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重力子(粒子)の編集履歴

2019-05-04 18:29:14 バージョン

重力子(粒子)

じゅうりょくし

重力子とは、仮説上の素粒子の1つ。標準模型の枠組みには存在しない、重力相互作用を媒介するとされるゲージ粒子である。

概要

重力子 (Graviton) は未発見の素粒子であり、標準模型には唯一登場しない基本相互作用重力相互作用を媒介すると予測される仮説上のゲージ粒子である。日本語では時に英名をカタカナ転写したグラビトンとも呼ばれる。予測される性質は、スピン2のボース粒子であり、質量電荷はいずれもゼロの安定粒子と予測されている。


名称重力子
記号G
組成素粒子
粒子統計ボース粒子
グループゲージ粒子
電磁相互作用作用しない
弱い相互作用作用しない
強い相互作用作用しない
重力相互作用媒介する
質量0 (6×10^-32 eV/c^2以下)
平均寿命安定
スピン2
フレーバー量子数無し
電荷0
色荷持たない
反粒子自分自身
超対称性粒子グラビティーノ (G~)
理論化 / 発見1930年代 / 未発見

歴史

1915年に重力に関する新しい理論である一般相対性理論アルベルト・アインシュタインによって提唱された後、既に1916年にはアインシュタイン自身が、量子効果による一般相対性理論の修正が必要な事を指摘している。数学的に整備された量子力学が登場するのは1927年であり、レオン・ローゼンフィールドによって始めて量子重力理論の構築が試みられたのは1930年代前半になってからである。1934年、ドミトリー・ブロヒンフェツとF. ガリペリンによって "Graviton" という言葉が初めて使用された。


特徴

重力子は未発見の為、その性質は全て予測である。


重力子は、素粒子の基本的な枠組みである標準模型には登場しない。登場するのは量子重力理論においてであるが、これは特定の1つの理論を指す名称ではなく、超重力理論超弦理論ループ量子重力理論カルツァ=クライン理論M理論など、重力と量子力学の統合理論として研究されているいくつかの候補に対する総称である。また理論によっては重力のゲージ粒子は1つに収まらず、グラビティーノディラトンといった他のゲージ粒子やスカラー粒子が登場する場合もある。


理論的には、重力は光速で無限大に伝播すると推定されている為、重力子の質量はゼロである。現在の実験的測定では、重力子の質量は6×10^-32eV/c^2以下である。また電荷、色荷、弱アイソスピンも持たない。


予測されるスピンは2であり、標準理論では現れない特性である。仮にスピン2の素粒子が発見された場合、その素粒子が媒介する相互作用は重力と区別が出来ないという理論上の性質から、それは重力子であるという証拠となる。


問題点

他の3つの基本相互作用は全て標準模型で説明され、対応するゲージ粒子も発見されている。この為重力相互作用もまたゲージ粒子が存在すると考えるのは自然であるが、実際の所複数の問題を抱えており、話は単純ではない。


量子力学ではよくある事であるが、相互作用について理論を単純に適用して方程式から計算を行うと、計算結果が無限大となってしまう問題が存在する。当然ながら実際に観測される相互作用は無限大ではなく有限の値を取る。例えば強い相互作用について考えると、グルーオンがそのゲージ粒子である。一方でグルーオン同士もまた強い相互作用をする為、更に媒介するグルーオンが必要で…と、必要なグルーオンの数と、合計の強い相互作用が無限大になってしまう。この矛盾を防ぐために、量子力学では「繰り込み」と呼ばれる手法が行われる。値の打ち消しが行われ、無限大を防ぐ手法で、数学的な物ではあるが、理論と実態が整合し、繰り込み自体にも矛盾はない。しかしながら重力相互作用では、この繰り込みの手法が使えず、無限大を打ち消せない事がわかっている。


また、重力は他の基本相互作用とは異なり、ゲージ粒子を媒介するものではないかもしれない事が示唆されている。一般相対性理論では、重力は時空の歪みの結果現れるものと説明される為、これをゲージ粒子のやり取りとして解釈する量子力学とは性質が全く異なり、組み込む事は出来ないという説もある。


現状

重力は私たちが身近に感じている基本相互作用ではあるが、4つの基本相互作用の中で最も弱く、同じ距離では強い相互作用より40桁、電磁相互作用より38桁、弱い相互作用より15桁も弱い。この為、基本相互作用として広く認められているにも関わらず、量子力学のスケールではほぼゼロに等しく、その存在は無視されており、研究においても重力相互作用の補正はされる事がない。


フリーマン・ダイソンは、重力子が仮に存在したとしても、本当に検出できるかどうかを疑問視している。トニー・ロスマンは思考実験を行い、もし強い重力場である中性子星の周りに、木星質量と同じ、100%の効率で確実に検出できる検出器を配置したとしても、重力子の検出イベントは10年に1度と推定している。もちろんこのような検出器は現代の技術は設置不可能であり、現代はもちろん近い将来に重力子を検出する検出器を作り出すのは不可能と言う事と同義である。更に、重力子より遥かに多い検出イベントであるニュートリノが無数に存在し、これらとの区別は不可能であると言う事も問題である。ニュートリノと通常の物質との相互作用は非常に弱く、ニュートリノを遮蔽するシールドを構築しようにも、それはブラックホールへと重力崩壊してしまう為、設置は不可能である。


2015年に初めて観測された重力波は、直接重力子の検出とはならないが、重力子の何らかの物理的な情報を提供する可能性がある。これは光子がレーザーとなるような状況と似ている。


関連項目

素粒子 素粒子擬人化 ゲージ粒子

重力 重力相互作用 重力場 重力波

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