概要
日本最古の歴史書であり、上・中・下の3巻より成る。成立は元明天皇の和銅5年(ちなみに平成24年は古事記編纂1300年にあたる)。
元明天皇の命により、天才的な記憶能力の持ち主・稗田阿礼が暗記していた『帝紀』『旧辞』といった書物の内容を、太安万侶が書き写した物である(なお、先述の書物は両者とも現存しない)。
『古事記』がカバーしているのは推古天皇までで、その時代以前は編纂当時からは「古事」と考えられていた(地続きではない「古い」時代と見られていた)ようである。
前半は物事が詳細に記されているが、後半になるにつれ記述が簡素になってゆく。
歴史書としては、同時代に日本書紀も記されている。古事記と類似した記述が見受けられるが、所々記述が異なっている。
古事記は国内向けに、日本書紀は海外向けに、それぞれ朝廷の権威を示すため書かれたものだと言われている。ただし古事記には、天皇家の祖先のお世辞にも立派とは言い難いエピソードも多く描かれている(皇祖神である天照大神の外道な一面も包み隠さず記述しているし、雄略天皇のように暴君であった旨がはっきり書かれている天皇もある)。これは、安万侶が伝承をねじ曲げてまで皇室の権威を美化することは避け、当時知れ渡っていた伝承をそのまま採用したためかもしれない。
内容
神話と聞くと「神様の話だから、幻想的で美しい話が多いんじゃないの?」というイメージを持つ人も多いと思うが、他国の神話と同様に、生臭い話や下世話な話(日本最古のSEXの記述が登場するのも古事記である)も意外と多い。神々のふるまいは良く言えばおおらかで感情豊か、悪く言えば粗暴で直情的なものが目立ち、極めて人間臭い。
古事記には、ギリシャ神話や南方の伝承と類似した描写が存在する(イザナキの黄泉国訪問、因幡の白兎など)。つまり、下地となった話の一部は、シルクロードや海を経てもたらされたものであることが分かる。
神話は古い昔のことを口から口へと伝えてきたものなので、現在の科学的合理的見地から見れば、不合理に見えることが多いのだが、その中に古代以来の日本人の理想があふれており、感情がみなぎっている。
オオクニヌシの伝承が、創生伝承らしいのだが、当時の大人の事情が錯綜しまくった果てに、当時ど田舎のど辺境で伝えられていたイザナギイザナミの2柱による国生みが採用されたらしい。ただ原典は
「昔々 イザナギ イザナミという2柱の兄妹神が日がな一日せっくすをしていたので、おぢいさまに呪われて」
という、けしからん内容を含むため、その辺が編集でカットされたらしい。
古事記に関する書籍は数多く存在するので、詳しい内容・注釈は各自で読んでほしい。
題材とした作品
関連イラスト
pixivにおいては、もる氏が古事記を漫画化している。非常に分かりやすく、楽しく読めるように描写されているので、興味を持った方は是非参照されたい。