概要
将棋における代表的かつ初歩的な禁じ手のひとつである。
将棋では、相手の取った駒を自分の駒として参加させることができる。
そのときに、自分の歩兵(ふひょう)がある筋(たての列)に打ってはいけないのである。
初歩的とはいえれっきとした反則行為であるため、原則的に打った瞬間負け確定である(あくまで遊戯としての対戦や初心者相手の練習などであれば、双方の合意や相手に指導した上で手を戻して無かったことにすることもあるが、基本的には問答無用で負けとなる)。
二歩は第三者や対局相手、指した本人の誰かが気づいて指摘することができ、指摘されて二歩だと確認された時点で二歩を打った側の負けとなる。
ただし、逆を言えば誰からも指摘されなければ(=誰からも気付かれなければ)反則扱いとはならないため、二歩を打ったまま勝負を続行し、そのまま相手が投了した場合、二歩を打った側(つまり反則した側)が勝者として扱われる(将棋の世界ではバレなかった反則よりも投了のほうが優先されるため)。
とはいえ、二歩は非常にわかりやすい禁じ手であり、ある程度オフィシャルな勝負ともなると審判や第三者の見物人が付くのが常である上、発覚した時点で即座に負けとなるリスクもあるため、故意に二歩を用いた反則勝ちは極めて困難といえる。
将棋ゲームなどでも反則負けが忠実に再現されている作品であればこちらも負けとなるが、作品によっては「そこには打てません」と指摘され、二歩自体が不可能なゲームも多い。
このような性質上、二歩は「初心者がよくやるミス」と見做されがちだが、初歩的ゆえに非常に発生しやすい禁じ手であるため、百戦錬磨のプロの世界でも時折発生することがあり、これにより負けたことがあるプロ棋士も少なからず存在する。
前述の通り、二歩は故意にやるにはリスクが大きすぎる禁じ手であるため、プロ同士対局における二歩による反則負けの大半はうっかりミスによる打ち間違いが原因である。
二歩に至る要因はいくつかあるが、多いのは「防戦時、自陣近くで追い詰められて焦っている時に、敵陣近くに置いていた歩に気付かずに二歩を打ってしまう」とか、逆に「敵陣を攻めている際、熱くなり過ぎたり勝ちを焦った結果、自陣近くに置いていた歩に気付かずに(以下同文)」といった性質のものが多いが、「取った敵の駒(持ち駒)を使うために駒台から持ち駒を取った際、駒を持ち間違えて歩を持ってしまい、そのまま打って即座に敗北」という、いささか間の抜けたミスもある。
いずれの二歩も勝負が白熱したり、持ち時間が少なくなってきたことによる焦燥感から視野が狭くなり、盤上全体を冷静に見渡せなくなったり、持ち駒をきちんと把握できなくなったことに起因すると思われるケースが少なくないため、二歩による反則負けを防ぐためにも焦りは禁物である。
二歩の反則負けにならない例
・と金(歩がなった駒)がある筋に歩を打った。
・二歩と気づかずにゲームが進み、ゲーム終了後に二歩が存在したことに気づいた。
二歩の反則負けになる例
・と金があっても、自分の歩がある筋に歩を打った。
・ゲームの途中で、二歩の状態を見つけた。
チェスの世界では
チェスの世界にもポーンという将棋の歩に相当するチェス駒が存在するが、こちらは二歩となっても反則ではないため問題ない。
しかし、ポーンは歩とは動き方が異なるため、二歩に相当する状態は守りにくく不利であるとされている。