甘味料の歴史
古くは蜂蜜や水飴、干した果物、また甘草などの天然由来の資源が甘味料として利用された。砂糖(ショ糖)などの精製された糖は貴重だった。
熱帯原産のサトウキビ由来の砂糖は、ヨーロッパでは輸入品であり大変高価なものだった。ところが、バルバドスなどのカリブ海の島々を占領したイギリス人やフランス人らによって、アフリカから連れてきた奴隷を使ってサトウキビを栽培させる砂糖プランテーションが大々的に展開され、17世紀後半にはヨーロッパにも大量の砂糖が流入し消費されるようになる(砂糖革命)。19世紀後半のヴィクトリア朝イギリスでは砂糖をたっぷり入れたミルクティーをたしなむ習慣が下層階級にも浸透する。このころからヨーロッパ大陸諸国や北米でテンサイ糖も大量生産されるようになった。
現代の清涼飲料水や洋菓子には異性化糖(果糖ブドウ糖液糖、トウモロコシから製造されることからコーンシロップとも呼ばれる)やショ糖が大量に使われており、肥満や虫歯、糖尿病の元凶として問題視される。このうち異性化糖は大量の果糖を含んでいるため、ショ糖以上に糖毒性(糖毒性については糖尿病の記事を参照)が強い。このため、ステビアなどのノンカロリーの天然甘味料、キシリトールやソルビトールといった糖アルコール、スクラロースやアスパルテームなどの人工甘味料が、砂糖や異性化糖の代用として加工食品に多用されるようになった。
主な甘味料
天然甘味料
ほとんどが糖質(炭水化物)に分類される。
- 黒砂糖(精製度の低い砂糖)
- 廃糖蜜(モラセス、今は焼酎や化学調味料の原料などとして利用されることが多い)
- 水飴(ブドウ糖・麦芽糖・デキストリンなどが混合した粘液状の甘味料)
- 蜂蜜(ミツバチが花の蜜を採集し、巣の中で加工、貯蔵したもの)
- メープルシロップ(サトウカエデの樹液を煮詰めたシロップ)
天然資源から精製される甘味料
- 白砂糖・上白糖・グラニュー糖(ショ糖)
- 異性化糖(果糖ブドウ糖液糖。デンプンから製造され菓子や加工食品に多用される)
- オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖など。本来はショ糖やトレハロースのような二糖類も含むが、三糖以上のものを指すことが多い)
- トレハロース(ブドウ糖が二分子結合した糖で、多くの動植物や微生物に含まれている)
糖アルコール
低カロリーで糖毒性が低く虫歯になりにくい甘味料として多用されるが、虫歯予防効果が実証されたのはキシリトールのみである。
- キシリトール(独特の冷涼感がある。虫歯予防を謳った製品に多く配合される)
- ソルビトール(独特の冷涼感を伴う)
- エリスリトール(独特の冷涼感を伴う。糖アルコールで唯一カロリーがゼロである)
- 還元水飴(水飴に水素を結合させて糖アルコール化したもの)
非糖質系甘味料
人工甘味料
全て非糖質系でカロリーは無いが、スクラロースは糖から合成される。
- スクラロース(ショ糖のヒドロキシ基のうち3つを選択的に塩素で置換することによって生産される)
- アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)
- アセスルファムカリウム(熱・酸・酵素に安定的で、水・エタノール・グリセリン・プロピレングリコールの溶液などにもよく溶け、用途が広い)
- サッカリン(発癌性があると考えられ使用禁止になったが、発癌性はないことが分かり、現在は練り歯磨きや九州地方の醤油などに用いられる)
- チクロ/サイクラミン酸塩(アメリカ合衆国で発がん性や催奇形性の疑いが指摘され、日本もそれに倣って使用禁止となった。現在は無害なことが分かっているが、他の甘味料が普及した現在では敢えて使う意味が薄く、日米とも禁止のままである)
- ズルチン(肝機能障害・発癌性などの危険性が認められ、全世界で使用禁止)
- 酢酸鉛(古代ローマ時代から用いられたが、他の鉛化合物と同様、毒性が強い。当然ながら現在は全世界で使用禁止になっている)
関連タグ
甘味処:正しい読みは「あまみどころ」だが、甘味料につられて「かんみどころ」と誤読されがち。