戦略戦術大図鑑
せんりゃくせんじゅつだいずかん
概要
バンダイが刊行していた設定資料集「ENTERTAINMENT BIBLE」シリーズの第39巻で、正式なタイトルは『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑 〜1年戦争全記録』。執筆は山口宏らスタジオ・ハードのメンバーが行った。
ガンダムシリーズを取り扱った「ENTERTAINMENT BIBLE」の他巻が既存作品の設定を纏め直したものだったのに対し、『戦略戦術大図鑑』は「地球連邦軍予備役中将ビク・ハボクックが宇宙世紀0094年に記した戦史」という体裁を取って、一年戦争を俯瞰する作品として新たに書き起こされている。
なお、刊行は1991年で、アニメ『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』といったそれ以後に発表された作品の内容は反映されていない。
当時の最新作は『機動戦士ガンダムF91』だが、これは「それまでとは時代が大きく離れており、既存の登場人物の続投は一切ない」という全く新しいガンダム作品であり、本編が新時代に進むのに併せて旧時代の総まとめのような立ち位置で作られた書籍である。
実際はその後にも様々な外伝が作られたのでF91以前と以後の断絶のようなものはほとんど感じられないが、そういう時代性を考えて読むと味わい深いかもしれない。
かつての『ガンダムセンチュリー』や『MSV』と同様に、『戦略戦術大図鑑』を初出とする設定が後続作品において踏襲されているケースは少なくない。そのため、現在では資料的価値も高い作品となっている。
例を挙げれば、連邦軍・ジオン軍双方のエースパイロットといった一部のキャラクターは『SDガンダム GGENERATION』シリーズや『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズといったゲーム作品などに登場しており、乗機がガンプラ化された例もある。
中でも『ギレンの野望 ジオン独立戦争記』には『戦略戦術大図鑑』出身のキャラが多数出演しているほか、オリジナルのCVがついている、双方の撃墜数トップパイロットがエースたちを率いてプレイヤーのオリジナル部隊と戦うシナリオが存在するなど、やけに力が入れられている。
また、本書で設定されたマゼラン級戦艦の艦名の一部は、アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でも用いられている。
反面、「ジオン地球攻撃軍の主力はドズル・ザビ指揮下にある」など、後の映像作品で否定された設定も存在する他、「アムロ・レイ以上の撃墜スコアを持つパイロットが存在する」など、ガンダムファンの間で賛否が分かれる内容も多い。
特に撃墜数に関しては、連邦がMSを実戦投入してから二ヶ月で戦争が終わっているのに、双方共に100機以上の撃墜スコアを持つパイロットが複数いる等、一年戦争の基本設定と噛み合っていない感もある。かのコンスコン少将ですら保有MSは12機だけだったのに…。
これに関しては「あくまで非公式なものとして世界観を盛り上げるために書いた設定が、後になって想像以上に重用されるようになってしまった」というのが実態らしい。
というのも、そもそもこの本は正確な資料という体で書かれていない。現実の戦争の記録では他の記録と合致しない内容が書かれていることが珍しくなく、例えば撃墜数は自己申告に頼っていたので誤認が多かった(第二次世界大戦において連合国側が撃破したとされるティーガーⅠの数は、ドイツで実際に生産された数を上回ってしまっている)。
そういう曖昧な部分も含めた戦史本のパロディというのが本書の立ち位置である。事実、登場人物は第二次大戦で活躍した人間をモチーフとしている。よって純粋な読み物として楽しむべきであり、資料としての正確性を求めてはいけない。作中の人間が記したからといって、それが絶対に正しいという保証は無いのだ。
…が、上述のようにゲーム等で一部設定が採用されているので無視するわけにもいかないという複雑な扱いになっている。
91年当時はまだ「宇宙世紀の公式設定」が定まっておらず、サイバーコミックス等で作者が独自に創造したガンダムの漫画が多数描かれており、本書もそれに近いノリで作られているのだが、なまじ真面目な文体で書かれていているが故に「公式っぽい」と誤解されてしまったのだろう。
関連タグ
ジャミトフ・ハイマン - 彼と同姓の「ハイマン将軍」というキャラクターが登場。スペースノイドを嫌うタカ派として描かれており、ジャミトフと同一人物か否かは明示されていない。
機動戦士ガンダム戦略戦術大図鑑 - 表記揺れ。