解説
第二次世界大戦中期の1942年に実用化したドイツ軍を代表する重戦車で、一般には「ティーガー」として知られる。
「VI号戦車」の制式呼称が与えられた車輌は「ティーガーⅠ」と「ポルシェティーガー」、「ティーガーⅡ」の3種存在し、前者は特に顕著な活躍を見せたことで、現代に至るまでに最も有名な兵器の一つとなっている。
ティーガーI
詳細はティーガーⅠを参照。
解説
1942年に東部戦線と北アフリカ戦線で実戦投入され、連合軍戦車を強力な8.8cm砲と10cm厚の重装甲で圧倒。
戦場で最も恐るべき存在のひとつとして連合軍の将兵に広く知られ、また以降の米英ソの戦車開発の方針にも多大な影響を与えた。
しかし、同時期の中戦車の倍となる57トンもの車重と複雑な駆動系ゆえ、輸送や保守・整備の難度は従来のドイツ戦車をはるかに上回り、生産・配備数も少なかった。
余談
膨大な車重を支えるため、幅広に作られていたティーガーIの通常の履帯(キャタピラ)は貨車に載せると外縁がはみ出てしまうという問題点を抱えていたため、鉄道輸送時には幅の狭い専用履帯が装備された。
もちろん、戦場まで鉄道で運ばれれば通常の履帯へと換装しなければならないが、この作業には熟練した戦車兵が総掛かりで取り組んでも約25分は要したという。
ちなみに、履帯は1枚あたり約30kg。片側96枚ずつで総計すると約6トンなので、車重の十分の一はこれによって占められていたことがわかる。
派生型
シュトゥルムティーガー
ティーガーIの車体を原型に開発された、38cmロケット推進臼砲を搭載する自走砲。
ポルシェティーガー
詳細はポルシェティーガーを参照。
解説
ティーガーIの2種の試作車輌の一つ。
ヒトラーに支持されていた第三帝国屈指の天才技術者フェルディナント・ポルシェ博士のお抱え企業たるポルシェ社製で、特に問題がなければ採用されるはずだった。
しかし、操縦性の向上こそ望めるものの、大型・大重量かつ複雑なハイブリッド駆動方式(エンジンで発電・モーターで駆動)を採用したポルシェティーガーの信頼性や機動力、不整地走破性はあまりにも劣悪で、改良に手間取るうちに不採用となった。
余談
不採用を通知された時点でポルシェ社は既にポルシェティーガーの生産ラインを確立しており、試作車と量産車を合わせて全100輌が生産された。
このうちの90輌は下記の重駆逐戦車「フェルディナンド」あるいは「エレファント」に改装されて、また1輌は原型を保ったまま指揮戦車として実戦投入され、前者はソ連赤軍の戦車開発方針に影響を及ぼすほどの戦果を挙げた。
派生型
フェルディナンド / エレファント
ポルシェティーガーの車体を流用して開発された、長砲身8.8cm砲を搭載する重駆逐戦車。
ティーガーII
詳細はティーガーⅡを参照。
解説
ティーガーIの後継車輌で、1944年実戦投入。
70トンもの車重のため劣悪となった機動力と引き換えに、当時最高クラスの砲火力・防御力を有していたが、既に連合軍が圧倒的な優勢を確立していた当時、活躍の余地はほとんど残されていなかった。
とはいえ、単純な戦闘能力という面で、ティーガーIIは明らかに大戦中に実戦投入された戦車として最強に近い存在だった。
余談
ティーガーIIは非公式に「ケーニヒスティーガー」(Königstiger:ベンガルトラ)と呼ばれることがあるが、これは米軍呼称「キングタイガー」や英軍呼称「ロイヤルタイガー」をドイツ語に訳したもの。
なお、ソ連赤軍は当初、特徴的な傾斜装甲からティーガーIIをパンターの発展型と解釈、「新型豹戦車」と呼んだという。
派生型
ヤークトティーガー
ティーガーIIの車体を原型に開発された、128mm砲を搭載する重駆逐戦車。