概要
2001年に出版され、第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞に輝いた作者の出世作。
大江戸人情妖怪捕物帳という独自のスタンスを貫き続け、現在単行本が10作目まで刊行されている。
江戸の廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の一人息子・一太郎と、彼の周りに集まる妖怪たちが様々な奇怪な事件を解決いていくという、時代劇と妖怪絵巻と推理物を取り混ぜたユニークな世界観で展開される物語。
同時に人情味に溢れた展開の中に、人間の性質を鋭く突いた視点も盛り込まれており、飽きの来ないついつい続きの気になる仕上がりとなっている。
一作目の『しゃばけ』と五作目の『うそうそ』は一巻を通しての長編となっており、それ以外の作品は短編集というかたちをとっている。また八作目『ころころろ』は物語全体は告げつつ、短編として成立するように話が連載作品形式となっている。
物語
江戸の大店・廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の一人息子の一太郎は、いつも病弱で寝込んでばかり。それでも昔から不思議と妖怪などの、この世ならざる者たちが一太郎には見えおり、彼の周りには多くの妖怪が集まって楽しく騒いでいる。
親や手代(てだい)である二人の兄やたちなど、周囲の砂糖菓子より甘い自分への態様に頭を抱えつつ、一太郎は不意に転がり込んでくる奇怪な事件を、妖怪たちと協力して解決しながら成長していく…。
登場人物
「長崎屋」関係者
- 一太郎(いちたろう)
本作の主人公。幼いころから病弱で、下手に体を動かすとすぐに寝込んでしまう虚弱体質。心やさしく朗らかな性格で、謎解きや判じ物が得意という頭の切れる一面も持つ。饅頭に砂糖と黒蜜をかけたぐらいに甘い両親と、咳ひとつですぐに薬と布団を用意する心配性の手代らに、日々悩まされている。
- 佐助(さすけ)
一太郎の兄やであり、一太郎が幼少のころから自分の世話役をしてくれている手代。身の丈六尺足らず(約170cm後半)の厳つい風貌の持ち主で、威勢のいい水夫(かこ)たちをまとめ、廻船問屋を円滑に回す重要な立ち位置にいる。実は犬神と呼ばれる妖怪で、一太郎の知る妖怪たちでは一、二の実力を誇る。
- 仁吉(にきち)
佐助と同じく一太郎の兄やであり、幼少のころから世話をしている手代。歌舞伎の二枚目俳優のような美男であり、物腰も柔らかく丁寧である。薬種問屋の運営を回すのが主な仕事。佐助同様、実は白沢と呼ばれる妖怪で、実力も佐助に引けを取らない。
- 藤兵衛(とうべえ)
一太郎の父で廻船問屋『長崎屋』の店主。もとは一手代であったが、婿養子として迎えられて後を継いだ。飄々としながらもかなりやり手の商人であるが、こと息子に対しては非常に甘い。
- おたえ
一太郎の母。夫・藤兵衛とは非常に仲睦まじい。いわゆる天然ボケな性格をしているが、芯はとてもしっかりしている。夫同様に、息子には非常に甘い。
- 松之介 (まつのすけ)
一太郎の兄。異母兄弟であり、訳あって別々に暮らしている。シリーズが進むと、『長崎屋』の手代として働きだすことになる。最近、商家の家へと婿入りした。
「長崎屋」/一太郎に縁の深い人々
- 栄吉
『長崎屋』の向かいにある菓子屋の跡取り息子。一太郎の幼馴染で明るく活発な性格の親友。店を継ぐべく日々菓子づくり修行に勤しんでいるが、あんこを作るのだけはなぜか下手。
- 日限(ひぎり)の親分
長崎屋をはじめとする、日本橋の商人街周辺を持ち場としている岡っ引き。
日限地蔵の辺りに住むため、こう呼ばれる。
最近は縫い物をして家計を立てていた妻が寝込んでしまい、町人たちからの「袖の下」で家計を回している。そのため長崎屋にもよく立ち寄り、上がり込んでは世話話ついでに菓子をつまんでいく図々しい一面が目立つ。しかしながら、本来はやり手で腕の立つ人物である。
一太郎たちの情報源でもあり、たまに親分の方から一太郎の知恵を借りに来ることも。
- 於りん
一太郎が迷子になっていたところを拾った幼い女の子。
のちに、材木問屋「中屋」の娘と判明する。
無口で人見知りが激しいが、根は活発で明るい。
普通では見えないはずの鳴家たちが見えており、彼らをよく追いかけまわしている。
「長崎屋」に集う妖たち
既刊書籍
「しゃばけ」(2001年12月21日)
「ぬしさまへ」(2003年5月22日)
「ねこのばば」(2004年7月22日)
「おまけのこ」(2005年8月22日)
「うそうそ」(2006年5月22日)
「ちんぷんかん」(2007年6月22日)
「いっちばん」(2008年7月22日)
「ころころろ」(2009年7月31日)
「ゆんでめて」(2010年7月30日)
「やなりいなり」(2011年7月29日)
「ひなこまち」(2012年6月29日)
テレビ放映
放送局:フジテレビ
時間枠:21:00~
『しゃばけ』(2008年11月24日/土曜日)
『うそうそ』(2009年11月29日/土曜日)