エルシャドール・ミドラーシュとは、遊戯王OCGに登場する闇属性・魔法使い族の効果モンスターである。
概要
第9期ブースター第一弾「THE DUELIST ADVENT」で久々に登場した融合モンスター。
相手の効果で破壊されない耐性と、お互いの特殊召喚を抑制する効果、墓地に送られた場合に「シャドール」と名の付いた魔法・罠カードを1枚回収する効果を持つ。
融合素材は比較的緩いため「超融合」で相手の闇属性モンスターを利用できるほか、レベルが5なので「簡易融合」で呼び出すこともできる。
なお、破壊耐性は相手の効果に対してのみであるため簡易融合では自壊してしまう。実質ライフをコストにサルベージを行うカードと割り切ったり、The Tyrant NEPTUNEのアドバンス召喚するための種にしてそこそこの攻撃力と強力な効果を引き継がせるなど、使い切りになってしまう場合でも活用法は色々ある。
効果だけでなくイラストも目を引く。
というのも、ドラゴンに搭乗している人形の姿が「ガスタの巫女ウィンダ」に酷似しており、また杖の形状や各種ステータスなどが、ウィンダが「ガスタ・ガルト」に搭乗した姿である「ダイガスタ・ガルドス」と共通しているためである。
なお、下のドラゴンは「風竜星‐ホロウ」の影が人形として投影されたものと思われる(罠カード「堕ち影の蠢き」にそれらしきシーンが描かれている)。
シャドールモンスターの特徴として水晶体パーツに接続された「影糸」があるのだが、ドラゴンにはあるのに少女の人形には無いため、「エルシャドール・ネフィリム」と同じ様に他のシャドールとは違う存在とも見て取れる。
後に、搭乗者にもしっかりと影糸の繋がれた「エルシャドール・ウェンディゴ」が登場したことがこの説の有力さに拍車をかけている。
海外名は「El Shaddoll Winda」となっており、ウィンダであることを一切隠していない(「ガスタの巫女ウィンダ」の海外名は「Winda, Priestess of Gusto」となっている)。
しかし、少女の人形の間接部は金色のリングで構成されているため、人ではなく人形である事は違いないようである。
カード効果
融合・効果モンスター
星5/闇属性/魔法使い族/攻2200/守 800
「シャドール」モンスター+闇属性モンスター
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
(1):このカードは相手の効果では破壊されない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
その間はお互いに1ターンに1度しかモンスターを特殊召喚できない。
(3):このカードが墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
あ た ま が お か し い
ある程度遊戯王を理解しているプレイヤーなら皆そういう感想を抱くと思われる。
明らかに一行か二行くらい余計な言葉が入っている。
まず一つ目の効果は単純な破壊耐性。相手の物限定とはいえ、激流葬やブラックホールといったストレートな破壊効果は勿論、奈落の落とし穴のように破壊した後除外するカードであっても効果を受けない。勿論手札に戻す効果や直接除外したり墓地に送るといったものは受ける。
また戦闘破壊耐性はなく攻撃力も上級モンスターの平均レベルであるため、戦闘破壊するのは容易である。がしかし、こちらも次の効果である程度対策している。
その二つ目の効果はお互いに影響する特殊召喚制限。回数が1回に制限されるため、複数の特殊召喚を経由してフィールドに並べるシンクロ召喚やエクシーズ召喚が非常に行いにくくなる。この効果はミドラーシュを特殊召喚した瞬間から適応されるため、このカードを出したプレイヤーがそれまでに何回特殊召喚していようが関係ない。極端な話この直前に出す側のフィールドに何もない状態から4体のシンクロモンスターやエクシーズモンスターを並べていようと、後一回特殊召喚できる。
この特殊召喚抑制によって大型モンスターの出現を抑えることで、効果破壊限定の自身の耐性を疑似的とはいえより強固な物にし、この手のシステムモンスターにありがちな脆さを自身の耐性によって盤石なものにする。つまりこの時点で単体で搭載可能なロックカードとしては完成している。
そして三つ目の効果はエルシャドールの融合モンスターにおける共通効果である。どのような方法でも、例えば溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムにリリースされようが効果は発動する。この効果で影依融合をサルベージしてしまえばもう一度シャドールの融合モンスターを出せてしまうという優れもの。おわりが見えない。
簡単に出せて雑に強い。単体としては完成されているのにアフターケアまでばっちり。「デュエリスト・アドベント」はペンデュラム召喚やカードフォーマットの刷新など新しい要素が目白押しであるが、正直そういった細々以上にインフレ極まる9期の来訪を決闘者達に叩きつけたカードと言っても過言ではない。
対策としては、効果の無効化や裏守備強制による特殊制限効果の解除の他、守備力が並の下級クラスしかないのを突くのもアリ。
他にも、アドバンス召喚や上級モンスターを軸にしたペンデュラム召喚、儀式召喚や融合召喚などの1回以内の特殊召喚で高攻撃力のモンスターを出せる方法であれば戦闘破壊という形で突破できる。
強制脱出装置などの破壊以外で除去可能なカードを仕込んでおくのも有効な手段と言える。
シャドール以前のシンクロ・エクシーズを軸にしたカテゴリのデッキでは、このカードを突破する手段をテーマ内で持ち合わせてない事が多く、汎用カード以外だと「出されただけで詰み」なデッキも少なくない。
以降のテーマには同時期に新規で登場したペンデュラム召喚を含めて、限定的なものを含めて何らかの突破手段をテーマ内で持っていることが多い。
例
- テラナイト:「星因子リゲル」(効果で自身の攻撃力を2400まで上げられる。)
- 竜星:相手ターンのシンクロ召喚を行う効果の他、魔竜星トウテツ(攻撃力2200)を共通効果でリクルート出来る。
- RR(レイド・ラプターズ):「RR-インペイル・レイニアス」(効果でミドラーシュを守備表示にし、そのまま戦闘破壊出来る。)
シャドール自身は融合召喚のカテゴリなので特に突破には困らない。それどころか全盛期では超融合でミドラーシュごと融合すると言う方法でも処理できた。
シャドールとシャドールの対決では相手のシャドール2体でエルシャドールを特殊召喚なんて事はしょっちゅうであるし、返しにそのエルシャドールが吸われてエルシャドールが出てくるなんて事もありまさに泥沼試合である。
エクストラデッキでの対処が非常に困難なこのカードの登場と、その猛威を存分に奮うシャドールというデッキの台頭により、「邪帝ガイウス」などメインデッキに搭載できる高攻撃力カードが見直されるなど、良くも悪くも環境に与えたインパクトは絶大であった。
しかし、その強力なロック効果から2014年10月1日リミットレギュレーションで制限カード行き。
その半年後の2015年4月1日に制限解除となったが、代わりにデッキ全体の主力にしてエンジンだったエルシャドール・ネフィリムが禁止カードとなってしまった。
これにより、純正の【シャドール】というデッキは環境からほぼ撤退し、代わりに様々なテーマと混成した状態で上位デッキの喉首を狙っていくようになる。
ストーリー
シャドールを始めとする9期前半に搭乗した各種テーマは、その背景のつながりから「9期DTテーマ」等と呼ばれることがある。
これは、該当するテーマ、あるいはその関連カードがかつての「デュエルターミナル」のストーリーの後日談を示すものであるためだが、ミドラーシュはそのストーリーの中でもかなりのキーパーソン、見方によってはメインヒロインともとれるかなり重要なポジションに立っている。
ザ・デュエリスト・アドベント
過去のモンスターを模し、エルシャドール・ネフィリムに率いられる形で出現した”影依の軍勢”「シャドール」であったが、その中の一人、「ガスタの巫女 ウィンダ」に酷似した「ミドラーシュ」は一人特異な雰囲気を放ち、そして「何かを探している」ようであった。
ネクスト・チャレンジャーズ
他のシャドールが、かつての”星の騎士団”「セイクリッド」の流れを組む「テラナイト」や「竜星」らなどと激突する中、ミドラーシュは独自に行動を開始。古き忌まわしきものが封じられていると伝えられる「ナチュルの神星樹」にアクセスする。
「ガスタの神裔 ピリカ」らが見守る中、ミドラーシュのアクセスの結果か、あるいは何かの手違いか。神星樹より現れたのは、封じられていた再星兵器「クリフォート」であった。
ザ・シークレット・オブ・エボリューション
次々と変形し、煉獄を展開するクリフォートの軍勢。
その内の一、醜悪なる「クリフォート・ツール」によってミドラーシュは真空管に囚われてしまう。
「魂写しの同化」によって「クリフォート・ツール」に囚われたミドラーシュが描かれており、これがカードイラストとしての今のところ最後の登場である。
9期DTストーリー自体が「インフェルノイド・ティエラによる世界滅亡」で実質打ち切り状態なのもあり、決闘者達は今か今かと続編を待ち望んでいる。