『交換できない』……幸せがあった
こうかんできないしあわせがあった
【警告】
これより先、『ジョジョの奇妙な冒険』第8部「ジョジョリオン」でのジョニィ・ジョースターに関するネタバレが含まれるため注意。
ジョニィ・ジョースターの伝説
大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」終了。
ジョニィは大西洋を渡る船上で、SBRレース準優勝者である東方憲助の娘・理那と出会い、やがて2人は結婚する。ジョニィの騎手としての実力が認められ、さらには息子・ジョージⅢ世と娘も産まれ、彼らは幸せに暮らしていた。
そんなある時、理那は謎の奇病に罹ってしまう。記憶欠如・皮膚の硬化などの呪いじみた症状が現れ、次第に容態は悪化、命に関わる程の状態にまで陥った。ジョニィは理那を彼女の故郷である日本へ帰すことと、もう1つのとある決断を下す。
『一度だけ……』
ジョニィ・ジョースターは
『ただの一度だけ……』と
…そう祈った
すぐに『戻す…』と
ジョニィ・ジョースターは、かつて己も関わった争いの渦中にあった、そしてシェルターに封印した『聖なる遺体』を盗み出した。
すぐさま政府から追手が差し向けられる。それを振り切ったジョニィは、理那を『遺体』のそばへ連れて来る。『遺体』の力で病が治ると考えて……。
だが、『遺体』の力は決して「治す」能力なのではない。「等価交換」して無差別に誰かに「移す」力である。ジョニィはそれを承知していた。承知してなお、妻を救うためならば…という覚悟の下に『遺体』を使用した。
成功。理那は無事に回復した。ジョニィは安堵した。では、病は誰に移ったのか?
意識を取り戻して開口一番、理那は問うた。
「 ジョージはどこ? 」
「 連れて来てるの? 」
ジョニィはたったひとつの単純な、重大なリスクを見落としていた。「交換」された病は、あろうことか愛息子・ジョージに移されていた。
「過ち」への罰だとでもいうのか?ジョニィは絶望の淵にいた。それでもジョージを救うため、彼と『遺体』を抱えてジョニィは馬を走らせる。
「 聖なる遺体を使うのはここまでだ 」
「 ジョージ・ジョースター 」
「 お前に会えてよかった…それだけで…いいんだ… 」
「 それだけで何ものにも替えられない 」
「 『交換できない』……幸せがあった 」
「 等価で交換される 」
「 だが何ものにも交換できない意味もここにはある 」
ジョニィは、ジョージの頭部を『遺体』ごと自身のスタンドで撃ち抜いた。タスクACT4と『遺体』の力により、ACT4の攻撃と病はジョニィに「移された」。その拍子で落馬した所で、降って来た岩に頭部を潰され息絶えた。
1901年11月11日。
ジョニィ・ジョースター、29年の人生であった。
概要
第8部「ジョジョリオン」でのジョニィ・ジョースターの台詞である。
第8部では、キーアイテム『ロカカカの実』や『壁の目』にも共通して「交換」が関連する。本台詞では、万能に見える「交換」でも手に入れられない「何か」について言及している。
余談
ジョニィが亡くなった場所は、その後「ジョースター地蔵」「カツアゲロード」として杜王町の名所となっている。
「ジョースター地蔵」はその場所で死亡した米国人を祀る地として、「カツアゲロード」は奇妙なイチョウが散らばる道として町民に親しまれている。
ジョニィ・ジョースターの本名は「ジョナサン・ジョースター」である。このことなどから、ジョニィは新世界のジョナサンにあたる存在であると目されている。また、両者の妻であるエリナと理那にも名前に共通点がある。
ジョナサンはエリナとの挙式後、船で新婚旅行のため海に出て、その海上でディオの急襲を受ける。彼は妻と彼女のお腹の子、母親を亡くした見ず知らずの赤ん坊を逃して、命と首より下の肉体を奪われてしまう。我が子を、ジョージ見ずしてディオと共に海に沈んだ。
ジョニィはレース終了後の船上で理那と出会い、後に結婚する。平穏に暮らし、ジョージと娘にも会うことが叶った。そして最期に妻と息子を助けるために己に病と攻撃を移し、落石により首から上を失った。
鏡合わせの彼らの運命の、美しさまで感じられる見事な対比に、第8部のジョニィの過去を描いた話は高い人気を得ている。