「LRT」は「Light Rail Transit:軽量軌道交通」の略称。
シンガポールの交通機関である「Light Rapid Transit:軽量高速交通」の略称と同じであるため混同されやすい。
概要
LRTは「電車や地下鉄よりも一回り小さいが、バスよりも大きな輸送力を持つ交通機関」を指す。
報道などで「次世代型路面電車」として紹介されることが多いが、路面電車はLRTの使い方の一つに過ぎずLRT自体は高架や地下も走ることができ、走行速度も速いため「LRT=次世代型路面電車」という認識は正しいものではない(絶対的に間違ってもいないのでややこしい…)。
要するに、LRTが必ずしも路面電車である必要はないということである。LRTに使用される鉄道車両のことをLRV(Light Rail Vehicle)と呼ぶ。
電車や地下鉄と比べて建設コストが低いのに加えて「中心部を地下or高架、郊外を路面走行」というように運用の幅が広いため、現在注目されている交通機関のひとつである。
類似のシステムとしてはドイツの各都市で運行されている「シュタットバーン(都市間鉄道)」や、オランダで運行されている「シュネルトラム(急行路面電車)」などが存在している。
当時の西ドイツでは1970年代以降、モータリゼーションに対抗すべく都市部での路面電車の活用に力を入れており、デュッセルドルフやドルトムントなどでこれらの路面電車をシュタットバーンとして再構築した。
アメリカにおけるLRTは、おそらくこれらの事例を参考にしたものと思われる。
なお、LRTという言葉そのものは1970年代にアメリカで生まれたものである。
導入事例
路面電車
LRTを使用した路面電車。
LRTと聞いて我々が真っ先に連想するのはこの形態である。
日本のものでは、JR富山港線を転換して開業した「富山ライトレール」が有名。富山市では、このほか富山地方鉄道上滝線のLRT化も検討されている。
なお、類似事例として江ノ島電鉄や広島電鉄が引き合いに出されることが多い(ただし、江ノ島電鉄は法規上は普通鉄道である)ほか、長野電鉄長野線長野市域や静岡鉄道静岡清水線なども車両規格や設備は完全に鉄道であるが、運行形態の特徴などからLRTに類する路線と見られる場合がある。
準高速電車タイプの路面電車、または併用軌道に乗り入れる郊外鉄道線
LRTという概念が提唱されたアメリカやカナダではこのタイプが多い。
また、ドイツの「シュタットバーン」やオランダの「シュネルトラム」も類似のシステムであるといえる。
一般の鉄道、または全線専用軌道
一般の鉄道においても、条件さえ見合っていればLRTの一種として捉えることが出来る。
たとえば東急池上線や静岡鉄道などは、駅間距離が短く、小編成で高頻度運転を実施しているなどLRT的な側面が強い。
トランジットモール
自家用車の通行が制限されている歩車共存道路。フランスのストラスブールのものが有名。
高架鉄道
高架を走行するLRT。フィリピンのマニラ(ライト・ラピッド・トランジット)、イギリスのロンドン(ドックランズ・ライトレール=DLR)など。
小型車を用いて自動運転を行うタイプも多い。
地下鉄
地下を走行するLRT。この場合、中心部のみ地下化する場合が多い。
フランスのルーアンのものが有名。このタイプのLRTは「ライトメトロ」とも呼ばれる。
また、都市中心部のみを地下化した例では先述したドイツのシュタットバーンの一部(ドルトムントなど)がこの方式をとっており、
これらは「プレメトロ」あるいは「路下電車」などとも呼ばれる。