概要
第二次世界大戦が勃発し、
フランスに派遣されたイギリス軍はドイツ軍に敗れて本土に撤退する。
(ダンケルク撤退)
その際に、大量の装備や兵器が失われたため、
英仏両軍のために急遽安価で大量生産できる武器が必要になった。
町工場でも容易に大量生産できる、単純な構造の銃ということで開発されたのが、
このステンガン(ステン短機関銃)である。
名前の由来は二人の技師の頭文字(SとT)と、エンフィールド造兵廠の頭文字であるENを合わせものである。
特徴
見た目は「鉄パイプに持つところと引き金を取り付けた銃」になっており、
とても単純なプレス加工や溶接だけで出来上がる。
大量生産が目的なのでMP40のような複雑さは一切無く、
生産性が飛びぬけて高かったために不足していた装備問題は解消された。
だが銃自体の性能も低く、仕上げも悪くて作動不良が多発しており、
当然ながら命中精度も良くなかった。
コンパクトで軽量、組み立て・操作も容易で隠しやすいため、
各地のレジスタンス組織にも愛用された。
使用する弾薬もMP40と同じ9㎜パラベラム弾であるため、
補給が無くても敵から奪って補充できたという。
バリエーション
MK.I・・・最初のモデル。一部部品に木が使われており手が込んでいた。が生産性が悪かった。
MK.II・・・ステンの中で一番知られているモデル。全部品が金属でできており部品数も少ない。
MK.III・・・MK.IIを簡省化したもの非常に精度が悪かった。
MK.IV・・・試作のみされた空挺部隊向けにストック折りたため機能付き
Mk.V・・・ステンガンの最終生産型モデル。木製グリップ・銃床を採用。リー・エンフィールド小銃用の銃剣を装着可能。
余談(イギリス編)
性能が悪く、生産性が良いだけだけの珍銃だが、
・装備不足を解消したこと、
・第二次世界大戦の勝利に貢献したからか、
イギリスを勝利に導いた「名銃」と扱われている。
もしかしたら、かの現在イギリス軍で制式採用しているポンコツ銃も、
いつかこのような名声を得る日が来るかもしれない。
余談(ドイツ編)
なお戦争末期となり、装備不足となったドイツでもコピー生産された。
こちらは『ゲラート・ポツダム(ポツダム機材)』と呼ばれ、
国防軍や親衛隊の兵士や国民突撃隊に支給された。
また、マガジンをMP40と共通にして、
弾倉の取り付け方向も下側にした『MP3008』も製作されている。
両銃ともに生産数は少ないようで、
空襲や労働力の低下、流通のマヒ等で正確な生産数すら不明のようである。
ステンの後継機
1953年に新型の『スターリング短機関銃』が採用され、ステンは退役する事になった。
皮肉な事に、この銃はドイツの「MP28/Ⅱ短機関銃」をもとに設計されている。
1960年代後期にMP5が登場し、採用されるまで現役を務めた。
データ
全長 | 762mm |
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銃身長 | 197mm |
重量 | 3860g |
口径 | 9mmパラベラム |
装弾数 | 32発 |