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名称

後述するが、知的財産部という部署が法務事業を執行しているだけで現在の任天堂に法務部という名前の部署は存在しない。

ゆえにこの記事でも正確には知的財産部と表現するべきなのだが、社会通念上、本項で取り上げている部署は法務部として言及されることが非常に多いため便宜上「法務部」と表現する。

概要

世界でも有数の規模を誇る日本ゲーム会社任天堂の法務部門。任天堂は社内構造を公表していないため具体的な情報は不明だが現在は「任天堂知的財産部」という名称の法務部署が存在していることが判明している。そのため「法務部」という部署名は現存していない(※2007年頃の採用情報ページ内での先輩社員紹介の中に知的財産部の男性社員インタビューが掲載されていたので、おそらくこの年の前後に法務部から改名した可能性も示唆されている)。業務内容は主に「知的財産の権利化と維持」「先行する知的財産権の調査」「知財紛争・訴訟」「模倣品対策」であると公表されている。

任天堂法務部がなぜ有名か、それは著作権侵害や特許侵害などの民事訴訟にべらぼうに強いからである。というのも任天堂の収入の大半はゲームハードウェアソフトウェアからくるものである。いわばこの二つは会社の生命線。つまりこれらの存続と密接に関わる著作権や特許などの知的財産には敏感にならねばいけないため強いのではないかと推測されている。その上で事前の準備を万端に整えた上で、勝訴の目がない勝負には出ないようにしていることから、なおさらである。


但し幾ら強いといえど常勝ではなく、時には敗訴になったこともある。しかしそれでも負け必至と言われていた裁判で和解に持ち込む、逆転勝ちなど数々の伝説から「任天堂の最後の切りふだと呼ばれている。


具体的な訴訟例

キングコング裁判

1982年、「ドンキーコングキングコングのパクリじゃねぇか!!」とアメリカ映画会社、ユニバーサルが任天堂を訴えた訴訟。言わずもがなユニバーサルは当時から世界的な大企業。任天堂はアメリカ市場に参戦したとはいえ京都の一中小企業に過ぎなかった(※1)ため、誰もが任天堂の敗訴だと思っていた。

しかし任天堂は「ユニバーサル社がキングコングのリメイク権を持っていなかったこと」、「著作権の保護期間が切れていること」で無実を主張。それだけではなく「ユニバーサルのキングコングのゲームがドンキーコングに酷似している」とユニバーサル側がドンキーコングをパクっていたことを追求

その結果「ユニバーサル側が任天堂に対して160万ドルの賠償金の支払い+任天堂の全訴訟費用の負担」とリアル逆転裁判を成立させ、任天堂が圧勝した。任天堂法務部伝説の始まりである。


なおこの裁判で獅子奮迅の大活躍をして任天堂を勝利へと導いたジョン・カービィ弁護士は任天堂から「ドンキーコングと名付けられた3万ドルのヨット」と「ヨットにドンキーコングと名付けられる世界的な独占権」が与えられた。

また、とあるピンクの悪魔が作られた際、複数あった名前案の中に「カービィ」があり、開発陣はそれを見てカービィ弁護士との繋がりを感じ、その名前に決定したという。

可能性の話であるが、この件がなければ、あのゲームシリーズは違う名前になっていたかもしれない。

※1…訴訟当時、任天堂の名を世界に知らしめることとなるファミリーコンピュータはまだ発売されていなかった

テトリス裁判

1989年、アタリゲームズの子会社であったテンゲン社と任天堂がテトリスの販売権を巡って争った裁判。

テンゲン社は複数の会社を跨いで販売権を手にしたのだが、その権利がIBMパソコン互換機用のみのテトリスの権利であり、家庭用ゲーム機全般の販売権は取れていなかった事が判明。

一方の任天堂側(正確にはBPSの創始者が交渉人として赴いた)は、テトリスの販売権を得るためにわざわざ当時冷戦中だったソ連にまで足を運び、テトリスの著作権を持っていたソ連外国貿易協会(ELORG)から直接手に入れていた。

結果は任天堂の勝訴となった。


ちなみに当時のELORGは権利獲得における交渉の場で初めて「又貸し」の事実を知ったとされ驚いたという。


なお、この裁判でテンゲン社から販売権をもらっていたセガの販売権も無効となり、メガドライブで発売予定だったテトリスの販売も立ち消えとなった。

また、現在ではテトリスの版権等はザ・テトリス・カンパニーが所有している。

ユンゲラー裁判

1999年、超能力者として著名なユリ・ゲラーが「ポケモンユンゲラーは自分のイメージを勝手に盗用している!」として任天堂に賠償金を求めた裁判。

任天堂側は、ユンゲラーはあくまで日本名であり海外版での表記(英語版でのユンゲラーはKadabra)は違うため、ユリ・ゲラーの活動場所(イギリス)では権利侵害に当たらないと主張。結果はユリ・ゲラーの敗訴となった。


この裁判で任天堂側がユリ・ゲラーに対して「ユンゲラーは超能力を使えます。ユンゲラーと自分が似ていると主張するならば、今ここで超能力を使って下さい!」と言い放ち黙らせたという伝説はあまりにも有名である

ところが非常に残念だが、この話は創作であり、事実ではない。


なお任天堂は勝訴はしたのだが、その後ゲラー氏に配慮したのかユンゲラーの露出を自粛するようになった。ポケモンカードシリーズでは20年近くユンゲラーが登場しておらず、アニメ版でもユンゲラーの登場回数は激減した。

裁判から20年を経てゲラー氏は任天堂と和解しており、騒動の発端であるユンゲラーの関連グッズ(フィギュアやポケモンカード)を大事に保管している。

ティアリングサーガ裁判

2001年、ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記の販売差し止めを求めた裁判。


ティアリングサーガはファイアーエムブレムシリーズの生みの親である加賀昭三がファイアーエムブレムシリーズ開発会社のインテリジェントシステムズから独立し制作した作品。

当初はエムブレムサーガというタイトルで、発売は週刊ファミ通の発行元でもあるエンターブレイン。ファミ通の第1報ではファイアーエムブレムシリーズの設定を引き継いだ作品とされており、そのあまりにそのままな内容から任天堂から修正を求められていた作品であった。


その後手直しをしてティアリングサーガとして発売されることになったのだが、訴訟沙汰となる。最終的にはファイアーエムブレムシリーズと酷似するなど著作権侵害については不問となったが、ファミ通でファイアーエムブレムシリーズに触れていたことが不正競争防止法違反と認定され、エンターブレインが任天堂に約7600万円を支払うように命令する判決が確定した。それでも任天堂はこの判決に満足せず、なおも控訴したが敢えなく退けられた。

このことから数少ない任天堂側の敗訴例である(裁判自体は和解で終了)。


マジコン裁判

2009年、任天堂を筆頭としたソフトメーカー54社(※1)と共にマジコン(※2)販売輸入業者5社を訴えた訴訟。著作権法違反ではなく不正競争防止法違反で訴えるという妙案で裁判に臨み、7年に及ぶ裁判の末、裁判所はマジコン業者に約9500万円の支払いを命令する判決が確定。これからの裁判ではこの判決が最高裁の判例として考慮されることとなり、「ゲーム業界全体にとって極めて重要な判決」を勝ち取った。


余談だが、ここから数年前に任天堂のライバル会社であるSCEが複数のソフトメーカーと共にゲームソフトの中古品店に対し「我々のゲームソフトを無断で廉価販売している」として訴訟しているが、此方は残念ながら敗訴に終わっており、ゲームソフトメーカーを引き連れても内容と法務部の質次第では必ずしも勝訴出来るとは限らないと言う事例になっている。


※1…バンダイナムコスクエニカプコンセガレベルファイブなど、そうそうたるメンツが揃っている。

※2…正式名称「マジックコンピュータ」。データを入れて使えば製品版のソフトを買わなくても安価にゲームができる機器。要するに割れソフト。

ニンテンドー3DS立体視裁判

2011年に元ソニーの技術者が3DSの立体視技術は特許を侵害していると訴えた裁判。

一旦は特許侵害が認定され賠償金やロイヤリティーの支払いが命じられたが、2014年にこれらの判決は破棄され任天堂の勝訴が確定した。

Wiiリモコンのモーション技術裁判

2014年にオランダのフィリップス社が、Wiiリモコンのモーション技術の一部が特許を侵害しているとして、イギリスなどで任天堂を相手に訴訟を起こす。

同年6月にイギリスの裁判所は任天堂の特許侵害を認める判決を出し、同年12月に和解が成立する。

お互いの特許をお互いの会社が使えるとしたクロスライセンスを結ぶことで和解したものの、任天堂がフィリップス社の特許を侵害をしたという事実は覆らなかったため、事実上の敗訴であった。

マリカー裁判

2017年にマリオカートに出てくる車や衣装をレンタルする株式会社マリカーを著作権法、不正競争防止法違反で訴えた裁判。著作権侵害は認められず、第一審ではマリカー側に1000万円の支払いが命じられた。ただマリカー側も調子に乗って控訴。その結果第二審では5000万円の支払いが命じられた。2020年12月に任天堂の勝訴が確定。同時に「任天堂法務部」がTwitterでトレンド入りを果たした。

コロプラ裁判

2017年に、スマホゲーム白猫プロジェクトに登場する「ぷにコン」等を始めとするコロプラのゲーム技術特許が任天堂の特許を侵害しているとして「白猫プロジェクト」の配信停止、賠償金44億円の支払いを求めた裁判。

任天堂はゲーム技術の特許使用に関しては基本的に「黙認」のスタイルをとっていたのだが、コロプラは任天堂の特許を盗用して特許登録した挙句他社から特許料まで徴収していたため、激怒した任天堂が法務部を出動させたという。

以前からコロプラの特許運用は問題視されており、中でも最たるものはVRゲームをほとんど作っていない癖にVR関連技術は片っ端から特許登録していることであり、これのせいで他社はコロプラに特許料を払わないとVRゲームを作れないという状況に陥っていた。VR業界の発展はコロプラのせいで停滞したと指摘されている。


そしてこの裁判はニュースで取り上げられた2018年1月から長らく続き、答弁の中では任天堂側や裁判所から「時間稼ぎすんじゃねぇ(意訳)」という回答が出たり、2021年2月には提訴後の時間経過を理由に賠償金を49億5000万円に増額させる。同年4月には更に50億円近く引き上げた96億9000万円にまで引き上げ…これやっぱ任天堂怒ってるだろ。と思いきや、なんと4月の増額は裁判所が提案したものらしい。コロプラに未来はあるのか、注目が集まっていた。

2021年8月4日に特許権侵害訴訟の和解成立のお知らせが掲載、コロプラが任天堂に対し、任天堂の特許についての今後のライセンスを含めた和解金総額33億円を支払い、任天堂が訴えを取り下げることで和解に合意したと両社が発表、コロプラは事実上、特許侵害を認めた形となった。なお、白猫プロジェクト自体のサービスは継続されるものの、和解金で33億円という金額は日本の特許侵害の裁判では類を見ない高額である。


なお、33億円を支払ったから和解という単純なものではないらしく、任天堂とコロプラのIR文書では互いに「守秘義務の関係で和解理由は公表できない」としており、任天堂が持つ7つの特許が争点となっていた事のみである。その為、つり上がった和解金96億9000万円の約三分の一に減額に至った上の和解と見る向きもある。また、33億円を支払った事を公表したのはコロプラ側のみであり、守秘義務に反するのではないかと思う人もいるが、これはコロプラ側の株主に対して33億円の損失があった事を公表する必要がある為であり問題はない。


この一件をゲームクリエイターの岡本吉起は自身のYouTubeチャンネルにおいて、あちこちからの情報筋から聞いた情報を元に私見として「久々に業界を震え上がらせる出来事だったんではないか」と、ゲーム会社は各々自社の特許を保有している事を前提としてコロプラは虎の尾を踏んだような事をしたと述べている。

英国違法ROM配布サイト裁判

2021年、ニンテンドースイッチのROMを無償配布するサイトに対して、任天堂が高等法院衡平法部(英国の裁判所)に訴え、プロバイダに対してインターネット接続遮断命令を下した。

pixivでは

任天堂法務部に目をつけられそうな作品にタグがつけられていることがある。

いわば夢の国チキンレースのような扱い。

関連タグ

任天堂 司法 弁護士 ユンゲラー リアルチート

逆転裁判※ゲームの版元は任天堂ではなくカプコン

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