概要
イギリス軍が第二次世界大戦中に実戦投入したビックリドッキリ兵器の一つ。
重さ5tの巨大な航空爆弾である。
通常爆弾では破壊不可能な目標や、地下基地を破壊するために開発された。いわゆるバンカーバスターの先駆けである。
後継作として全重量10tの「グランドスラム」がある。ドン! さらに倍!
開発
開発者はミョーな兵器を考えつくことに定評のあったバーンズ・ウォーリス。
「一発で敵の兵器工場を破壊できる爆弾」として、爆発の威力で地震が起きる(爆発で起こした"人工地震"で施設を破壊する)ほどの巨大な爆弾が必要という結論に至った結果がコレ。
(より正確には、地中での大爆発によってクレーターを竅ち、さらに周囲の建造物をクレーターの崩落とともに破壊する、という目論見だった)
ちなみに本来は10t爆弾にする計画だったが、当時の爆撃機ではそんなお馬鹿(褒め言葉)なシロモノを積めるなんて夢のまた夢だったので5tに縮小した。
つまり、後継作の「グランドスラム」はある意味で「トールボーイ完全版」とも言える存在である。
逸話
- あまりに重すぎて落とすだけで(空気抵抗に打ち勝って)音速を超える。
- しかし、その際に音の壁にぶち当たって目標から大きくずれてしまう…という事態も多発した。これを克服するために後期型(と、次回作のグランドスラム)では、尾翼の形状を工夫して落下の際の風圧で自転させ、ライフル銃のライフリングの要領で爆弾を安定させている。
- 重すぎて搭載機であるランカスターには改造が必要となる。
- しかも改造してもトールボーイ自体が重すぎて、予定高度である4万フィート(約12000m)に到達できなかった。
- 一発あたりのお値段も非常に高価なため、作戦中止になっても捨てずにお持ち帰りすることになっていた。
戦歴(ティルピッツ撃沈)
トールボーイのもっとも有名な戦歴はドイツ戦艦・ティルピッツを撃沈した“パラヴェーン作戦”、および“カテキズム作戦”だろう。
ノルウェーのフィヨルドに身を潜めたティルピッツに対し、ソ連領内の基地から発進したランカスター爆撃機が2度に渡ってトールボーイによる空襲を敢行。それまでミゼット潜水艦や空母艦載機による攻撃に耐え抜いてきたティルピッツに、遂に止めを刺した。
命中したトールボーイのうち1発は、ティルピッツの砲塔、船底を突き抜け、海中で爆発してティルピッツの船体を押し上げたという。
結果、ティルピッツは“航空爆弾だけで撃沈された戦艦”という不名誉な記録を残してしまったが、ティルピッツの肩を持つまでもなく、相手が悪かったとしか言いようがない。