半導体メモリを使用した大容量記憶装置のこと。特にフラッシュメモリが使用されるFlash SSDのことをいう(フラッシュメモリ以外のものについてはRAMディスクなどがある)。
概要
2000年代後半以降、フラッシュメモリの価格が低下したため、HDDと比較して少ない容量であればハードディスクドライブのような使用ができるようになり、高速かつ低消費電力、耐衝撃性の高い大容量記憶装置として一般化した。名称はSolid State Disk(またはDrive)」を略したもの。物理的にはディスクではないが、ディスクメディアの代用であるためこのように表記される。
構造
概略的にはハードディスクの磁気記録部を基板に実装されたフラッシュメモリに置き換えたもの。通常、インターフェースはハードディスクと同じ規格(現在の主流はシリアルATA)を使用しているが、より高速なPCI Express接続のものや、M.2、SFF-8639のように、Flash SSDに特化したインターフェースも登場している。
また、ノートPC用にはExpressCardバス接続のものもある。
用語
シリアルATA
従来のATA規格では光速や電気的長さの誤差を無視できない程短くなった信号間隔や高速化に伴う信号同士の干渉によって速度向上が困難になってきた為、シリアル通信にして信号線を減らし、差動伝送により干渉や外来ノイズの耐性を強化した規格。信号線が減った分は伝送速度を大幅に上げることにより、従来のATA規格を超える高速化を実現している。
PCI Express
シリアルATAと同様に信号の伝送を差動伝送+シリアル通信化して伝送速度を大幅に上げて通信速度を上げた規格。シリアルATAがHDDや光学ディスクなどストレージデバイス用の規格であるのに対し、PCI Expressは拡張バスであるPCIバスの後継規格として登場。必要な転送レートに応じ、レーンと呼ばれる伝送線路の束が複数用意でき、レーン数に応じ×1、×4、×8、×16とある。
ExpressCard
PCカードバスの後継規格として登場。PCI Express×1とUSB2.0をベースに構成されている。ちなみに、読みは同じだがこれとは異なる。
これらの規格は従来の規格と物理的な接続の互換性を持っていないが、ソフトウェア面での互換性はできる限り保つように作られている。
特徴
利点
- アクセスが高速(特定条件下を除く)
- 省電力(近年の高性能モデルではその限りではなくなりつつあり、メーカー側もあまりアピールしなくなっている)
- 衝撃に強い
- 機械的動作部分がないため騒音がでない。
- HDDに比べ形状の自由度が高い
欠点
- 容量の割に非常に高価(※)
- 激しい書き込み処理をすることで記録情報の配置換えが多発しアクセス速度が徐々に低下する
- 書き込み回数制限がある。
- 記憶寿命が短い(メーカー保障値は大抵10年)
- HDDと異なり故障時にデータの復旧がし辛く、犯罪にSSD内蔵PCが用いられた場合、捜査の手を煩わせるため事件解決が遠のく(そもそも一般人が関わる話ではないが)。
- (特に小型の)高性能モデルにおける発熱とそれによる一時的な速度低下(それでもHDDより遥かに早いが)
※・・・ここ最近価格が急落しているため以前ほど高嶺の花ではなくなり、特にノートパソコンにおいてはよく使われている。(ただし、容量あたりの単価はハードディスクよりまだまだ高価なことには変わりない)
トレードオフとなる要素
素子の記憶方式 | 容量 | 価格 | 速度 | 信頼性 | 寿命 |
---|---|---|---|---|---|
単一レベル(SLC) | 少ない | 高価 | 高速 | 高い | 長い |
複数レベル(MLC) | 多い | 安い | 低速 | 低い | 短い |
SLC(Single Level Cell):1素子に対し1段階の記録をする。1bit/セル。
MLC(Multi Level Cell):1素子に対し複数段階の記録をする。2bit/セルのものが採用されることが多いが、3bit/セル(TLCと呼ばれることもある)のものも採用され始めている。
用途
原理上の最適または不向きな用途
省電力、耐衝撃性の高さなどからネットブック用のHDD代替、書き換えは少ないが、静粛性が求められる音楽データ用ストレージ、OSのインストール先といった用途に向いている。
逆に大容量を求められ、頻繁な書き換えアクセスのあるデータベース用のコンピュータ、同じく動画編集にはその欠点から不向きである。
最近の動向
intelやSamsung、ウェスタンデジタル(東芝・Sandisk)など一流メーカー品については一般家庭用途や一般事務用途であればデータアクセスなどの耐久性については実用に耐えうる性能に達している。
近年ではSamsungを筆頭に容量辺りのコストパフォーマンスと耐久性に優れた3D-NANDを搭載した製品が発売されており、ゲーム機等比較的アクセスが激しい機器でも長期に渡って安定したパフォーマンスを維持できる製品が増えてきている。
だが、SSDに限らず他の記憶装置や記憶媒体でもそうであるが変にケチると痛い目にあうことは言うまでもない。失われたデータは二度と戻ってこないので、信頼できるものを信頼できるところから購入するべきであることは変わりない。
SSDのうち一般的なものと異なるもの
業務用途において頻繁なアクセスのあるデータの格納にDRAMを使ったSSDがある。RAMディスクの利点を取りアクセス速度はフラッシュメモリを使用したSSDに比べはるかに高速であり書き込み回数制限もないが、揮発性メモリなので電源が途絶えるとデータが消失してしまう。そのため電源は多重化されており、また装置内のハードディスクに周期的なバックアップが行われデータ消失に備えている。
代用品
組み込み用途ではPC用ストレージ規格から派生したコンパクトフラッシュやCFastが使われたり、安価な代用SSDとしてマルチメディアカードを組み込み専用にしたeMMCが使われている。