CV:笑兵衛
概要
身体が弱く、あたかも蚕のように大切に育てられた箱入り娘だが、妹の絹とは仲睦まじく、常に彼女のことを想っていた。
しかしある時行方不明になり、後に様子がおかしくなった状態で帰還、程無くして病没したとされている。
病的な程白い肌と長く美しい黒髪が際立つ美人で、探索中に発見できる写真を見る限り、湊の亡き母である陣場結と非常に似ているとのことだが…。
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※以下ネタバレ※
湊を襲った女性の姿をした怪物の正体が彼女である。
かつて、妹の絹が些細な嫉妬から彼女を山に置き去りにし、そこで彼女は何かと出会う。綾乃の手記によれば綾乃が“彼女”と形容していることから女性であったようだが、
その何かと融合したことが示唆されておりそれが原因で徐々に怪物と化していった。
発見された後は深山家に匿われ、父たちが元に戻す手段を必死に模索したが結局その方法は見つからなかった。為す術無く一年が経つ頃には容姿は完全に人外と化し、人間の生き血を欲するようになる。当然表に出せるはずも無く、屋敷の地下に作られた牢に幽閉される形で暮らすようになる。後に一ノ瀬の地域に言い伝えられる奇病・ヒメツキである事が分かるが、綾乃の失踪と罹病の因果関係までは分からず主治医の島村も匙を投げる有様だった。
(一ノ瀬には繭姫という養蚕の嚆矢となった女性の言い伝えがあり、美貌で知られたものの妹の妬みを買い、最期は生き埋めにされるという悲惨なものだった。彼女の亡骸は後に蚕となり、深山家の養蚕業は繭姫の骸から湧いた蚕を使って繁盛したとあることから『ヒメ=姫』として、異形化は殺された繭姫の祟り、あるいは女性に憑く妖怪・憑き物の類ではないかと捉えるファンも居る)
ただ異形となってもある程度の知能は残っており、拙いながら字を書いたり、灯を点けたりすることは出来た模様。
彼女の食事については綾乃の存在に勘付いた人間を殺して与えたり、それが叶わない場合は鶏を絞めて得た血を与えたりしていた。
そしてある時何故か妊娠していることが発覚する。綾乃は子供を9年近く身籠り続けた末に娘を出産。その娘は結と名付けられた。つまり彼女は結の実母で湊の祖母にあたる。
なお、怪物になる前後共々男性との接触はなく、彼女に恋慕していた深山佐一でさえも彼女には触れたことすらないとされる。つまりこういうことである(因みに蚕でも単為生殖する個体は居るらしい。一説には“ヒメツキ”との間に生まれた子とも言われる。)。
綾乃は肉体的に一人で出産できる状態では無くなっていたので島村医師と絹の手で帝王切開され、結が産まれた。
佐一が結を連れて一ノ瀬を離れ、島村が自殺した後、家に一人残った絹の世話を受ける日々を送っていた綾乃。
絹の危篤に際して絹の家周辺を徘徊していた折、偶然にも孫の湊に遭遇。勿論分かるはずも無く、彼を殺そうと幾度も襲い掛かり、果ては荒廃した深山邸にまで追って来て、終いには自身の住処である地下牢に追い詰める。
しかし湊の機転に敗れ、彼諸共瓦礫の下敷きになるかに思われたが、その直前に湊を庇うかのように突き飛ばしていたために、湊は無傷で済む。
瓦礫に潰されてなお死に切れず、苦しみもがいていたところを湊によって引導を渡され、遂に息絶える。
一年後、湊が最後の墓参りをしに一ノ瀬を訪れた際の話によれば、あの後綾乃を捨て置けず、埋葬しようと戻った地下牢に彼女の死体は無く、代わりに巨大な繭とそこから這い出す無数の蚕が居たという。
それが綾乃の生まれ変わりかは分からない。
しかし、墓参りを終え踵を返した湊の視線の先、村の社の鳥居の前に、白い大女の影が立っているのが見えたのだった。
いつか彼女が絹と行った、紅葉狩りの記憶をなぞるかのように。
なお、彼女が山で出会った何かについては明かされていないが、作中の日誌やとあるエンディングの描写から宇宙人である説が濃厚である。
人物
体が弱くあまり外へ出たことの無い生活だったが、絹さえ居れば幸せだと語り、佐一との結婚も乗り気では無く、叶うならずっと一緒に居たいと望むほど妹への依存度が高い。
怪物となり、記憶や理性を失った現在でも妹の絹のことを深く愛しており(実の父については怪物化が進んで認識できなくなり殺害してしまったが、絹については現在でも認識しており「キヌチャン」と口にする場面がある)、絹もまた姉に執着に近い感情を抱いているが、絹の内心にある思いは純真な姉とは異なり、姉妹愛や劣等感から来る姉への優越感などが綯い交ぜになった複雑なものになっている。
彼女が異形と成り果てた現状や、彼女を想う佐一、父の久兵衛のことをどのように思っているかは不明だが、絹への深い愛だけは明確であり、次第に蝕まれていく意識に抗い続けながら、完全に絹のことが分からなくなる前に殺して欲しいと願っていた。
(皮肉な事に絹の方も脳腫瘍に蝕まれ、姉を忘れてしまう事を恐れていた。)