概要
花粉や蜜をあつめるハナバチの種類(属)の1つ。桜の終わる春の中頃に姿を現し、黒と黄色のツートンカラーが特徴。
クマバチという名前は大きく太めのボディから付けられたもので、当然羽音も大きい。また植物食だがアゴがよく発達していて力強い。
ということでデンジャラスな雰囲気が漂うこの虫だが、捕食性を持たない故か性格は非常におとなしい。アゴが強いので噛まれればそれなりに痛いが、毒性は弱く、たとえ刺されて重症化しても命に関わる程になる可能性はかなり低い(ちなみに毒を持つハチはすべてメス)。
そもそも叩き落とそうするとかよほど刺激しない限りは向かってこない。
生態
普段は花の正面から潜り込んで蜜を摂取するが、たまに花の根本を食い破って直接蜜を採る“盗蜜”も行うことがある。食い意地……?
とはいえ植物側からすれば花粉媒介者として好まれている側面もあり、特に藤はその代表とされる。
夏の初めに朽木や家屋の垂木に穴を開けて巣を作り、そこに花粉団子を立て並べて詰め、団子に卵を産みつけて成長させる。夏のうちに卵はほぼ成虫まで育つが、まだ飛ぶことができないため、親から蜜や花粉を貰って過ごし、その代わりに親が留守の間は巣の番を買って出る。
こうした親子関係は「亜社会性」と呼ばれ、ミツバチやスズメバチに見られる高度な社会性の前進段階と考えられている。
またおとなしい性格ゆえにむやみに周辺者を排除することはなく、そのため同じ朽木に複数のクマバチの家族が巣を構えていることもある。
勘違い
- 人間側
鈍重な体なので、一昔前の航空力学では「力学上飛べるわけがない、何故あれで飛べるのが不思議でならない」とされており、そのことから「不可能を可能にするシンボル」としても使われていた(現在では"空気の粘性"を表す数値を組み込んだ結果充分飛べることが判明している)。
- クマバチ側
クマバチは視力が低く、動いているモノ=メスという認識。たまに人間に寄ってくるのも、人懐っこいからというよりも勘違いして求愛行動をしようとしているためである(というか虫は懐かないので、そう見えるのは単に人間側の思い込み)。
流石に途中で気付いて逃げていくが、動いているものが急に止まると「メスじゃなくて木だったのか…じゃあ休もう」と止まりに来るため、一気に距離を取ることでクマバチの勘違いを正すのが賢明である。
愛でる
懐かないとはいえ、寄ってきたところに手を差し出してやると止まってくれたりする。差し出した手や指等に止まってウロウロ這い回ることもあるので、虫が好きなら愛でてやろう。
飼うつもりなら非常に難しいが。
ちなみにフジやニセアカシア、ナンテン、ハナツクバネウツギ、クチナシといった花を好むという。
甲虫王者ムシキングシリーズにおけるクマバチ
パーのとくしゅわざ「こうげきダウン」に登場。
アダー完結編2008第2弾夏レインボー以降の「昆虫カード」として、第2弾ではパー、第4弾でグーとチョキが登場。特定のカウントにおいて勝つと相手の対応する手の攻撃力を下げる。
新甲虫王者ムシキングにはグーのおたすけムシとして2015セカンドから登場。レアリティはR。
おたすけ技はグーで勝つと相手を2ターン毒状態にする「ヘビィースパイク」。
余談
地域によってはスズメバチを「クマンバチ」と呼ぶ。なので「クマバチ」が話題に上がったら、それがコイツなのかスズメバチなのかをよく確認すべし。
- 外国語
クマバチという名前だが英語では「carpenter-bee(大工の花バチ)」という。また学名をXylocopa(キロコパ。木こり)といい、どうも「熊バチ」というネーミングセンスは日本独自のものらしい。
- 先入観と誤解
上記の通り性格は大人しく毒性も弱いため、人間から見ると危険性はかなり低いのが実態なのだが、ひと昔前(アナフィラキシーショックの正しい知識すら一般的ではなかった時代)の日本では、そのいかつい外見からか「スズメバチとクマバチに刺されたら命に関わる」という誤った先入観が一般常識としてまかり通っていたことがあり、アニメ「ちびまる子ちゃん」(時代背景的には70年代中頃)で言及されたこともある。
また黒主体の体色とずんぐりした体型が似ていることからマルハナバチをクマバチと誤認してしまう人もおり、さらに上記の誤解と合わさってマルハナバチを危険な蜂と勘違い(こちらもクマバチ同様性格はかなり大人しい)してしまうケースも少なからずある模様。どういうことなの・・・。
関連項目
熊蜂の飛行:19世紀後期の音楽家・リムスキー=コルサコフが作曲したクラシック。タイトル通りハチが飛び回るような忙しいメロディが印象的。
ちなみに「クマバチ」は邦題で、原題(ロシア語)や英語などでは「マルハナバチ」という。