解説
通常民主主義においてメディアは政府の政策を監視・検証するのが仕事であり、もし、政策に疑問の余地があれば、それをただすのもジャーナリズムの仕事であろう。
2016年2月現在、政権は安倍晋三を内閣総理大臣とする安倍政権であり、無論彼および彼らも例外なく批判にさらされている。
しかし、それも無理からぬことであろう。
現在、安倍政権の経済政策はいわゆる「三本の矢」に象徴される財政出動を主とするものである。
1.日本銀行は国債を買うことにより円を市場に流出させて円安へと誘導し、人工的に株高とする。
2.民主党政権が凍結した公共事業を再開する。
3.三本目の矢を発動しようとしているが、その政策の全容ははっきりとせず、発動される気配もない。
そればかりか、日本銀行は、現在「マイナス金利」政策を実行中である。これは銀行が日本銀行に資金を預けた場合、金利を逆に日本銀行に支払わねばならないというものである。この政策の狙いは資金を市場に流通させて、市民の購買意欲を高めようというものだが、労働者の賃金低迷や不正規雇用の増大による労働者の身分保障に不安があることから、効果のほどは不透明であるといわざるをえない。
以上のように、安倍政権の経済政策は行き詰っており、財政健全化を目指す「プライマリーバランス」がいつ黒字化するのか不透明である。
その一方で、2015年5月に『全保障関連11法』に関する議論は『日本国憲法』第9条第2項において規定された「戦争の放棄」に反するものとして、多くの憲法学者に憲法違反の烙印を押されるありさまであった。
この法律の可決に先立って安倍晋三首相は、アメリカ議会で行った演説においていまだ法案の骨子が明らかになっていないにもかかわらず日本の議会に諮ることなく『安全保障関連法』の成立を約束し、立法府である国会を軽視する姿勢を明らかにした。
また、報道に対する政権の姿勢も批判の的とならざるを得ない。
2014年1月25日、NHk会長に安倍首相と懇意であるといわれる籾井勝人氏が就任したが、籾井氏は就任にあたって「政府が右といえば、左というわけにはいかない」、「慰安婦は日本軍だけが行ったわけではなく、ヨーロッパでも行われた」などと発言、ジャーナリズムに反する発言であることから撤回に追い込まれたが、現在も籾井氏の資質は論議の的となっている。
また、NHk経営委員に選出された百田尚樹氏は2014年の「東京都知事選挙」において「田母神俊雄氏以外の候補者は人間のクズ」と発言したほか、経営委員辞任後に行われた「自民党若手議員の勉強会において「沖縄の新聞二紙はつぶさなくてはならない」、「沖縄のどこかが中国に占領されたら目が覚めるんじゃないか」と発言したあげく、釈明と称して「本当は毎日新聞と朝日新聞がつぶれたほうがいい」と逆切れするありさまである。
さらに政府自民党は政治的中立を守らせると称してNHkとテレビ朝日の幹部を党本部に呼び出して圧力をかけた末、2016年3月8日、高市早苗総務大臣は『電波法』第4条の規定により「政治的中立を守らねば、割り当てられた電波を止める」と恫喝、しかしながら『電波法』にそのような規定はないことから、政権の高圧的な政治姿勢は欧米のメディアからも批判の的となっている。