古屋兎丸による日本の漫画作品。2008年より『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)にて連載された。単行本全3巻。
十字軍遠征が盛んに行われていた13世紀のヨーロッパで、実際にあった少年十字軍運動を題材にしている。
ストーリー
1212年、フランス北部の田舎町。
神に選ばれし子・エティエンヌは、12人の仲間と共に「少年十字軍」を結成し、聖地エルサレムを目指し旅だった。
希望に胸を躍らせ行進する彼らに、次々に襲いかかる過酷な試練。
ユーゴ率いるテンプル騎士団と合流し、旅路は順調かに見えていたが、
様々な思惑が交錯し、いつしか破滅の音が響き始める。
過酷な旅の果てに、待ち受けていた一つの"奇跡"とは――。
主要人物
12歳。母親と2人で暮らす羊飼いの少年。信心深く、人一倍天候に敏感で、彼の予報はよく当たると町では評判だった。争い事を好まぬ心優しい少年で、不思議な喇叭を手にしたことをきっかけに、少年十字軍のシンボルとして崇められるようになる。
モデルは実際にフランス少年十字軍を指揮した少年・エティエンヌ。
12歳。養豚場を営む叔父と暮らす。エティエンヌの親友で、彼とはちょくちょく一緒に遊ぶ。
両親は既に亡くなっているが、父が十字軍の一人として従軍し、異教徒に殺害された事から、異教徒を激しく恨んでいる。また十字軍や騎士に憧憬を抱いる。
モデルは実際にドイツ少年十字軍のリーダーだった青年・ニコラス。
14歳。一見すると女性にも見える美少年。口調は女っぽい。
商人の家に生まれたので無学の子が多い十字軍の中でも貴重な修学者。
十字軍では経理担当。
10歳。エティエンヌ、ニコラの友人。泣き虫で気弱な性格。
十字軍では副隊長に任命される。しかし十字軍結成後は、剣術に長け男らしいギーを模範として強くなることを目指し、一方的ながらライバル視するようになる。
14歳。エティエンヌ、ニコラの友人。常に笑顔を絶やさない快活な性格の少年。
十字軍では第一参謀に任命され、旗手も務める。
13歳。エティエンヌ、ニコラの友人。明るい性格で場を和ませるのが特技。レオナルド人形(イタリア製)というパペットを常に持ち歩き、腹話術で彼と軽快な漫才を見せる。
アンリ、ルークと行動を共にすることが多く、十字軍では第二参謀に任命される。
12歳。町でも権力者にあたる領主の息子で、親の威光を笠に着て威張る嫌味な性格。その為アンリ達には嫌われており、気性の荒いニコラとは度々喧嘩になる。エティエンヌの奇跡をきっかけに「名誉を掴むチャンスだ」と父親にせっつかれ、十字軍に参加する。
11歳。ギヨーム同様金持ちの家の子で、常に彼の後を付いて回る腰巾着。彼もまた嫌な性格の持ち主。
12歳。町で一番愛くるしい少年だったが、ハンセン病に冒され今では町中から腫れ物扱いされるようになってしまった。病気の平癒を神に祈る為にエルサレムへ向かう。
11歳の双子の兄弟。当時横行していた双子の迷信に惑わされた心無い人々の噂によって、母親が自殺してしまった暗い過去を持つ。そんな母の為に祈り、神の力で母を天国へ行けるようにしてもらうのが二人の願い。
テレパシー能力を持ち、この能力を生かして連絡を取り合ったり、旅を経るうちに長蛇の列となった隊を整理する役割を担うことになる。
兄のロランは弟思いの社交的な性格の少年で他のメンバーともすぐ打ち解けた。
一方弟のリリアンはしっかり者の兄に対して劣等感を抱いており、兄と一緒くたに見られることを嫌う。
12歳。シトー修道会に属する少年修道士。会の修道士達が告解の時に役立つだろうということで隊に同行させた。精神遅滞の気があり、舌足らずな喋り方だが、隊のメンバーの誰よりも神の教えの真髄を理解している。また声が美しく歌を歌うのが得意。
14歳。エティエンヌの町を襲撃した盗賊団の一員で、金の為なら人殺しも厭わない冷酷さを持つ。盗賊達が追い払われた後、一人捕らえられた彼は町中で曝し者にされてしまう。
しかし可哀想に思ったエティエンヌによって解放され、十字軍の一員に加わる。彼が聖地へ赴く理由はないが、自分を認めてくれた仲間達の為に命をかけようとする、仲間思いで義理人情に篤い一面が発覚する。元盗賊だけあって軍の中では最も武器の扱いに慣れている。