概要
ウラル語族フィン・ウゴル語派のフィン・ペルム諸語のフィン・ラップ諸語に属すバルト・フィン諸語の一種。主にスオミ人が使用する。
膠着語の一つとしても有名で、15格を有する。また同じバルト・フィン諸語にはエストニア語、サーミ語、カレリア語などが挙げられる。
約600万人の人々が同言語を話し、その内の93%がフィンランド国内の人々である。フィンランド共和国のうちオーランド諸島と一部の地域ではスウェーデン語を用いている。(※スオミ語とスウェーデン語を併用する事もある。)フィンランド国外の使用者は、冬戦争・継続戦争で失ったロシア連邦カレリア共和国に多く話者はおよそ7万人とされる。表記はラテン文字である。
スオミ語は言わずもがなウラル語族であるため、スウェーデン語やロシア語、ドイツ語、英語などのインド・ヨーロッパ語族とは大きく異なる。
文字
アーッコセット文字は A~Z までの26文字に Ä、Ö を加えた全28文字だが、B・C・F・Q・W・X・Z はほとんど使用されない。シャ行を表す Š が使用されることもある。尚、特殊文字が表記できないワープロソフトの場合、ドイツ語やスウェーデン語では、ä を ae と表記する事もあるが、スオミ語においては ää のように連続して同じ母音が使用されることがあるので、このような措置は採られず、aaと表記して、単語や母音調和で読む時に判断するそうだ。
文法
名詞の曲用
スオミ語の名詞や形容詞は格変化(曲用)する。格変化とは、例えば日本語で「家」という語に「家で」、「家から」、「家へ」などと助詞を付けるのと同じように、格語尾と呼ばれるものを単語の後ろに付けることだと考えられる。
母音調和とは、あるグループの母音と別のグループの母音は同じ語の中に現れることが出来ないという法則である。例えば Ä と A は別のグループに属するので、スオミ語には tämä(これ)という単語はあるが、tamä という単語は存在しない。また子音階程交替とは、名詞や動詞が変化する時に単語の中の k・t・p という3つの文字の関連する音が変化をする現象である。
動詞の活用
スオミ語では動詞の後に主語を表す人称語尾が付く。動詞の形としては現在形、現在完了形、過去形、過去完了形、条件法現在形、条件法完了形、可能法現在形、可能法完了形に1~3人称までの単数・複数で6個ずつ形が存在する。その他受動態現在、受動態過去、受動態現在完了、受動態過去完了、受動態の条件法現在、受動態の条件法完了、受動態の可能法現在、受動態の可能法完了、命令形、第一不定詞長形、第二不定詞、第三不定詞、第四不定詞、現在分詞、過去分詞、行為者分詞、動名詞があり、英語のbe動詞に当たるolen, olet, on,などとの組み合わせも一つの形として数えた場合、全て併せると1つの動詞に100以上の変化形があることになる。
発音
スオミ語においては、日本語にはない母音があるので注意が必要である。
母音
"u" は、日本語の「う」よりももっと唇を円くして、尖らせて発音する。
"y" は、"i" の舌の位置のまま、唇の形を "u" にして発音する。
"ö" は、"e" の舌の位置のまま、唇の形を "o" にして発音する。
日本語の「あ」は "ä" と "a" の区別をしていないものなので注意が必要である。"ä" は、唇を若干横長にした「あ」である。それに対し、"a" は、アメリカ英語の "hot" の "o" に近く、唇を縦長に大きく開け、さらに舌面を下方に押し下げて「あ」と発音する。
スオミ語の母音は上の8つの短母音と、それを全て長母音化した8つの長母音、そして異なる短母音を2つ以上組み合わせた重母音が全てである。長母音は、短母音字を2つ続け書きして表す:ii, ee, uu, yy, oo, öö, ää, aa。スオミ語では、母音の長短が意味の区別に大きく影響する。
子音
スオミ語の子音文字の発音は、おおむねそれと同じ字形の国際音声字母の示す音を表す。
"-nk-" は [ŋk] 、"-ng-" は [ŋŋ] と発音される。
"ts" は必ず語中に現れ、[tʦ] と発音される([ʦ] とはならないことに注意)。
"š" は外来語にのみ使用され、[ʃ] の音を表す。しかし外来音であるために [s] で発音されることが多く、また表記にも反映され、"sh" または "s" で書き換えられることも多い。
"j" はドイツ語やスウェーデン語などと同じく、日本語の「や行」の子音 [j] をあらわす。英語の「ヂュ」やフランス語の「ジュ」の子音のような発音は基本的にはしない。
"r" は巻き舌での発音。
スオミ語の子音について特徴的なこととして、-tt-, -ll-, -mm- など、同じ子音を重ねた重子音が多く使われることが挙げられる。
これらのことから、スオミ語の習得は決して楽ではない。特に一部の発音において、非日本語話者にとっては尚更難しいようだ。