グレイズ・アイン
ぐれいずあいん
概要
ギャラルホルンがグレイズ・フレームをベースとして秘密裏に開発していた阿頼耶識システム研究用の実験機。
あくまでシステムを研究する為の機体であり、公的機関であるギャラルホルンが阿頼耶識システムを使用する事は出来ず、そしてそれを扱える正規パイロットも組織内部に居なかった事もあって長らく研究施設に於いて開発途中で放置されていた。
元来、ギャラルホルンは厄祭戦の原因となった機械化思想の象徴である阿頼耶識システム等の有機デバイスシステムを禁忌と謳っていたが、彼らもまたその有用性故にシステムを手放す事が出来ず、秘密裏に研究を継続していた。その末に開発されたこの機体はギャラルホルンの負の象徴とも言え、そこに目を付けたマクギリス・ファリドに組織の権威を失墜させる手段として利用された。
パイロットはアイン・ダルトン。地球軌道上での鉄華団との戦闘に於いて重傷を負い、最新の再生医療技術を以ってしても完全な回復が見込めないと言い渡されるが、彼の回復を願ったガエリオ・ボードウィンの決断で阿頼耶識システムを施術され、損傷したシュヴァルベ・グレイズに代わり本機に搭乗する事になった。
しかし、この際アインは自身の生命維持と阿頼耶識システムの性能向上を目的に機体に直結させられており、結果として機体そのものがアインの第二の身体として機能するようになる。
機体とパイロットの一体化を前提に開発されていた機体であり、高感度阿頼耶識システムでパイロットの思考を機体にダイレクトに反映させる事で機体を生身の身体のように扱う事が可能。
結果、戦闘に於いては既存のモビルスーツとは次元を異にする反応速度と挙動の自由度を誇り、阿頼耶識を単純なインターフェースとして用いる以上にパイロットの思考を機体にダイレクトに反映させ高い戦闘能力を発揮する。
その際、生々しいまでの生物的挙動は敵パイロットに生理的嫌悪感すら抱かせるが、一方でパイロットの精神に異常をきたすなどの弊害も生み出している。
機体は胴体フレームやリアクター、頭部センサー等にベースとなったグレイズの名残を見る事が出来るものの、頭部センサーは阿頼耶識とリンクし微細な挙動を見せる事があり、また四肢フレームは一体化したパイロットの脳が機体を自身の身体と自覚しやすい構造に変更され、戦闘兵器として洗練されていた他のグレイズバリエーションとは大きく異なるシルエットを持つ(逆説的に解けば、これ程までに極端な改修を許容出来るグレイズ・フレームの拡張性の高さを物語る例の一つであると言える)。
機体サイズはフレームの延長によって20m超と一般的なモビルスーツよりも巨大化し、異貌とも言えるフォルムを持つ機体として完成しているが、伸びた手足の影響からかシルエット自体は何処かスリムな印象も与える。
また、装備する武装は射撃兵装なども併用する事が多かったグレイズやシュヴァルベ・グレイズとは違い、対モビルスーツ戦に特化した格闘兵装を多数搭載。機体性能と阿頼耶識システム、そしてアインの執念が融合した結果、鉄華団を屠る為のハンティング・マシーンと化した。
エドモントンでの戦闘に於いて、ガエリオの乗るガンダム・キマリストルーパーと共に戦線に投入され、流星号や漏影を撃破するなどその性能を遺憾なく発揮し、三日月・オーガスのガンダム・バルバトスをも追い詰めたが、三日月が阿頼耶識システムのリミッターを解除した為に形勢を逆転され、撃破された。
機体データ
型式番号 | EB-AX2 |
---|---|
全高 | 22.2m |
本体重量 | 38.6t |
動力源 | エイハブ・リアクター |
武装 |
|
パイロット | アイン・ダルトン |
武装
専用大型アックス
グレイズ・アインの主兵装。
グレイズのバトルアックスをベースとした対モビルスーツ戦用装備だが、グレイズ・アインのパワーと腕部ストロークを活かす為にバトルアックス以上のサイズと刃渡りを持つ。
強化された腕部出力もあってグレイズ・アインはこれを二振り装備し、それぞれ片腕で振るう事が出来る。
なお、非使用時にはバックパックにマウントされるが、そのマウント部はシュヴァルベ・グレイズのフライトユニットが流用されている。
パイルバンカー
腕部に装備されたパイルバンカー。主にマニピュレーターで敵を押さえ付けた後の一撃として用いられる。
モビルスーツの装甲を貫通するだけの貫通力を持ち、その衝撃力はナノラミネートアーマーを突き破る程。戦闘に於いてはガンダム・バルバトスのレンチメイスを最も強度のある先端部から破砕して見せた。
使い捨ての兵装であり、使用後はユニットごとパージされる。
肩部格納式40㎜機関銃
肩部コンテナユニットに搭載された機銃。グレイズ・アイン唯一の射撃兵装。
格納式とはいえ展開・照準・発砲のプロセスが非常にスムーズで、阿頼耶識システムの恩恵もあって命中精度も高い。
機体本体とは可動式のアームで接続されており、その性質上射角は広く、対人・対モビルワーカー用に使用される他、敵の砲撃を撃ち落とす為にも用いられる。
ドリルキック
人機一体からなる挙動の柔軟さを格闘戦で活かす為、脚部には爪状の接地部分をコーン型に変形・高速回転させる事で蹴りに掘削機能を追加する機構が備わっている。
その高速回転と突き出されるように放たれた蹴りのエネルギーから来る一撃は敵の装甲を抉り、更に内部構造すらも破壊する。また、フレームが延長されている事もあってリーチに優れ、その有用性の高さを示した。
スクリューパンチ
ドリルキック同様にマニピュレーターを高速回転させて敵を殴りつける格闘用装備。
グレイズの構造を踏襲しながらも格闘用に設計されたマニピュレータは、スクリューパンチ使用時に関節がロックされる機構が備わっているが、モビルスーツにとってデリケートな部位でもある為、これが使われるのは武器を全て喪失した後であると言える。
余談
コロコロコミックで情報が公開された際に、「全身凶器」「ガンダム史上最も残虐なラスボス」などの宣伝文句で紹介され、作中で披露したギミックもあって印象的な活躍を見せた。
一方、同時期に映像化した「機動戦士ガンダムサンダーボルト」のサイコ・ザクとは共通点の多さもあって比較される事が多く、パイロットの置かれた立場や機体との一体化の度合い、装備する武装の傾向の違いなどが特に話題に挙がる。