うま味調味料とは、調味料の一種である。
概説
人間の5つの味覚である(甘味/塩味/酸味/苦味/うま味)のうち、うま味を感じる成分を加えることを目的とした調味料。
ちなみに味覚としてはたらく成分を書く場合は平仮名表記の「うま味」であり、漢字表記の「旨味」はその成分も含めた「おいしさ全般」を指す言葉であるとされる。
一般的な商品名としては「調味料」という表記で良いが、日本の法的な分類上は食品添加物になるので、市販品に使用する場合は「添加物としての調味料」という扱いになり、指定の表記で成分表に明示しなくてはいけない。参考:東京都保健医療局
つまり「調味料でもあり食品添加物でもある」わけだが、現状pixiv百科事典では食品添加物の記事がないので調味料の子記事としてある。
外見は塩のようなパウダー状の白い結晶。製品によって結晶が粒状だったり細い棒状だったりもする。基本的にはほぼ無臭。
味覚としての「うま味」は、必須栄養素の一つである「アミノ酸」の存在を知らせる感覚であり、これが強いと食品や料理がより美味しいと感じることが出来る。
上記の通り加工食品等で原材料の中にうま味調味料が含まれている場合は、「調味料(アミノ酸等)」といった形で表示されるが、舌に直接触れるので味を強く感じやすいだけで、普通の料理で使うレベルなら必要量のアミの酸を賄うほどに摂取できることはない。
むしろ、うま味調味料だけを多量に食べたら同時に摂取するナトリウムの過剰摂取になってしまい、塩分と同様に高血圧の危険性がある。きちんと食材等で摂取して頂きたい。
そもそも、下記の通りこの種の調味料の主成分は非必須アミノ酸に分類されるものであり、食べたところで直接の体づくりができる訳ではない。あくまでも、適量で美味しく味付けして、しっかり食べるための補助輪なのである。
成分
主にグルタミン酸(植物性)、アスパラギン酸(植物性)、イノシン酸(動物性)、グアニル酸(きのこ類)、コハク酸(貝類)などが代表的なうま味成分であり、うま味調味料はこれらを後から追加して、料理に「おいしさ」を与えるものだと言える。
なお、グルタミン酸などの「アミノ酸系のうま味」とイノシン酸・グアニル酸などの「核酸系のうま味」が合わさると、うま味が何倍にも強く感じられる「うま味の相乗効果」が起きる為、化学合成ではコストのかかったイノシン酸の大量生産技術が確立されて以降、ほとんどのうま味調味料は家庭用・業務用を問わず、複数のうま味成分を混合したものになっている。
逆に、今の日本で「純粋なグルタミン酸だけ」の調味料を入手する方が難しい。
料理や美食を題材にした創作の中には、うま味調味料を肯定するにせよ否定するにせよ「うま味調味料は、化学的に抽出されたほぼ純粋なグルタミン酸」だから「出汁を使いイノシン酸やグアニル酸を使うべきだ」といった描写をしているものもあるが、現代日本が舞台である場合、古い情報や間違った固定観念に基いて描かれている可能性が高い。
また、こうした創作では「うま味調味料」で生じる「うま味」と一般的な出汁の「うま味」が別物であるかのように扱われ、それを一口食べた程度で識別できる「食に通じたキャラクター」が登場して「この料理は化学調味料を使っているではないか!」などとダメ出しして大騒ぎするシーンが稀によくある。
イノシン酸については、大量生産方法確立の研究・開発の初期段階から「肉・魚介類などを分解して作り出す」製造方法が検討されていた。
これはグルタミン酸が2種類の光学異性体の内、片方のみにうま味が有るのに対して、イノシン酸は4種類の光学異性体の内、1種類のみにうま味がある為、単純な化学合成法では「うま味が有る光学異性体のみを分離する」「うま味が有る光学異性体のみを合成する」為のコストや技術的ハードルがグルタミン酸よりも上だったため。現在は還元法で作られている。
使い方
うま味調味料を料理に利用することで、味の輪郭線をはっきりと浮かび上がらせることが出来る。有り体に言えば味を濃く感じられる効果がある。
これらは出汁を取って加えるのと同じ効果だと言える。
さらに、うま味調味料は固有の風味が無いに等しいので、食材と出汁の風味が喧嘩して料理の美味しさを損ねてしまう味の相性のリスクを回避することもできる。
固有の風味が無いのは、裏を返せば「通常の出汁(特に材料を長時間煮出して取った出汁)に含まれているペプチドなどの成分が欠けている状態」とも言える。
出汁を使った味付けに比べて、良く言えば「あっさりしている」(後味が残りにくい)、悪く言えば「コクがない」味になる可能性が有る。
- 短時間で煮出したあっさり目の出汁
- 長時間かけて煮出した濃厚な味の出汁
- 顆粒状チキンスープの素や顆粒出汁
- うま味調味料
それぞれでどうやって料理のおいしさを出すべきかは、どのような食材を使って、どのような料理を作ろうとしており、目指すのがどういう味なのかによって最適解が違うと言える。
場合によっては、同じ食材であってもメインになるか付け合わせにするかで「うま味調味料」と「濃厚な味の出汁」どちらと相性が良いかが変わってくる事も十分に有り得る。
風評被害
詳しくは「味の素」の該当項目を参照。
うま味調味料に対しては「摂取すると健康に害がある」という科学的根拠のない風評が長年にわたり唱えられていて、誤解の解決に奔走することを余儀なくされている。
これは
- 「うま味調味料が調味料として優秀過ぎた」こと
- うま味調味料は和食などに向いた『あっさりしたおいしさ』を出す場合にこそ本領を発揮する調味料であったこと
- 普及初期はイノシン酸の大量生産法が確立されていなかったので、うま味の相乗効果が出せなかったこと
- うま味調味料で中華料理やラーメン用スープなどの『濃厚なおいしさ』を出そうとすると、うま味調味料だけではコクや濃厚さの要因となる様々な雑味が無いので、それを補う為に大量に使用せざるを得なかった
といった事情が絡み合って生じたものでもある。
100%全ての店がそうだった訳ではないだろうが、当時の日本のラーメン屋やアメリカの中華料理店などでは、上記の特性をよく理解しないまま何でもかんでもうま味調味料で「濃いおいしさ」を出そうとして、オーバーな量のうま味調味料が使われていた時代があった
そんな店で、たまたま客が厨房の中を見てしまうと「なんかよくわからん白い粉を、料理に山盛りブチ込んでいる」という異様な光景が目に入ってしまうことになる。
1960年代に入り、こうした状況下のアメリカでは、なぜか「中華料理を食べたら体の痛みや動悸などの症状が出た」と訴える人が出始め、「チャイニーズレストラン・シンドローム(中華料理店症候群)」という名前で医学雑誌に取り上げられるまでになる。その原因として、大量に使われていたとされるうま味調味料が槍玉にあがることになった。
この流れは、NHKが公共放送として商品名が使えないことを理由に捻り出した「化学調味料」という単語と、当時の公害問題による「化学」という単語へのマイナスイメージが加わり、悪印象を強めて宣伝される結果を招いてしまった。
こうした表現による印象の問題については化学調味料の記事も参照。
「味の素」も、初期は一部の製品で石油由来の成分を使用して製造していた時期があり(厳密には石油由来の成分を元にした別の成分という二段階を踏んで食用と同組成のアミノ酸を合成するもの)、「石油から作っている」という批判とイメージ悪化などから現在では製造法を見直すに至る。
…しかし、当のアメリカでは大量のグルタミン酸ナトリウムを摂取させる臨床試験を行っても「中華料理店症候群」の諸症状はまったく再現されることなく、追試を繰り返した2000年代になってやっと、料理に使う量で人間に対する毒性は無いという研究結果が出される。
結局は食品衛生法の基準などに照らしての安全性が認められ、欧米の各機関でも「特に摂取する量を制限する必要はないもの」として扱われている。
しかし、現在でも古い情報をもとにしたり、科学的でない「健康法」の書籍を奉じる向きではたびたび取り上げられ執拗にうま味調味料を批判する人も存在するため、科学的な方面から入るツッコミなどを受けてちょっとしたお騒がせになることもある。
主なうま味調味料
- 味の素(味の素食品)
- ハイミー(味の素食品)
- 「味の素」とは角度を変え、調理過程でうま味を加えることを目的に開発された商品。
- 「味の素」とはグルタミン酸/イノシシ酸/グアニル酸の配合比率が異なり、より加熱調理で真価を発揮するよう調整されている。
- ほんだし(味の素)
- 「出汁の素」等の顆粒出汁の大家で知られる。かつお節を使っているものの酵母系のうま味も添加されていて、製造法としてはうま味調味料に分類される。
- かつお節由来のイノシン酸系。
- いの一番(三菱ライフサイエンス)
- 味の素に次ぐ古株。「味の素」と「ハイミー」の中間のような調合で、製造法の違いからか双方よりも価格帯が一段高い。
- グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の混合系。
- ミック(協和発酵→キリン協和フーズ→三菱ライフサイエンス)
- 野菜系のうま味も混合してある。業務用で1ロットが大きいため個人購入は困難。
- グルタミン酸ナトリウム/リボヌクレオタイドニナトリウム/アスパラギン酸ナトリウム/コハク酸ナトリウムを配合。
- うま味調味料(神戸物産)
- 商標権に該当しない「うま味調味料」という名称で販売している。
- グルタミン酸ナトリウム/核酸の配合を変えて二種類ある。
- フレーブ(ヤマサ醤油株式会社)
- 醤油の大手ヤマサが昆布・かつお節・椎茸などの成分を配合した調味料。
- グルタミン酸ナトリウム/イノシン酸ナトリウム/グアニル酸ナトリウム。
- 贅沢旨味だし(ドン.キホーテ)
- 「ド」の大きな文字のブランドロゴで知られる情熱価格シリーズの商品。ドンキ版だしの素。パック式
- 原料は昆布、椎茸、魚系。
関連タグ
化学調味料:「うま味調味料」の昭和30年代ごろの名称。商標商品名と区別するために公共放送の中で便宜上つけられた名前であったが、商品の機能を正しく表す名称ではなかったため、今では「うま味調味料」という名称で統一されている。
美味しんぼ:日本を代表するグルメ漫画だが、反うま味調味料の立場を取っており、その後のうま味調味料の販売に逆風を起こしている。