらに、能力も強化されており、超巨大なドームの形成や、ドームそのものから槍の雨を降らせる等、能力の幅が広がっている。
容姿の変化としては、鎧がより重厚になり、背部にはマント、頭上には王冠型の発光体が出現する。
この形態では同じ真祖である日ノ元をまるで寄せ付けない程の戦闘力を発揮する。
この能力の正体は「ステータスの再分配」。
本来真祖とは生物の到達点であり、血を飲もうが真祖以外のヴァンパイアの心臓を食らおうが成長することはない。
よって真祖のスペックを仮に数値化するならパラメーターこそ異なるもののその合計値は全員横並びである。
しかし、Re・ベイキングによってステータスを1vs1に特化させることにより、ユーベンは戦闘で大きなアドバンテージを得ることがでたのである。
当然デメリットもあり、
・ステータスを削られた要素は当然弱くなる
・溜め時間に比例した時間制限
・一度Re・ベイキングしてしまうと解除後元の能力に
不具合が生じる
等と、決して低くないリスクを抱えている。
飢えと野心の果てに
彼の父殺しの真相は冬を越すために殺されそうになった際の返り討ちであり、父が今際の際に語った「飢え」という言葉を“柵(しがらみ)”として抱えて続けている。領地を増やそうとしたのも、ヴァンパイアの王を目指すのも、人を獣に変えてしまう「飢え」を憎み、取り払おうとしたからに他ならない。真祖として活動を開始してからも、飢えを根絶するために食物の輸出を手掛ける『ゴールデン・パーム』を起業し、日々戦ってきた。
だがそんなある日、
『足りている?』
取引先の国で小麦が豊作だったようで、ゴールデン・パームからの買い取りは不要だと伝えられ、それをきっかけに『この世界に飢えはあるが、随分減った』ことに気付く。彼の心に空いた穴も、飢える人間が減りつつある現代社会を過ごす中で徐々に埋まっていった。
つまり、彼はドミノや日ノ元と異なり、勝利への『飢え』が足りなかった。そのことを敗北後、日ノ元本人から伝えられた際は穏やかな表情で満たされつつあったことを悟る。
『どうだ、素晴らしいと思わんかね?私の、理想の全てだ。』
最期まで自分の理想を信じて飢えと野心の男は、灰の中へと消えていった。
関連人物
自身の右腕。彼の能力と傭兵としての割り切ったスタンスを高く評価しており、重要な場面では常に側に侍らせていた。誰かに情を抱くことがまずない火防にしては珍しく、ユーベンには思い入れがあったようで、最後まで彼こそが王に相応しいと信じていた。
部下たち。彼らとは金で繋がっただけの関係ではあるが、両者ともユーベンを慕っており、彼もまた彼らのことをよく見て理解していた。
自身と同じ親殺しの道を歩もうとしている似た者同士で、彼女に対してはシンパシーを感じている。期待値が高い分「私は君の未来の一つだ」とアドバイスを送ったりと、特に気に掛けている様子。ドミノが気付けなかった彼女の本当の長所についても見極めている。
同盟相手。給料を与えるユーベンと、無賃労働させるドミノでは正反対であり、更にいずれ殺し合う関係ということで完全に信頼してはいなかったようだが、それでも彼女の生き様を『美しい』と称していた。