初出:1巻
概要
主人公・上条当麻に関係するシリーズ最大の謎/ブラックボックスと呼べる概念。
初出の第1巻では神裂火織が「神浄の討魔ですか。いい真名です」と何気なくこの単語を使っているが、鎌池は「神浄には意味がある」とコミカライズのコミックガイドで早くから言及しており、14巻あとがきでも神の右席が目指した「神上」と対比されている。
第22巻でアレイスター=クロウリーの計画の到達点である事が判明。テレマにおける「オシリスのアイオーン」(十字教支配下の旧時代)では到底説明出来ない概念らしく、この事から「ホルスのアイオーン」(人が神となる新時代)の概念に分類されると推測する事が出来る。
「幻想殺し」や「その奥に潜む何か」にも深く関係すると予想されるが…?
正体の謎/公式の仮説
パナケア仮説
〈魔神〉オティヌスが提唱した「錬金術」「自然魔術」に準えた仮説。
マクロな宇宙とミクロな人体は互いにリンクする。これは『黄金』と『薔薇』を貫いてる共通の理屈だ。……つまり、拡大解釈さえできるなら人間に効く薬を作れば世界を癒す事もできるという理屈になってしまう。人間、私が言っている普遍の薬とはそういうモノだよ。
大宇宙(世界)と小宇宙(人間)の照応、マクロな宇宙はミクロの人体と相互に影響し合う、そのような宇宙(客観)と人間(主観)との関係を説いた中世の魔術理論。
オティヌスは「幻想殺し」を「錬金術の万能薬」に見立てた。パナケアとは錬金術における万能薬。つまり「ミクロコスモス(上条,幻想殺し,神浄の討魔)を以てマクロコスモス(世界)を癒す・異物を除去する」というのがパナケア仮説となる。
以前、オティヌスは木原加群が生きていれば予想に確信を与えられたと言っていたが、確かに「生命や魂の普遍的価値」を探求した彼ならば献言出来たかもしれない。
だが新約22巻リバース(以下NTR22)でオティヌス自らこの説を否定している。
正確には何か引っ掛かっているがそれが分からずに行き詰まってるらしく、この説自体を全否定しているわけではない。
能力と自己
NTR22においてドラゴンの本質的な姿を持ち、さらに上条の能力と記憶を宿す謎の存在が登場した(後述)。「神浄の討魔」はこの存在を指すと推測されるが定かではない。
これについて幾つか公式で予想の材料が提示されている。
- 上条当麻の「願い」から発生した自己
・・・理想送りや幻想殺しの応用論。
- 能力(自分だけの現実)が自己を確立する
・・・パーソナルリアリティとしての観測者の立場(つまり能力)が自己を確立し、逆に自分を見つめていたら?さながら上記のパナケア仮説の如く、全ての人間を操れるようにならないか。これこそがクロウリーのプランの真実ではないか、という説。
- 魔術側の再現人格と同じ理屈
・・・ダイアン=フォーチュン曰く、個人のクセを徹底的に網羅した図面(タロット等)に「ある種の力」を注ぎ込めば本物の人間のように振る舞う。それは21世紀に復活した彼女たち黄金夜明の再現人格が証明している事である。
エイワスはシュプレンゲル嬢に対し「魔術結社のセフィロトに準えた位階構造で魂を消化させていくこと」かと問うが、彼女には「愚鈍」と一蹴されている。
重要なのはそこじゃない。我々 魔術結社が、新参者のために門を開くのはどうして?単なる親切心でやっているだなんて考えているとしたら、よっぽどのお人好しね。
現金も土地も毟り放題だわ、妻を共有しろって神託を受けてそのまんま自分の女を友人に差し出してしまうジョン=ディーと同じくらいに
薔薇十字(ローゼンクロイツ)の掲げる目標の一つに「君主政治を打倒して哲学者の収める国を作る」というものがあるが、それと同じく古いサナギを破って新たな自己を獲得すれば「逆に能力が人間を定義できる」という事になる。彼女はそこに着眼していた様子。
魔術的記憶
史実のクロウリー関係に「魔術的記憶」という言葉がある。
NTR22でアンナ=シュプレンゲルがドラゴン(神浄?)を説明するにあたって引用した言葉で、ドラゴンが上条の記憶を有していた事と関係すると推測できる。ただし、NTR22時点では肝心のドラゴンが謎のヴェールに包まれている為、魔術的記憶を引用した意図は不明。
エイワス:
段階を経て記憶を遡っていくと、ある一転を境に別人、あるいは前世の記憶を獲得するという考え方だろう。確かアラン=ベネットの瞑想法をアレンジしていたか。特に、アレイスターは受精卵の発生後数ヶ月以内に魂をが定着すると信じていたから、有名な魔術師の死亡指定時刻と新生児の霊魂定着の猶予期間が重なるケースを重要視していた。まんま、生まれ変わりの可能性があるとな。
かつてクロウリーは魔術師エリファス=レヴィの生まれ変わりを自称していた。実在する書籍『魔術 理論と実践』において、クロウリーがレヴィの生まれ変わりである8つの論拠が提示されている。
因みにド変態クソ親父ことクロウリーだが、現実では愛人を麻薬漬け・霊媒にして高次元存在と接触した年に、長期にわたる魔術の隠棲を行い、「エリファス・レヴィ」「葛玄」「カリオストロ伯爵」「アレクサンドル6世」といった錚々たる面々の記憶を引き出したとか。
神浄の討魔/ドラゴン
上条の姿と失った記憶を持つ謎の存在。
NT22ラストで上条の右肩の断面から現れた何かが変質した。
NTR22で上条が人間の姿にスカイブルーとレモンイエローのドラゴンの外郭を纏うのに対し、こちらは本質的にはショッキングピンク/エメラルドカラーの約2mのドラゴンで、あくまでも上条を象った人間大の姿は変質した姿である。
※ドラゴンとは「地底の財宝を守る番人」「由緒正しい家柄や組織の証としても掲げられ、善悪の二面性を持ち合わせる双方の垣根を横断する存在」。
上条と比較すると少し粗暴で言葉遣いも荒い。作中では、本来の上条当麻はこうあるべきだと言わんばかりに記憶喪失前の上条の言動・人格を持ち出してくる。
どうやら今は思い出せないインデックスとの出会いと、記憶できないはずの食蜂操祈の事を覚えているようだが……?
食蜂の背信行為
もし記憶の有無で上条を線引するなら、彼女にとって本物の上条とは誰か。上条(ドラゴン)の言葉は、彼女にそう思考させるには十分すぎた。
食蜂は捕縛されかけた上条(ドラゴン)を助けるためにウィンザー城で能力を半暴走状態で発揮させ、ウィンザー城の全てを支配してしまう…。
NTR22ラスト(ネタバレあり)
最後に上条はドラゴンに打ち勝った。
そして自動書記に支配されたインデックスと美琴(A.A.A.)に目を向ける。
「やめろよ、御坂……。
幸せなのには慣れていないんだ。揺らいじまうだろうが」
上条を援護する無意識下の美琴(A.A.A.)。
上条は彼女の援護を受けてインデックスが展開した魔法陣とその奥に潜む「何か」を撥ね退け、インデックスを助け出した。しかしその直後、かつての自分の記憶を奪った「白い羽根」が舞い落ちてくる。
「言ったろ、もう終わりだ」