大威徳明王とは、仏教の神仏の一尊である。
概説
梵名をヤマンターカ【यमान्तक:yamaantaka】といい、「夜摩を殺す者」の意味を持つ。
そのため「降閻魔尊」とも呼ばれ、閻魔(夜摩天)を超える存在とされる。
六面六臂六足と、明王の中でも際立った異形の持ち主で、水牛に跨っている。
特に多面多腕は仏教の尊像に数あるが、多脚まで変化が及ぶのはこの明王ぐらいである。
手には宝棒(棍棒)、戟、弓と矢、剣、宝輪を携える。宝棒は大威徳明王の象徴として特筆されるものに挙げられている。
その六面で六道輪廻をくまなく見渡し、輪廻の巡りを妨げる悪魔を降伏して輪廻を清浄に保つことを役割とする。
また手に持った数々の武器で物的や悪魔を威嚇して仏法を守り、六足の姿を以て六波羅蜜(仏教修行者が達成すべき「布施、自戒、忍辱、精進、禅定、智慧」の六つの修行)を怠ることなく続けていく決意を示している。
阿弥陀如来・文殊菩薩を本地とし、この二尊が人々を教化するために変化した姿だとされる。
チベット仏教における大威徳明王
チベット仏教では特に重要視される尊格であり、ときに怒れる神仏たちの筆頭に挙げられるほど。
ある説話では、悟りを開く直前まで達した僧侶が、盗賊に飼っていた水牛諸共殺され、その怨念から牛頭の悪鬼として蘇り、盗賊はおろか、周辺の住民まで虐殺の限りを尽くした。困り果てた人々は文殊菩薩に救いを求めると、文殊菩薩は九面三十四臂十六足の牛頭の夜叉(魔神)に変化し、悪鬼を打ち倒して僧侶の魂を救ったという。
この姿が「ヤマンターカ」として語られている。
なお夜叉が明王となった場合、角が取れるのが通例であるが、このヤマンターカは中核となる角のある水牛の頭がそのまま付いている。
御真言
オン シュチリ キャラロハ ウン ケン ソワカ