グリーンランド
ぐりーんらんど
概要
北極海と北大西洋の間にある世界最大の島。面積は217万5000平方kmほどで、日本の国土面積の6倍弱に相当する。世界地図の描き方で一般的なメルカトル図法では、投影法の都合上、極地に近い場所ほど、面積が引き延ばされて描かれるので、地図の上ではオーストラリア大陸に匹敵するような、巨大な島のような印象を受ける。しかし、実際にはグリーンランドはオーストラリア大陸の29%程度の大きさである。
位置は北アメリカ大陸の北、北極海と北大西洋の間、カナダの北東となる。大半が北極圏に位置する。距離としては、ヨーロッパよりもアメリカ大陸に近いが、所属はデンマーク領である。自治政府が置かれている。
大部分が北極圏に属し、全島の約80%以上は氷床と万年雪に覆われる。夏場でも、最低気温は氷点下となる事も珍しくない。地形は平坦だが気候は厳しく、人が住める場所は限られているため、人口はわずか5.6万人である。町は島の西海岸に集中しており、最大の都市ヌークがある。
国民の多数派は先住のグリーンランド人(イヌイット、またはエスキモー)であり、後から入植してきたデンマーク人は1~2割に過ぎない。2009年にデンマーク語は公用語から外され、西グリーンランド語方言が唯一の公用語となった。
歴史
古くから北米方面から人の植民があったとされ、今から4000年前には古エスキモーと呼ばれる人々が住んでいたと見られる。しかし、彼らは厳しい気候からほとんど全滅したと見られる。彼らと現在のグリーンランド人には、遺伝上の関係はなかった事が分かっており、しばらくの間、グリーンランドは無人となっていたとされる。
西暦6世紀頃、シベリアのモンゴロイド系民族がグリーンランドまで居住域を広げた。厳しいシベリアの気候に適応した彼らの生活様式は、グリーンランドでも生き抜くことを可能にした。彼らが現在、イヌイットあるいはエスキモーと呼ばれる人々の祖先である。当初はヨーロッパ人からとも呼ばれた。
西暦10世紀頃、アイスランド在住のヴァイキングがグリーンランドを発見・移住した。グリーンランドという島名は彼らが名付けたもので、当初は「アイスランド」と言われていたが(現在のアイスランドとは無関係)、これは厳しい居住環境を連想させなかなか入植希望者が集まらなかったため、入植者を増やすためにわざと「緑の島」という名前にした、という伝説がある。一方、当時はまだ、まばらながら木が生えているなど、アイスランドと比べると穏やかな気候だったため、グリーンランドと名付けられたとの説もある。
しかし、気候がさらに寒冷化したことで居住地の維持は難しくなり、またイヌイットと土地や食料を巡って争うようになる。結果的に、16世紀までにヴァイキングの定住地は消滅した。こうしてヨーロッパ人たちが全滅する一方、イヌイットたちは厳しい気候でも生き抜いていった。
18世紀にはキリスト教布教などを目的にヨーロッパ人による再上陸が行われデンマーク領となったが、第二次世界大戦中にデンマークがナチスに占領され、アメリカ合衆国に保護された。
そのため独自性が強まり、1953年に植民地から海外郡に昇格。1979年以降は自治領となっている。
1985年にはデンマーク領ながらECから離脱している。
2019年8月、アメリカ合衆国のトランプ大統領がグリーンランドの購入を提案する(日経)。その理由は豊富な資源に加え安全保障上のメリットも挙げている。これに対し自治政府のキム・キールセン首相が拒否、デンマーク本国も「自治領は売り物ではない」と拒否している(BBC)。
政治
長い間デンマークによる植民地支配が続いたが、地理的にも文化的にも離れており、独立を求める声が多い。1979年5月に自治政府が発足し高度な自治権を獲得した。財政的にはデンマーク本国からの援助に頼っているため完全独立はいまだに実現していないが、グリーンランドの地下には中東地域に匹敵する量の原油が存在するとされており、地下資源収入が経済的にグリーンランドを支え、デンマークからのグリーンランド独立が容易になるとも指摘される。
一院制の議会は31人の議員で構成されており、4年に一度住民からの直接選挙で選出され、解散が認められている。
経済
主要産業は漁業とその加工業で、これらのみで輸出の87%を占める。特にエビはその半分以上を占める。日本にもグリーンランド産のエビがスーパーマーケットに並ぶことがある(表記上はデンマーク産とされることが多い)。
交通
最も重要な交通手段は航空機である。船舶による旅客と貨物の輸送は、片道80時間かかる往復路線が週1便あるだけである。沿岸部はフィヨルド、内陸部は氷河で覆われ、島内の都市間を結ぶ陸路はない。