解説
ムーンレィス(月面居住民)の女王ディアナ・ソレルの意向により、地球帰還作戦に備えて結成された市民軍。
ムーンレィスの一般市民から志願制で集めた人員で構成されており、武門の出の者のみで構成されているムーンレィスの正規軍・ギンガナム艦隊とは完全に独立した組織であり、ディアナの私兵軍としての性質が強い。
組織構成や階級制度も現実の軍隊に近い体制を採用し、また、指揮系統や保有兵器などは独自のものを運用している。
ディアナが地球帰還作戦に正規軍であるギンガナム艦隊ではなく市民軍であるディアナ・カウンターを率いたのは、ギンガナム艦隊を引き連れて地球帰還作戦を行うことの危険性を憂慮し、その影響力を排除して地球側に「侵略の意図はない」ということを少しでも示すという意向があったため。
ディアナ本人はディアナ・カウンターを帰還民の護衛と入植地の治安維持を司る軍警察のような形でのみ機能させるつもりだった。
しかし、このことはギンガナム艦隊総司令ギム・ギンガナムのプライドと忠誠心を大いに傷つけることとなり、彼が地球帰還作戦に反対するアグリッパ・メンテナー一派と手を組む一因となってしまった。
ただ、だからといって徹底した武闘派路線を主張するタカ派中のタカ派であるギンガナム達を地球に連れてくれば、それはそれで碌なことにならないのは火を見るより明らかだったため、ディアナの判断が間違っていたとも一概には言い難い。
ディアナ・カウンターの目的が「地球への移住」であり、自然や居住地の破壊、戦火の拡大で資源の枯渇や採掘に不備が生じる事そのものには消極的であり、それ故に大規模な戦闘態勢に至らなかった要因である。
志願制で集められた人員故に女王への忠誠心は非常に高く、特権意識に凝り固まって一般市民に傲慢に振る舞う武門の将兵らへの不満もあって、「自分たちこそ月の正規軍」という気概に溢れた者が多い。
しかし、元が軍人ではないために軍規の徹底や報連相が至らぬ面があり、現場が命令より個人の判断で動いてしまう事が少なくない。また、文明が遅れている地球人を野蛮人と見下して差別する者や、ディアナに対する忠誠心が強すぎて急進的な考え方を持つ武闘派も多かった。
その一方で、地球側も戦端を開いたイングレッサ領民や周辺の人々を除けばヘイト感情が強くならずに現地で個人間で親交を持ったり、祭りの時などは敵味方関係なく歓迎し、楽しむなど、地球全体で見れば全くの対立状態にあった訳ではない。
作中の経緯
アメリア大陸イングレッサ領主グエン・サード・ラインフォードと二年間にわたり交渉を続けていたが、一向に話し合いが進まない為に痺れを切らし、強引に地球へ降下を開始。
しかし、ディアナ・カウンターの先発隊に過剰反応を起こして混乱したイングレッサ・ミリシャの航空部隊が攻撃を開始し、これにポゥ・エイジの乗るウォドムが反撃してしまったため、月と地球の戦争の戦端が開かれてしまった。
それでも当初は地球側との和平交渉の場を設けて話し合いをしようとしたが、その席で穏健派であった最高指揮官アジ大佐が、最初の戦闘に巻き込まれて親族を喪ったイルの長老によって殺害されてしまい、交渉は破談。アジ大佐の死後は武闘派の先鋒であるフィル大尉が事実上の指揮官となったために強行路線に転じる。
遅れて地球に降りたディアナはなんとか穏便に事態収拾することを図り、グエンも月と地球の親交のために何度かパーティーを開催するも、彼らの意向を無視するミリシャの強硬派がディアナ・カウンターへの攻撃を止めず、さらにアグリッパ一派のテロも加わって事態はますます泥沼化していく。
その後、戦争が長期化したことで食糧不足に陥り、技術者たちが地球側に脱走して寝返る事態に発展、兵達も地球の民間人から食料強奪を行うようになるなど軍としての規律も乱れ始める。この事態に危機感を覚えたディアナは平和的解決を主張し続けるが、それを軟弱と考えたフィルらは鬱積した不満を爆発させ、クーデターを起こして実権を奪取した。
ディアナ達が月へ飛び立っている間は戦況にさしたる進展も無く膠着状態になっていたが、月からやってきたギンガナム艦隊と彼らと手を組んだイングレッサ・ミリシャの攻撃により、大混乱に陥る。
だが、ディアナの再びの帰還にフィルらが改心して帰順したことでようやく統制が立て直され、リリ・ボルジャーノの働きかけで団結した他領のミリシャと共にギンガナム艦隊との決戦に臨んだ。