第87回米アカデミー賞長編アニメーション賞受賞
概要
MARVELのアメリカン・コミックス『BIG HERO 6』を下敷きにしつつ、舞台や登場人物の設定を大幅に変更している。新たなスーパーヒーローチームの誕生譚であると同時に、少年とロボットの友情ストーリーでもある。
舞台となる「サンフランソウキョウ(奏京)」が持つ独特のビジュアルも魅力。
監督はドン・ホールとクリス・ウィリアムズ。製作総指揮にジョン・ラセター。
アニメーション・チーフのパトリック・オズボーンは、同時上映の短編アニメーション『愛犬とごちそう(原題:Feast)』で監督を務めている。
あらすじ
舞台はサンフランシスコと東京をミックスしたような《サンフランソウキョウ》。
幼くして両親を亡くしたヒロ・ハマダは、兄のタダシ、叔母のキャスとともに暮らしていた。14歳のヒロは、タダシ同様に抜きん出た科学の才能を持つものの、勉強することに意義を見出せず、非合法のロボットファイトに入れ込むようになっていた。そんなヒロを見かねたタダシは、ヒロを自分の通う工科大学へ連れていく。兄の研究仲間や著名な教授・ロバートに出会ったことで科学魂に火の付いたヒロは、入学試験代わりの研究発表のため《マイクロボット》の制作に没頭する。
完成した《マイクロボット》はプレゼンテーションで絶賛され、見事にヒロは合格を言い渡される。しかしその直後、火災に見舞われた会場は爆発し、ロバート教授と彼を助けに向かったタダシが犠牲となった。
ふさぎこんだヒロは大学にも行かず、部屋に閉じこもる。ある日、タダシが生前に開発していたケアロボット《ベイマックス》が作動し、「ヒロの心と体の健康を守る」と言ってつきまとうようになる。
一方、残ったマイクロボットの一片が何かに反応していたのがヒロには気がかりだった。ヒロがベイマックスとともに反応を追うと、そこでは火災で消失したはずのマイクロボットが謎の仮面の男によって秘密裏に量産されていた。
タダシの死に不穏なものを感じたヒロは、真相を追うためベイマックスを戦闘用にバージョンアップ。心配して駆けつけた大学の仲間たちも、仮面の男を追い詰めようと自らの研究を活かして専用スーツを開発していく。やがてかれらは打ち捨てられた研究施設へと行き着くのだが――。
登場人物
主人公の14歳の少年。飛び級で高校を卒業した天才だが、それゆえ勉強に意義を見出せなくなり、夜な夜なロボットファイトで荒稼ぎをしていた。タダシに大学を紹介されたことで研究開発への意欲を高め、マイクロボットを開発する。タダシの事故死に疑問を抱き、ベイマックスと共に調査へ乗り出す。
タダシが開発していたケアロボット。白くもちもちとしたボディが特徴的で、エアマットのような抱き心地。高度なスキャン機能を有した心と体を治療するケアロボットであり、戦闘手段は持たない。後にヒロによって空手の技と赤いアーマーを与えられる。
ヒロの兄で大学生。優れた科学力を持つ、《ベイマックス》の生みの親。賭博行為に手を染める弟を案じて大学を紹介し、ヒロの「試験」もサポートする。試験会場で起こった火災からロバート教授を助けようとして事故死してしまう。
- キャス (CV:マーヤ・ルドルフ/菅野美穂)
ヒロとタダシの叔母で、育ての親。カフェを経営している。甥っ子たちを大事に思っているが、ヒロのやんちゃには頭を悩ませている。タダシの死にショックを受けつつも、ヒロを支えようと気丈に振舞う。
- ワサビ (CV:デイモン・ウェイアンズ・Jr./武田幸史)
工科大学で研究をしているタダシの仲間。大柄な黒人青年。見た目は屈強そうだが神経症の持ち主で、非常時でも几帳面。レーザー誘起プラズマを研究しており、レーザーブレードを発明する。一度服にワサビを落としただけでこのあだ名に。
- ハニー・レモン (CV:ジェネシス・ロドリゲス/山根舞)
工科大学で研究をしているタダシの仲間。金髪、眼鏡、モデル体型。優しく前向きでいつもハッピー。様々な化学反応を起こす塗料を研究しており、その手にかかればタングステンも粉々。
- ゴー・ゴー (CV:ジェイミー・チャン/浅野真澄)
工科大学で研究をしているタダシの仲間。黒髪に紫のメッシュを入れた女ヤンキーのような人物。とっつきにくい雰囲気だが友人思い。運動神経抜群で、車の運転はかなり過激。研究対象は電磁サスペンション。
- フレッド (CV:T・J・ミラー/新田英人)
工科大学でマスコットをしているタダシの仲間。本名はフレデリック。ほとんど着ぐるみ姿の怪獣オタク。フランクな性格で、仲間内でのあだ名はフレッドが付けた。豪邸暮らしの金持ち。看板回しの名手でもある。
- ヒースクリフ (CV:デイビット・ショーネシー/こねり翔)
フレッドの家の執事。何事にも動じない超一流の使用人。
- ロバート・キャラハン教授 (CV:ジェームズ・クロムウェル/金田明夫)
サンフランソウキョウ工科大学で教鞭を取る、タダシの指導教授。ロボット工学の第一人者として多くの人から尊敬を集めており、彼の研究にはヒロも多大な影響を受けた。クレイが科学技術を「利益優先」で扱う姿勢を批判している。
- アリステア・クレイ (CV:アラン・テュディック/森田順平)
大企業「クレイテック」の社長。試験会場に現れ、ヒロの発明したマイクロボットを買い取ろうとする。商才はあるがモラルに欠ける言動も目立つ人物。
- ミスターヤマ (CV:ポール・ブリッグス/立木文彦)
ヤクザのボス。
エピソード0/マガジン版
ディズニーとしては異例の公認印が押されたマンガ化作品。作者は上野春樹。
『エピソード0』では、映画の前日譚とされる話が描かれている(ネタバレ無し。チラシなどでは「これを読むとベイマックスがもっと楽しめる」と紹介された)。
マガジン版本編では、ストーリーや設定などが一部異なっている(キャスが叔母ではなく母親になっている等)。
こちらの記事(ネタバレ注意)でマガジン版の役割についての考察が取り上げられているので興味がある人は見てみよう。
余談
2015年のディズニーエキスポにて、サンフランソウキョウのモデルである2国、日本のゲーム会社スクウェア・エニックスとアメリカのディズニーのコラボレーションゲーム「キングダムハーツ3」での参戦が発表された。参戦決定の世界としては塔の上のラプンツェル、ヘラクレスについで3番目となる。
コンセプト・アートにおいて主人公のソラを乗せ、黒いベイマックスと戦うベイマックスの姿が確認でき、インタビューによると当ゲームにおいて本編終了後の物語を描くという。
この黒いベイマックスの正体は、作中でヒロを救うためにポータルに取り残される事を選んだベイマックス1号機が闇に染まった(ハートレス化した)ものである。