アーバンライナー(Urban Liner)とは、近畿日本鉄道の特急列車(近鉄特急)に用いられる特急形車両の愛称。
概要
この車両が就く名阪甲特急は安定した需要があるので、専用車両が在籍し、検査・故障時以外はこれらのみでの運用となる。
車両は基本的に6連だが、混雑時に8連で運用に就くこともある。
かつて甲特急は「名阪ノンストップ特急」と称されていたが、2012年3月20日付で全ての名阪甲特急が津駅に追加停車することとなり、同日付で「名阪ノンストップ特急」が全廃された。
車両
21000系
1988年ごろに登場した初代「アーバンライナー」。
電動カム軸を使用した抵抗制御車で、6連を基本編成とし、混雑時には2連の増結ユニットを中間に連結して8連で運転される。
青山町付近の急こう配に対応するため、オールMの6連となっている。
車体は普通鋼製で、白を基調とし、オレンジっぽい色がアクセントとして使われている。
先頭部には大型の2枚のパワーウインドウが張られ、ヘッドライトはその上部にビルトインされている。
名古屋寄りの1・2号車の座席を「デラックスシート」、それ以外の座席は「レギュラーシート」と呼ぶ。「デラックスシート」に座るには追加料金が必要。
ドアは折戸式を採用。なかなか古さが際立つ。
車内設備は当初はレギュラーシート・デラックスシートとも簡易リクライニングシートであったが、シートピッチを1,050mmに拡げた上で背もたれと座面の連動を最適化し、本式のリクライニングシートに近い角度まで倒せるよう工夫が施されたシートを採用していた。
先の増結ユニットだが、受け入れる基本編成側も増結ユニット側も運転台を持つ。概観は簡易運転台(駅構内や操車場で入れ替えのために使用する、最低限の設備だけを持った運転台)に見えるが、実は本線走行可能な正規の運転台である。
と、言うのも、名阪ノンストップ復活の機会を与えてくれた国鉄が分割民営化され、JR東海になったことで、運行体形がスマートになり、再び昭和39年の悪夢(東海道新幹線開業で利用比率が近鉄:国鉄で7:3から2:8に大逆転)が再現されるのではないか……という、近鉄のトラウマに触れ、いざとなったら21000系もバラ投入するつもりだったのである。
結果としてそれは杞憂に終わり、バブル崩壊も手伝って名阪ノンストップの利用率は一定を確保し続け、この運転台は本来の目的でしか使われなかった。
2003年から2005年にかけて、老朽化・設備陳腐化のためリニューアル工事が施行され、先頭車の前部の扉を除いてすべて外側式プラグドア化され、喫煙ルームを設置する一方で、全車禁煙とし、21020系同様の内装とした。また、デラックスシート車を1号車の1両のみに減車し、2号車はレギュラーシート車とされた。
すでに全車が工事を完了している。
工事を受けた21000系を「アーバンライナーplus」と呼ぶ。
21020系
「アーバンライナー」の最新車。「アーバンライナーnext」と呼ばれる。
モーターは23000系同様の新幹線並みの230kWモーターで、MT構成は3M3Tで比は1:1となった。
近鉄の特急で4例目となるVVVFインバーター搭載車であり、同じく2例目となるIGBT素子VVVFインバーター搭載車でもある。さらに、三菱製IGBT素子のVVVFインバーター搭載車はこの21020系が初めて。
インバーターの磁励音は他にはあまり例のない独特なもの。
近鉄の特急車で初のHID灯をヘッドライトに採用している。
2号車はレギュラーシートに変更され、デラックスシートは1号車の1両のみとされた。
座席には改良が加えられ、独特な形状をしたいわゆる「ゆりかご形シート」を採用している。全仕切り扉上には液晶モニターを設置。
本系列は21000系の置き換え用ではなく、21000系のリニューアル工事中に不足する本数を補うために造られた車両であるため、製造本数は必要最小限の2編成に留まっている。検査のときは21000系が代走をする。
1編成は名古屋線走行中にトラックに横からぶつけられた。
運用
名阪甲特急の運用が主体なので、比較的よく出会える。大阪難波発着なのがミソで、時刻表にも載るので、「アーバンライナー」に乗りたいだけなら探すのはそう難しくはない。
21000系の「plus」への更新工事が完了してからは「next」が増備された2編成分だけ車両本数に余裕が出来たため、土・休日の夕方に運転される増発分の甲特急(大阪難波発20分台・近鉄名古屋発25分台)を全て「アーバンライナー」で賄えるようになった他、名阪間の主要駅に停まる乙特急の一部の運用にも就くこととなった。
問題は「next」。ほぼ「plus」が占めており、検査のときはそいつが代走するので、充当される列車が少ない。根気よく探そう。