うま味調味料
うまみちょうみりょう
うま味調味料とは、調味料の一種である。
概説
五味(甘味/塩味/酸味/苦味/旨味)のうち、旨味を加えることを目的とした調味料。
塩のようなパウダー状の白い結晶で、基本的にはほぼ無臭に等しい。
旨味とは、必須栄養素の一つである「アミノ酸」の存在を知らせる感覚であり、旨味が強いと食品や料理をより美味しいと感じることが出来る。
うま味調味料を料理に利用することで、味の輪郭線をはっきりと浮かび上がらせることが出来る――有り体に言えば味を濃く感じられる効果がある。
これらは出汁を取って加えるのと同じ効果である。
さらにうま味調味料なら風味が無に等しいので、食材と出汁の風味が喧嘩して料理の美味しさを損ねてしまうリスクを回避することもできる。
ただし、この事は裏を返せば、うま味調味料は当然ながら通常の出汁(特に材料を長時間煮出して取った出汁)に含まれているペプチドなどの、いわゆる「コク」を出す成分が欠けているので、通常の出汁を使った味付けに比べて、良く言えば「あっさりしている」(後味が残りにくい)、悪く言えば「コクがない」味になる可能性が有る。(ただし、うま味調味料の大手である味の素社ではコク味に関する研究も行なわれているので、将来的には「コクが感じられるうま味調味料」が実用化される可能性も有る)
早い話が「通常の出汁(短時間で煮出したあっさり目のもの)」「通常の出汁(長時間かけて煮出した濃厚な味のもの)」「顆粒状チキンスープの素や顆粒出汁」「うま味調味料」などなどのどれで旨味を出すべきかは、どのような食材を使って、どのような料理を作ろうとしており、目指すのがどういう味なのか?によって最適解が違うと考えて間違いない。場合によっては一皿の料理でも、メインになる食材と付け合わせの野菜では、「うま味調味料」と「濃厚な味の出汁」のどちかで旨味を付けるべきかが違ってくる事も十分に有り得る。
主にグルタミン酸(植物性)、アスパラギン酸(植物性)、イノシン酸(動物性)、グアニル酸(きのこ類)、コハク酸(貝類)、等が代表的な旨味成分であり、うま味調味料はこれらを足すことで料理に旨味を与える。
なお、グルタミン酸などの「アミノ酸系の旨味」とイノシン酸・グアニル酸などの「核酸系の旨味」が両方とも含まれている場合は「旨味の相乗効果」と言われる旨味が何倍にも強く感じられる現象が起きる為、イノシン酸の大量生産技術が確立されて以降は(イノシン酸はグルタミン酸に比べて単純な化学合成ではコスト高になるなどの問題が有った)、ほとんどのうま味調味料は家庭用・業務用を問わず複数種類の旨味成分から構成されている。
逆に、今の日本では「純粋なグルタミン酸だけ」の調味料の方が入手が困難であり、フィクションなどでうま味調味料を擁護するにせよ否定するにせよ現代の日本が舞台の話で「うま味調味料は、ほぼ純粋なグルタミン酸」という前提で書かれているもの(例えば、うま味調味料にイノシン酸やグアニル酸が入っている場合、話が成り立たなくなってしまうもの)は、何十年も前の古い情報や間違った固定観念に基いて作られていると考えて概ね間違いない。
一方で、「うま味調味料による健康被害」というデマにも長年悩まされており、誤解の解決に奔走することを余儀なくされている。
ただし、これは「うま味調味料が調味料として優秀過ぎた」と「うま味調味料は『あっさりした旨味』を出す場合にこそ本領を発揮する調味料であり、うま味調味料で『濃厚な旨味』を出そうとすると大量に使用せざるを得ない」(要は、うま味調味料を使っていた飲食店が、うま味調味料の特性を理解しないまま、何でもかんでもうま味調味料で旨味を出そうとした)の両方の要因が合わさった結果、日本のラーメン屋やアメリカの中華料理店などで、素人からすると異常な量のうま味調味料を使っている店が少なくなかった時代が有った事も、そのような誤解が起きた要因の1つと言える。早い話が、昔は、日本のラーメン屋やアメリカの中華料理店などで、たまたま、客が厨房の中を見てしまった時に素人目には「いくら何でもマズくないか?」と思ってしまう量のうま味調味料が使われているのを目撃してしまう事が良く有り、うま味調味料は人体に悪影響が有るか?という実験において、実験動物や人間に、当時の基準ではともかく現代の感覚では異常な量のうま味調味料を摂取させてしまった可能性は十分に有り得る。
1960年代末のアメリカで端を発したこの流れは、NHKが公共放送として商品名が使えないことを理由に捻り出した「化学調味料」という単語と、当時の公害問題による「化学」という単語へのマイナスイメージが加わり、悪印象を強めて宣伝される結果を招いてしまった。
しかし「味の素」も、初期は石油由来の成分を使用して製造した時期があり、相次ぐ批判から現在では製造法の見直している。
特に、イノシン酸については、大量生産方法確立の研究・開発の初期段階から「肉・魚介類などを分解して作り出す」製造方法が検討されていた。(グルタミン酸が2種類の光学異性体の内、片方のみに旨味が有るのに対して、イノシン酸は4種類の光学異性体の内、1種類のみに旨味が有る為、単純な化学合成法では「旨味が有る光学異性体のみを分離する」「旨味が有る光学異性体のみを合成する」為のコストや技術的ハードルがグルタミン酸よりも上だった)
※詳しくは「味の素」の項目を参照。
ただ現在でもネットからの情報を根拠に、上述の経緯を再び掘り起こし、執拗にうま味調味料を批判する勢力も存在するため、うま味調味料に好意的な著名人としばし論争を巻き起こすことがある。